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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

会社分割~労働契約承継法~ その12(労働者の理解と協力)

分割会社は、分割計画書又は分割契約書を
本店に備え置くべき日までに、
承継される事業に従事している労働者と、
労働契約の承継に関して協議
しなければなりません。

このことが平成12年商法等改正法附則5条に
記載されていることから、
この協議は「5条協議」と呼ばれています。

具体的には、分割会社は、会社分割の効力発生日以後に
労働者が勤務することとなる会社の概要や、
該当する労働者が分割される事業に
主として従事する労働者に
当たるか否かなどについて十分に説明し、
本人の希望を聴取した上で、
労働契約の承継の有無、
承継される場合または承継されない場合
それぞれにおける従事することが予定される業務の内容、
就業場所などについて、協議しなければなりません。

協議は、労働契約承継法が定める
通知をすべき日までに十分な協議ができるよう、
時間的余裕をみて開始しなければなりません。

【ポイント】

1 労働組合を代理に立てることができるか?

労働者本人が、協議に当たって、
民法の規定により、労働組合を当該協議の
全部又は一部に係る代理人として選定すれば
労働組合が労働者個人の代理となることができます。

2 協議を全く行わずに会社分割をしたら、
  その会社分割は無効か?

5条協議を全く行わなかったり、
または実質的にこれと同視し得るような場合には、
法が定める要件を欠くため、
会社分割の無効の原因となり得ます。

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会社分割~労働契約承継法~ その11(労働者の理解と協力)

労働契約承継法第7条では、
労働者の理解と協力について定めています。

分割会社は、会社分割に当たり、
労働者の理解と協力を得るように努めなければなりません。

※労働者の理解と協力を得ることが義務づけられているのではありません。
 労働者への理解と協力を得る努力をすることが義務づけられています。

【理解と協力を得る方法】

労働者の理解と協力を得るために、すべての事業場において、
下記の施策を実施することが求められております。

1 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合

  事業場の労働者の過半数で組織する労働組合と協議をする方法によります。

2 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がない場合

  労働者の過半数を代表する者との協議、
  その他これに準ずる方法によります。

【「その他これに準ずる方法」とは?】

名称のいかんを問わず、
労働者の理解と協力を得るために、
労使対等の立場に立ち誠意をもって
協議が行われることが確保される場において
協議することが含まれます。

【理解と協力を得るよう努める事項】

1 会社分割をする背景及び理由
2 会社分割の効力発生日以後における
  分割会社及び承継会社等の債務の履行に関する事項
3 承継される事業に主として従事する労働者に
  該当するか否かの判断基準
4 労働協約の承継に関する事項
5 会社分割に当たり、労働者との間に生じた問題の解決手続 等

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会社分割~労働契約承継法~ その10(労働協約の承継)

労働契約承継法第6条では
労働協約の承継について定められています。

【原則:同一の内容の労働協約が承継されます】

労働組合員が承継会社等に承継される場合には、
原則として、承継会社等と分割会社の双方で
会社分割の効力発生前と同一の内容の
労働協約が存在することとなります。

【ポイント:債務的部分の取り扱い】

労働協約のいわゆる債務的部分については、
下記の2者が合意すれば
分割契約等に定めて
承継会社等に承継させることもできます。

 1 分割会社
 2 分割会社との間で労働協約を締結している労働組合

【分割契約等の定めの例】

「会社は、労働組合に対し、100平方メートルの規模の組合事務所を貸与する。」
という労働協約の内容のうち
30平方メートル分の規模の組合事務所を貸与する義務については
当該会社に残し、
残り70平方メートル分の規模の組合事務所を貸与する義務については
承継会社に承継する。

【そもそも労働協約とは?】

労働協約とは、
労働組合と使用者またはその団体と締結された
労働条件等に関する取り決めのうち
労働組合法に則って締結されたものをいいます。

就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る際は、
従業員に「意見を聞く」ことが要件の一つになっています。
意見を聞けばよいので、仮に反対意見しか
記載されていない意見書であっても、
労基署は届け出を受理してくれます。

一方、労働組合がある会社の場合は、
就業規則の内容を労働協約にすることが多いです。

労働協約は使用者側と労働組合側が「合意」しなければ
協約できません。

したがって、就業規則の内容が記載された労働協約を
使用者側が変更しようとしても、
労働組合との合意が取れなければ、
その労働協約は変更できません。

意見を聞けばよいとする就業規則と、
労働組合との合意がなければ成立しない労働協約。
当然のことながら、
従業員を保護するために、就業規則よりも
労働協約が優先されます。

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会社分割~労働契約承継法~ その9(異議の申出)

労働契約承継法による異議の申し出に関する
ポイントを2つご紹介します。

【異議の申出のポイント】

1 不利益な取り扱いの禁止

異議の申出は法に基づく労働者の権利です。

分割会社及び承継会社等は、
労働者が異議の申出を行おうとしていること
または行ったことを理由として、
解雇等の不利益取扱いを行ってはなりません。
(平成12年労働省告示第127号)

2 通知がなかったために
  異議申出ができなかった場合の対処法

分割会社が労働者に通知を行わなかったため、
労働者が異議申出を行うことができなくなった場合は
どのように対処すればよいのでしょうか。

一律的な答えはありませんが、
例えば、次のような対処法が考えられます。

1 分割会社と労働者との間で協議等を行う

まずは、当事者間で協議等を行うという手段が考えられます。

こうした協議等の場を通じて、
両者の合意により、労働契約承継法の規定に準じて、
承継される事業に主として従事する労働者を分割会社に残留させるとした、
あるいは承継される事業に主として従事する
労働者以外の労働者を承継会社等に承継させるとした
分割契約等の定めによる労働契約の内容を、変更すること等ができます。

2 裁判で争う

労働者は、裁判所に対して
労働者たる地位の保全または確認を求めることにより、
労働契約を承継会社等に承継できた、
あるいは承継できなかった等の主張をすることができます。

通常は、当事者同士の協議を行っても、
見解の相違が埋まらない場合に
裁判発展するケースが多いかと存じます。

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均衡待遇・正社員化推進奨励金、平成25年3月31日で廃止!

均衡待遇・正社員化推進奨励金が
平成25年3月31日をもって廃止となりました。

廃止前の奨励金の申請を行う場合のポイントをご紹介します。

1 平成25年3月31日までに奨励金の対象制度を適用すること

均衡待遇・正社員化推進奨励金の対象となる制度を、
労働協約または全ての事業所の
就業規則に新たに規定し、
平成25年3月31日までに
労働者に適用することが必要です。

なお、「均衡待遇・正社員化推進奨励金の
対象となる制度を労働者に適用する」とは、
以下の1から5のいずれかの取組を指します。

1 正社員転換制度
  ⇒正社員に転換したこと。
2 共通処遇制度
  ⇒正社員と対象労働者を当該制度により格付けしたこと。
3 共通教育訓練制度
  ⇒延べ10人以上(大企業は延べ30人以上)の
   対象労働者1人につき6時間以上教育訓練を実施したこと。
4 短時間正社員制度
  ⇒短時間正社員制度を適用したこと。
5 健康診断制度
  ⇒対象労働者延べ4人以上に健康診断を受診させたこと。

均衡待遇・正社員化推進奨励金を受給するには、
支給要件を満たしている必要があります。
支給要件については、厚生労働省ホームページに掲載しております。

2 均衡待遇・正社員化推進奨励金の申請先

A 平成25年3月31日までに制度を労働者に適用し、
  平成25年3月31日までに申請される場合
  ⇒都道府県労働局雇用均等室

B 平成25年3月31日までに制度を労働者に適用し、
  平成25年4月1日以降申請される場合
  ⇒都道府県労働局職業安定部

3 廃止後の助成制度

現行の均衡待遇・正社員化推進奨励金は廃止になりますが、
平成25年度より企業内のキャリアアップを
促進するための包括的な助成制度に
整理・統合する予定とのことです。

平成25年度から労働者に制度を実施する場合は、
企業内のキャリアアップを促進するための
包括的な助成制度をご活用いただくことになります。

なお、支給要件が変更される予定です。
具体的な支給要件が公表され次第、
こちらのブログでもご紹介する予定です。

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会社分割~労働契約承継法~ その8(異議の申出)

労働契約承継法第4条、第5条では
異議の申し出について定められています。

【異議申出ができる場合】

下記の場合には、労働者は
異議を申し出ることができます。

1 会社が承継される事業に主として
  従事する労働者を
  分割会社に残留させる場合

2 会社が承継される事業に主として
  従事する労働者以外の労働者を
  承継会社等に承継させる場合

異議を申し出れば、本人の意向に従って
労働契約が承継され、
または承継されないこととなります。

【異議申出の通知先】

異議申出は、分割会社が指定した異議申出先に通知します。

【異議申出事項と通知方法】

異議申出事項は下記の通りです。

1 氏名
2 承継される事業に主として従事する
  労働者以外の労働者の場合はその旨
3 承継会社等に労働契約が承継されないこと
  または承継されることに反対である旨

それぞれ書面に記載する必要があります。

この異議申出が書面によることとされているのは、
労働者が異議を申し出た事実を
分割会社に確実に到達させるともに、
事後に紛争が生じて労働者の地位が
不安定になることを防止する必要があるためです。

異議の申出書の書式例は
下記の厚生労働省作成のものをご参照ください。

【異議申出期限日】

A 株主総会の承認を要する場合

分割会社が定める異議申出期限日は、
分割契約等を承認する株主総会が
開催される日の2週間前から、
当該株主総会等の前日までの期間内の日です。

B 株主総会の承認を要しない場合
C 合同会社の会社分割の場合

効力発生日の前日までの日です。

ABC共通

通知がされた日と異議申出期限日との間には、
少なくとも13日間を置かれなければなりません。

【揖斐申出の効果】

【異議申出ができる場合】の1の場合

労働者は、異議申出期限日までに異議を申し出ることにより、
労働契約が承継会社等に承継されることとなります。

【異議申出ができる場合】の2の場合

労働者は、異議申出期限日までに異議を申し出ることにより、
労働契約が承継会社等に承継されないこととなります。

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会社分割~労働契約承継法~ その7(労働契約の承継)

会社分割のみを理由とする普通解雇・整理解雇はできません。

これら普通解雇や整理解雇については、
労働契約法の規定が定められているとともに、
判例法理が確立しているためです。

以下、参考までに解雇に関する条文と、
整理解雇に関する四つの要件について記しておきます。

◆ 解雇(労働契約法第16条)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして無効となります。

◆ 整理解雇の四要件

① 経営上の事情により
  人員整理をする必要があること
② 解雇を回避するための努力を
  十分に行ったこと(解雇回避の努力
③ 解雇対象者の人選が合理的であること
④ 対象社員や労働組合に対し
  十分な説明と協議を行ったこと

これらの四要件は法制化はされていませんが、
過去の裁判例の積み重ねにより確立されています。
なお、最近は「四要素」とされ、
「四要件」まで厳密に考えなくてもよいとする
裁判例もあります。

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会社分割~労働契約承継法~ その6(労働契約の承継)

労働条件の承継について解説します。

会社法の規定に基づき、
承継会社等に承継された労働契約は、
分割会社から承継会社等に包括的に承継されます。

したがって、その内容である労働条件についても、
そのまま維持されます。

労働条件の変更を行う際には、
労使間の合意や両当事者間の合意が必要ですので、
会社分割の際には、会社は会社分割を理由とする
一方的な労働条件の不利益変更を行うことはできません。

また、会社分割の効力発生日またはその前後において
労働条件の変更を行う際には、
法令及び判例に従うことになりますが、
基本的には労使間の合意が必要となります。

【ポイント】

福利厚生についての取扱いについては、
労働協約や就業規則に規定されているものなど
分割会社と労働者との間で
権利義務の内容となっているものについては、
労働条件として維持されます。

例えば、アスレチック施設等の
福利厚生施設を分割契約等に定めなかった場合等、
承継会社等が同一の内容で引き継ぐことが難しいものは
労働者等と協議等を行い、
妥当な解決を図ることになります。

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会社分割~労働契約承継法~ その5(労働契約の承継)

分割会社と労働者との間で、
「主として従事する労働者」に該当するか否かについて
見解の相違があるときは、
どのような解決をすべきでしょうか。

まず、大原則としては、『社内で解決』です。

分割会社と労働者との事前の協議や
理解と協力を得る手続により
見解の相違の解消に努めることになります。

お互い、誠意を持って話し合うことで
解決することができれば、
労力や時間、費用の面でも最小限で済みます。

それでも解決しない場合は、
最終的には裁判によって
解決をはかることになります。

また、各都道府県の労働局
相談をすることもできます。

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会社分割~労働契約承継法~ その4(労働契約の承継)

労働契約承継法では
「主として従事する労働者」という概念がキーワードになっています。
そこで、今回は「主として」従事する労働者とは
どのような人を指しているのかを取り上げます。

【原 則】

1 「主として」従事する労働者とは、
  基本的には、分割契約等を締結または作成する日において、
  承継される事業に専ら従事している労働者をいいます。

【迷った場合の判断基準】

2 労働者が他の事業にも従事している場合には、
  それぞれの事業に従事する時間、
  果たしている役割等を総合的に判断して、
  「主として」従事する労働者か否かを決定します。
3 総務、人事、経理等の
  いわゆる間接部門に従事する労働者であって、
  承継される事業のために専ら従事している労働者は、
  「主として」従事する労働者となります。
  労働者が、承継されない事業のためにも
  従事している場合には、上記2によって判断します。

  <労働者が、いずれの事業のために従事するのか
   区別なく間接部門に従事している場合で、
   上記2によって判断できないときの考え方>

   原則として、判断することができない
   労働者を除いた分割会社の
   雇用する労働者の過半数の労働者が
   承継会社等に承継される場合に限って、
   その労働者は、「主として」
   従事する労働者となります。

4 分割契約等を締結または作成する日において
  承継される事業に主として従事していても、
  次の人は「主として」従事する労働者に当たりません。

  1 研修・応援等のように
    一時的に承継される事業に従事している場合で、
    当該業務の終了後には承継される事業に
    主として従事しないことが明らかである人
  2 育児等のために配置転換することを
    分割会社と合意しており、
    分割契約等を締結または作成する日以後には
    承継される事業に主として
    従事しないことが明らかである人

  逆に、次の人は「主として」従事する労働者です。

  1 研修・応援等のように
    一時的に承継されない事業に従事している場合で、
    当該業務の終了後には
    承継される事業に主として従事することが明らかな人
  2 分割契約等を締結または
    作成する日においては休業していたが、
    復帰後は承継される事業に
    主として従事することが明らかである人
  3 採用内定者や育児等のための
    配置転換希望者等であって
    分割契約等を締結または作成する日以後に
    承継される事業に主として
    従事することが明らかである人

【ポイント】

会社が労働者を承継会社等または
分割会社から排除する目的で
会社分割の効力発生日前に
意図的に配置転換を行ったような場合、
どうなるのでしょうか。

この場合、その労働者が
「主として」従事する労働者に当たるか否かは、
その労働者の過去の勤務の実態をみて
判断することとなります。

なお、不当労働行為等の違法な目的で
会社分割の効力発生日前に
配置転換を行ったような場合には、
当該配置転換は無効となります。

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奨励金のお知らせ(日本再生人材育成支援事業)

健康、環境、農林漁業分野等において、
雇用する労働者に対して、
一定の職業訓練を実施した事業主や、
被災地の復興のために必要な
建設関係の人材育成を行った事業主は、
以下の奨励金が利用できるようになりました。
奨励金の概要(一覧).pdf

★ 非正規雇用の従業員を対象にした奨励金があります。
★ 対象分野には、医療・介護、情報通信業、建設業の一部、
  製造業の一部などが含まれます。

★非正規雇用労働者育成支援奨励金

非正規雇用労働者の人材育成を行う
重点分野等(健康、環境、農林漁業等)の
事業主に対する訓練費用の助成

★正規雇用労働者育成支援奨励金

正規雇用労働者の人材育成を行う
重点分野等(健康、環境、農林漁業等)の事業主に対する
訓練費用の助成

★海外進出支援奨励金(留学)
★海外進出支援奨励金(送り出し)


海外進出をお考えの事業主に対する、
グローバル人材の育成支援

★被災地復興建設労働者育成支援奨励金

被災地で建設人材育成をお考えの事業主に対する、
従業員の資格取得などにつながる
訓練の実施に対する奨励金

申請書のフォーマットを入手したい方は
こちらの【厚生労働省のサイト】から入手してください。

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会社分割~労働契約承継法~ その3(労働契約の承継)

労働契約承継法第3条では
【労働契約の承継】について定められています。

この条文によると、承継される事業に
主として従事する労働者については、
分割契約等の定めどおりに承継会社等に承継されます。

【原 則】

会社法上、分割契約等に定めた事項は、
その定めに従って承継会社等に承継されます。

これに対して労働契約承継法は、
労働者保護の観点からいくつかの特例を定めていますが、
承継される事業に主として従事する労働者については、
分割契約等に労働契約が承継される旨が定められれば、
会社法の原則どおり承継会社等に承継されます。

【分割契約等に定めて承継させることができる労働契約】

1 分割会社が雇用している労働者の労働契約
  (正社員の他、パート・アルバイト、契約社員も含む)

分割契約等に定めて承継会社等に承継させることができます。

2 他の会社から分割会社に出向している労働者の労働契約

分割契約等に定めて承継させることはできません。
他社とその他社で雇用されている労働者との間の
労働契約であるためです。

【ポイント】

分割会社に雇用されているが承継される事業に
全く従事していない労働者の取扱い

会社法上、承継される事業に全く従事していない労働者についても、
分割契約等に定めることによって、
労働契約を承継会社等に承継させることができます。

この場合、その労働者は、
承継される事業に主として従事する労働者に当たらないため、
分割会社に異議の申出をすることができます。

申出をした場合は分割会社に残留することになります。

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会社分割~労働契約承継法~ その2(労働者及び労働組合への通知)

労働契約承継法、第2条では
【労働者及び労働組合への通知】について定められています。

この条文によると、会社分割をする会社(分割会社)は、
会社分割に当たり、労働者及び労働組合に対して、
会社分割に関する事項を通知することが必要です。

分割会社が通知する必要がある労働者及び労働組合は、
下記の通りです。

A 承継される事業に主として従事する労働者
B 「A」以外の労働者であって承継会社等に承継させる労働者
C 会社との間で労働協約を締結している労働組合

通知する事項は、A・Bに対しては次の1~9、
Cに対しては次の4~6、8、10~12であり、
書面に記載して通知することが必要です。

1 当該労働者が承継会社等に承継されるという
  分割契約等の定めの有無
2 当該労働者の異議申出期限日
3 当該労働者が上記ABいずれに該当するかの別
4 承継される事業の概要
5 会社分割の効力発生日以後における
  分割会社及び承継会社等の商号・
  住所(設立会社については所在地)・
  事業内容・雇用することを予定している労働者の数
6 効力発生日
7 効力発生日以後における分割会社
  または承継会社等において当該労働者が従事する
  予定の業務内容・就業場所その他の就業形態
8 効力発生日以後における分割会社
  及び承継会社等の債務の履行の見込みに関する事項
9 異議がある場合にはその申出を行うことができること、
  異議の申出を受理する部門の名称・
  住所あるいは担当者の氏名・職名・勤務場所
10 分割会社と当該労働組合との間で
  締結している労働協約が承継会社等に承継されるという
  分割契約等の定めの有無
11 承継される労働者の範囲
  (労働組合にとって労働者の氏名が
   明らかとならない場合には労働者の氏名)
12 労働協約を承継させる場合には、
  承継会社等が承継する労働協約の内容

これらの通知が書面によることとされているのは、
個別の労働者に対して
確実に到達する方法で提供するとともに、
事後に紛争が生じて労働者の地位が
不安定になることを防止する必要があるためです。 

通知書については厚生労働省が作成した
下記の記載例をご利用ください。

<労働者への通知例>

<労働組合への通知例>

分割会社の通知期限日は、
分割契約等を承認する株主総会の日の
2週間前の日の前日です。

なお、株主総会の承認を要しない場合
または合同会社の会社分割の場合は、
分割契約等が締結または作成された日から起算して
2週間を経過する日までです。

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会社分割~労働契約承継法~ その1

会社法上の会社分割制度においては、
分割会社と承継会社等が締結または作成した
分割契約等の定めに従って、
分割会社の権利義務が承継会社等に承継されます。

 承継会社等
  吸収分割における承継会社と
  新設分割における設立会社

 分割契約等
  吸収分割における分割契約と
  新設分割における分割計画

このままでは、労働者の労働契約が
引き継がれるか否かについて
原則的に分割契約等により
自由に定められることとなってしまっています。

そこで、労働者保護の観点から
「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」、
同法施行規則及び関係指針が制定されています。

法律名は、通常「労働契約承継法」と言われています。

労働契約承継法には、以下の定めがあります。

1 労働者及び労働組合への通知
2 労働契約の承継についての会社法の特例
3 労働協約の承継についての会社法の特例
4 会社分割にあたっての労働者の理解と協力を得る手続き

労働契約承継法は、会社法の会社分割制度と
一体のものとして施行されています。
関係者の方々は、会社分割の際には、
労働契約承継法の趣旨に則った
適切な対応をすることになっています。

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電車が遅れた等のやむを得ない事情の場合、遅刻控除をしてはいけないか?

会社に余裕を持って着くように家を出たにもかかわらず、
電車が遅れてしまい、遅刻してしまった社員がいます。

こうした場合、遅延証明書を会社に提出する等すれば、
会社は遅刻して働かなかった時間分の
賃金の控除をしてはいけないのでしょうか?

労働基準法の側面で言えば、そのような定めはありません。

ノーワークノーペイの原則により、
遅刻した分は原則として賃金から控除して構いません。

始業時刻は9時と定めている会社の場合、
「とにかく9時から仕事を始めなさい」と
約束していることになります。
仮に9時に来なかったとなると、
会社と従業員間で締結された雇用契約内容に
違反することになります。

ただし、例外があります。

まず、労働基準法は労働条件の最低ラインを定めた法律です。
労働協約、就業規則や個別の雇用契約書で
法を上回る定めをする分には構いません。

「電車の遅延等やむを得ない事情の場合は、
 遅刻控除をしない。」

等という定めがあれば、
電車の遅延による遅刻の控除はしないことになります。

また、給与が完全月給制等により給与を支給している場合は、
遅刻や早退があっても、賃金から控除できません。

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