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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

健康診断の結果が会社にない!?

「うちの会社、健康診断の結果が会社に来ないんですが・・・」

最近、このようなご相談をたくさんいただいております。

定期健康診断の実施は労働安全衛生法で企業に義務づけられており、
その検査結果は5年間の保存義務があります。

健康診断を実施しているのに、何で検査結果が会社に来ないのかな?と疑問に思い、
詳細を確認すると、原因が分かりました。

どうもこうした会社は、ご本人が自分が受けたい病院で健康診断を申し込み、
検査料はいったん自分で立て替えておき、後日立替精算をしているのです。

ご本人の名前で検査をしているのですから、ご本人には検査結果が通知されますが、
会社には通知されません。

会社さんによっては、個人宛に来た検査結果をコピーして、
会社に提出させているケースもありましたが、
手間ひまがかかってしまい、なかなか徹底した回収もできていないようです。

定期健康診断は会社が病院に連絡し、会社の名前で受けさせます。
請求も会社にするよう言えば大丈夫です。

そうすれば、会社に検査結果を送付してくれます。

会社には従業員の安全や健康に配慮する義務がありますので、
検査結果を会社としても確認し、健康状態に問題がある人については
再検査を促したり、業務の見直し等をする必要があります。

また、本人の健康に関する情報ですので、
個人情報の中でもかなり取り扱いに注意しなければならない情報です。
保管方法、閲覧できる人等には十分ご注意ください。

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人事関係の帳簿の保存期間は?

人事関係の帳簿の保存期間は次の通りです。
なお、【 】内は起算日です。
また、完結の日とは、退職等で会社に在籍しなくなった日のことを指します。

<永久保存>

1 重要な人事に関する文書
2 労働組合との協定書

<7 年>

1 賃金台帳【最後の記入をした日】
 (国税通則法では7年保存を義務づけています。働基準法では3年保存です。)

<5 年>

1 従業員の身元保証書、誓約書などの書類【作成日】
2 雇い入れ時の健康診断の結果【健康診断実施日】
3 定期健康診断の結果【健康診断実施日】

<4 年>

1 雇用保険の被保険者に関する書類【完結の日】
  (資格取得等確認通知書、
   転勤届受理通知書、
   資格喪失確認通知書(離職証明書の事業主控)
   氏名変更届受理通知書など)

<3 年>

1 労働者名簿【死亡・退職・解雇の日】
2 雇入れ・解雇・退職に関する書類【退職・死亡の日】
3 災害補償に関する書類【災害補償の終わった日】
4 賃金その他労働関係の書類【完結の日】
  (労働時間を記録するタイムカード、残業命令書、残業報告書など)
5 労災保険に関する書類【完結の日】
  (徴収法又は労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則による書類を除く)
6 労働保険の徴収・納付等の関係書類【完結の日】
  (成立届、労働保険料申告書など)
7 身体障害者等であることを明らかにすることができる書類【死亡・退職・解雇の日】
  (診断書など)
8 派遣元管理台帳【契約完了の日】
9 派遣先管理台帳【契約完了の日】

<2 年>

1 雇用保険に関する書類【完結の日】
  (雇用保険被保険者関係届出事務代理人選任・解任届など)
2 健康保険・厚生年金保険に関する書類【完結の日】
  (被保険者資格取得確認及び標準報酬通知書、
   標準報酬改定通知書など)

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賃金台帳、支店にもなければいけないの?

本社の他に支店や営業所、店舗等がある会社の場合、
通常、給与計算は本社で一括して行っているかと存じます。

給与計算の結果一覧表である賃金台帳は、
本社で保管している、もしくは給与ソフトで
いつでも閲覧・印刷ができる環境にあると思います。

実はこの賃金台帳、「事業所単位での保管」が義務づけられております。
したがって、A支店に所属するスタッフの賃金台帳は、
A支店でも保管する、もしくはA支店分の給与データをパソコン上で
いつでも閲覧・印刷できるようにしておく必要があるのです。
(どれだけの会社がこのような体制になっているか、疑問ですが。)

今日、労働基準監督署の人にこの件を問い合わせたところ、
聞いてもいないのに、その理由を教えてくれました。

その理由とは・・・

「労働基準監督署がその事業所に調査に行った時に、
 その事業所分の賃金台帳がすぐに見ることができる環境にないと、
 (我々が)困っちゃうじゃないですか〜。」

君たちの調査を円滑にするためだったの条文だったんですね・・・(苦笑)。

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「10人以上の労働者」に含まれる従業員は?

労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する使用者に
就業規則の作成と届け出を義務付けています。

この「10人以上の労働者」に次のような社員は含めるのでしょうか?

1 アルバイト、パートタイマー
2 嘱託社員(定年後の再雇用社員等)
3 出向社員
4 派遣社員

1 アルバイト、パートタイマー & 2 嘱託社員(定年後の再雇用社員等)

「10人以上の労働者」に含めて考えます。

労働基準法では、アルバイト、嘱託社員等の名称に関係なく、
また、時給制や月給制等の賃金の支払い方に関係なく、
事業または事務所に使用され、賃金を支払われる人を
一律に「労働者」として定めているからです。

3 出向社員

出向社員が出向元にも籍を残しつつ、
出向先で働くようなケースを想定した「在籍出向」と
出向元には席を残さず、出向先とのみ雇用契約が存在している「転籍出向」があります。

在籍出向の場合は、出向元、出向先ともに「10人以上の労働者」に含めて考えます。
出向元、出向先のどちらも、出向者と雇用契約関係があるためです。

転籍出向の場合は、出向元では「10人以上の労働者」に含めず、
出向先のみ「10人以上の労働者」に含めて考えます。
出向元とは雇用関係が存在せず、出向先とは雇用関係が存在するためです。

4 派遣社員

雇用契約を締結しているのは、派遣会社と派遣社員です。
したがって、派遣会社では「10人以上の労働者」に含めて考えます。

一方、派遣先の会社では、派遣社員と雇用関係にあるわけではありませんので、
派遣先でのカウントをする際は、「10人以上の労働者」に含めません。

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就業規則の任意的記載事項って何?

就業規則の記載事項については、労働基準法で縛りがかけられています。

重要な労働条件についての記載が漏れていると、
就業規則としての体(てい)をなさなくなるからです。

就業規則に記載すべきことは次の3区分に分けられます。

1 絶対的必要記載事項
2 相対的必要記載事項
3 任意的記載事項
  ※ 記載事項の詳細については、こちらをご覧ください。

任意的記載事項とは、
絶対的必要記載事項、相対的必要記載事項以外のもので、
会社が任意に就業規則に記載する事項のことですが、
具体的にはどんなものを指しているのでしょうか?

例1 就業規則にかける熱い情熱を前文として記載する

自社にとって、就業規則を作成することにどのような意味があるのか。
どのような目的で就業規則を作成することにしたのか。
就業規則を作成することで、会社はどうなっていくのか。

このような熱い思いを前文として記載する会社がございます。
この前文が任意的記載事項となります。

例2 企業理念や社是をドーンと掲載する

これも例1と似ておりますが、
企業理念や社是、行動指針を冒頭に記載し、
その流れを踏まえて、具体的な条が記載されていくという体裁の
就業規則を作成した場合、
この企業理念などは任意的記載事項となります。

例3 就業規則の条文解釈を就業規則中に記載する

実例は私も見たことがありませんが、
就業規則の各条文について、
具体的にはこのように解釈する、この言い回しはこういう意味だ、
というような文章を就業規則の欄外などに表記するなどした場合、
この解釈文章は任意的記載事項となります。

例4 適用に関する規程を記載する

例えば、この就業規則は誰に対して適用するかという条文や、
附則として記す施行年月日、改正施行年月日は
任意的記載事項となります。

<任意的記載事項の注意ポイント>

1 大半のルールは相対的記載事項です

服務規定や休職に関する規定等を
任意的記載事項と分類している方もいらっしゃいますが、
これらについては相対的記載事項の一つとして、
下記の記載があります。

★ 前各号に掲げるもののほか、
  当該事業場の労働者のすべてに
  適用される定めをする場合においては、これに関する事項

ということで、服務に関するルールも休職に関するルールも
相対的必要記載事項に該当します。

ただ、分類にこだわっても、実態は何も変わりません。
マニアックな話で恐縮です...。

2 企業理念も書き方によっては相対的記載事項になります

企業理念を掲げるだけなら任意的記載事項ですが、
「企業理念を守ること」とすれば、これはルールになりますので、
相対的必要記載事項となります。

ただ、これも分類上の話。実務上全く気にしなくてよいかと存じます。

3 法令違反や公序良俗違反の内容は記載してはいけません

当たり前のことと言えば当たり前ですが、念のため記載しておきます。
ちなみに「公序良俗」とは「公の秩序」「善良な風俗」の略称です。

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違法な就業規則の条文は有効か?

就業規則の作成のご依頼を受けた際、
「それでは今の就業規則を拝見させていただけますか?」と尋ね、
現状の就業規則の内容を確認します。

その際、例えば、本来入社6ヶ月後に付与される有給休暇の日数は10日のところ、
「5日」等と記載されているケースがあります。

事情を確認すると、「10日も与えることはできない。」という社内事情があるとのこと。

まず、法的には「5日」というのは労働基準法に照らし合わせると、違法です。

労働基準法に定める労働条件は最低のものだとされています。
その最低条件を下回ることはできません。

この場合、就業規則全体が無効になるのではなく、
違法になっている部分のみが無効となります。

上記の「5日」は「10日」に引き上げられます。

ということで、就業規則に「5日」と書いてあったとしても、
従業員には「10日」が付与されることになります。

常時10人以上の労働者を使用している事業所については、
就業規則は労働基準監督署に届け出ることになっています。

労働基準監督署に実際に届け出ると、
条文をしっかりチェックしてから受理印を捺印する人もいれば、
内容をチェックせずに、機械的に受理印を捺印する人もいます。

受理印は「受理したこと」の証ではありますが、
内容が合法であることまでは証明していませんので、
受理印があるからと言って、「5日でOK」となったわけではありません。

ここから先は私の意見ですが、

★人にされて嫌なことは、人にしない。
★人からされて嬉しかったことを、人にする。

こうしたことは経営の基本であり、人とのかかわり合いの基本だと思います。
10日も付与したら会社が成り立たなくなる、というのは自分の都合。

スタッフが気持ちよく働いて、初めて自分の経営が成り立ちます。
スタッフが気持ちよく働くためにはどのような職場環境にすればよいか。

こうした気持ちをスタッフに伝え、
スタッフと一緒に「日々の運営に支障をきたさないようにしながら、
法定の有給休暇を付与し、なおかつ消化したいだけ消化するにはどうすればよいか?」と
ディスカッションをすることが大切だと私は思っています。

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就業規則は会社で一つ作成して、届け出ればよいか?

就業規則は常時10名以上の従業員を使用する場合に、作成義務と届け出義務があります。

ここで気をつけなくてはならない点が、次のような場合です。

本社:15名
A支店:12名
B支店:5名
合計:32名

私たちは日常的には次のように考えます。

「全従業員合計が32名だから、常時10名を超えている。
 そこで、就業規則を作成し、本社を管轄している労働基準監督署に届け出なければ...。」

実は、労働基準法は原則として「事業場単位」で考えています。
(例外的に会社単位の場合もありますが...。)

就業規則もその一つです。

したがって、正確には次のように考えなければいけません。

「本社とA支店はそれぞれ常時10名以上なので、
 本社と、A支店には就業規則の作成義務があり、
 本社分は本社を管轄している労働基準監督署に届け出て、
 A支店分はA支店を管轄している労働基準監督署に届け出る必要がある。
 一方、B支店は常時10人未満だから、
 就業規則の作成義務もないし、届け出義務もない。」

実務上は、B支店にも適用する就業規則とし、
届出をすることが多いと思います。

気をつけなくてはいけないのは、つい企業単位と考えてしまい、
各支店を管轄している労働基準監督署へ
就業規則を届け出るのをうっかり忘れてしまう、ということです。

お気をつけください。

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中学生や高校生をアルバイトとして雇用する際に役立つ資料

 中学生や高校生をアルバイトとして雇用する際の注意点をまとめた、
厚生労働省作成の資料を発見しました。

さすがに国が作成したものだけあって、抜けや漏れがありません。

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高校生(年少者)を雇用する際のポイントは?

労働基準法では、満20歳未満の者を以下のように区分しています。

  • 満20歳未満の者・・・未成年者
  • 満18歳未満の者・・・年少者
  • 満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの者・・・児童

このうち「児童」については、原則として労働させてはいけません。
(例外はありますが、ここでは省略します。)

多くの高校生が該当する「年少者」についても、一定の規制がかけられています。
以下、年少者を雇用する場合の注意点をご紹介します。

1 親権者等の同意を得ること

高校生を雇い入れる際において、
会社と本人との間で雇用契約を締結することになりますが、
本人は未成年であるため、併せて親権者等の同意を得てください。
(親権者等の同意がないと即、法律違反というわけではありませんが、
 雇用契約が確定しないリスクを背負うことになります。)

2 年齢を確認すること、年齢を確認できる書類を事業所に備え付けておくこと

雇用する前に年齢を確認してください。
また、会社には年齢を確認できる書類(たとえば住民票記載事項証明書)を
備え付けることが法令で義務付けられています。

3 労働時間に関する規制を守ること

実際に高校生に仕事をさせる場合、労働時間に関する規制を確認し、
その範囲内で勤務させてください。

具体的には次の通りです。

★ 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて勤務させることはできません。
★ 変形労働時間制やフレックスタイム制を適用することは認められていません。
★ 残業や休日出勤は原則として禁止されています。
  ただし、以下のいずれかに該当する場合は、
  例外として法定労働時間を超えて勤務させることができます。
  1 1週間の労働時間が40時間以内であり、
    1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮すれば、
    同一週内の日について労働時間を10時間まで延長可能
  2 1日8時間、1週間48時間以内であれば、
    1ヵ月または1年単位の変形労働時間制を適用可能
★ 深夜(午後10時から午前5時まで)における勤務についても原則として禁止。
  ただし、交替制で勤務する満16歳以上の男性等、一部に限り認められています。

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生後間もなく子供がなくなった女性は時間外労働や休日出勤を断れるか?

会社は、妊産婦が請求した場合は、時間外労働、休日労働、
深夜労働をさせていはいけない旨が、
労働基準法第66条に記載されています。

仮に、出生後数か月後にお子さんを亡くした女性がいるとします。

彼女は、今は子供を育てる身ではなくなりましたが、そんな彼女から
時間外労働等ををしたくないと請求すれば、
会社は時間外労働等をさせてはいけないのでしょうか?

答えは、「時間外労働をさせてはいけません。」となります。

妊産婦とは、妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性を言います。

この条文の趣旨は、育児にあるのではなく、
子供を妊娠したり、出産したりした女性の健康を確保するためにあります。

出産して間もない女性が体に無理をかけると、健康を害してしまいがちであることから、
現実にお子さんがいるとかいないとか、育児をする必要があるとかないとかに関わらず、
ご本人からの請求があれば、時間外労働等をさせてはいけません。

育児介護休業法には、これと似たような条文があります。

会社は、一定の要件を満たす従業員で、かつ、3歳に満たない子を養育する従業員が、
その子を養育するために請求した場合は、
所定労働時間を超えて労働させてはいけません。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでないという趣旨の条文です。
(育児介護休業法第16条の8)

育児・介護休業等規程がある会社であれば、
この条文を元にして、「所定外労働の制限」について記載があるはずです。

こちらの法律は、子を産んだ女性ご本人にスポットライトが当てられているのではなく、
育てるべき子がいる従業員にスポットライトが当てられています。

したがって、労働基準法よりも制約があります。

1 労使協定を締結することにより、一定の従業員を対象者から外すことができる。
2 「3歳未満の子を養育する」従業員でなければ対象となれない。
3 事業の正常な運営を妨げる時は、会社は従業員からの請求を退けることができる。

その代わり、労働基準法と異なり、
男性でも対象になりますし、期間も産後1年だけではなく、約3年間となっています。

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産前産後休暇の基本的なこととは?

産前産後休暇について、労働基準法では次のような定めがあります。

<産前休暇>

使用者は6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、
その女性を働かせてはいけません。
(なお、双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は14週間になります)

⇒あくまで女性が請求した場合。女性が請求しなければ、出産当日まで働くこともOK。
⇒出産日当日は産前休暇の最終日として取り扱います。
 したがって、出産予定日よりも出産日が遅れた場合、
 結果として産前休暇が6週間(14週間)を超えることがあります。

<産後休暇>

使用者は、産後8週間を経過しない女性を働かせてはいけません。
ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、
その女性について医師が支障がないと認めた業務につかせることは差し支えありません。

⇒産前休暇と違い、産後6週間は本人が働きたいといっても働かせてはいけません。
 (母体保護のため)
⇒産後6週間を経過した場合は、本人の請求と医師の許可があれば働けますが、
 実務上、このような方を見たことがありません...。

<妊娠中の女性と業務内容>

使用者は、妊娠中の女性が請求した場合は、
他の軽易な業務に転換させなければいけません。

⇒ただし、「他の軽易な業務」がない場合は、
 その女性のために新しく軽易な業務を作ってまで対応する義務はありません。

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労働基準法上の管理監督者とはどんな人?

労働基準法上の管理監督者に該当する場合は、
労働時間や休憩、休日に関する労働基準法上の定めが適用されません。
したがって、残業手当や休日出勤手当を支払う義務を免れます。
(ただし、深夜に関する割増賃金は支払い義務あり)

それでは、労働基準法上の管理監督者とはどういう人たちを言うのでしょうか。

これについて、厚生労働省が見解を公表していますので、ご紹介します。
なお、<こんな場合に注意!>に記載している事項は
多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の判断基準です。
マクドナルドの地裁の判決を受け、厚生労働省が作成したものから
主要な部分を抜粋し、読みやすいように改変しました。

==労働基準法上の管理監督者となる3つの要件==

1 労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、
  労働時間や休憩、休日等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない
  重要な職務内容、責任、権限を持っていること

<こんな場合に注意!>

★ 店舗に所属するアルバイト・パート等の
  採用に関する責任と権限が実質的にない場合。
★ 解雇店舗に所属するアルバイト・パート等の
  解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、
  実質的にもこれに関与しない場合。 
★ 部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、
  実質的にもこれに関与しない場合。
  (人事考課の制度がある企業のみ)
★ 労働時間の管理店舗におけるシフト表の作成
  又は残業命令を行う責任と権限が実質的にない場合。 

2 現実の勤務態様が、労働時間等の規制になじまないものであること

<こんな場合に注意!>

★ 遅刻、早退等により減給の制裁、
  人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合。
★ 実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合。
★ 管理監督者としての職務も行うが、
  会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど
  労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合。 

3 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

<こんな場合に注意!>

★ 基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、
  割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、
  従業員の保護に欠けるおそれがあると認められる場合。 
★ 一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の
  特別の事情がないにもかかわらず、
  他店舗を含めたその企業の非管理職の賃金総額と同程度以下である場合。
★ 実態として長時間労働を余儀なくされた結果、
  時間単価に換算した賃金額において、
  店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合。

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退職直前の有休取得中に転職していることが発覚。有休を取り消せるか?

退職直前に、たまっていた有給休暇を取得している最中に、
他社に転職し働き始めている人がいることが発覚しました。

他社に就労を始めている人に対し、有給休暇を与え続けるのも釈然とせず、
有給休暇の使用を認めたくない、という会社からのご相談があったとします。

これは法的には問題ないでしょうか?

結論から申し上げると、有給休暇の使用は認めざるを得ません。

労働基準法に定める有給休暇制度の趣旨は、
休日の他に毎年一定日数の有給休暇を与えることで、
従業員の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることにあるのですが、
法律上は、有給休暇をどのような目的で利用するかについては、
特段の制限を設けておらず、従業員側の自由なのです。

考えられる対抗手段としては、(懲戒)解雇を検討するという方法があります。
就業規則に定めてある、懲戒解雇の事由の中に
 会社の許可なく在籍のまま兼業をした場合」
などという文言があれば、これを根拠に(懲戒)解雇をする道が開けます。

これで、「本日をもってあなたを(懲戒)解雇します。」
とすれば、従業員の有給休暇の消化を続けることができなくなります。

ただ、ここにも2つ問題が。

一つは、「(懲戒)解雇」の有効性です。
解雇をする場合や懲戒処分をする場合は、
労働契約法により下記の2点を満たすことが必要です。

★ 客観的に合理的な理由があること
★ 社会通念上相当であること

これを満たさない場合は、権利の濫用とされてしまいます。

就業規則に書いてあるからと言って、
必ずしも上記の2つの要件を満たすかどうかは別問題です。

従業員側が(懲戒)解雇をすんなりと受け入れてくれればよいのですが、
トラブルになると、正直、面倒を抱えることになることを覚悟しなければなりません。

2つ目の問題。これが意外に重要かもしれませんが、
即日解雇をする場合は、原則として30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。

懲戒解雇の場合は、労働基準監督署に「解雇予告除外認定申請書」を提出して、
「解雇予告手当を支払わずに解雇していいですか?」とお伺いを立てることになりますが、
これが結構ハードルが高く、なかなか認めてもらえません。

例えば、有給休暇は残り10日分で終わるというときに、
30日分の解雇予告手当を支払うとなると、かえって会社の出費が増えることになります。
これでは本末転倒ですね。

ということで、法律の世界の中で何とかしようとしても、
有効な手段が見つけにくいのが実情です。

残りの手段は法律外の手段。
ご本人を呼び出すなどして、話し合いで退職日を早めてもらうよう交渉するくらいでしょうか。

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有給休暇を取得しなかった社員を賞与算定で優遇してもよいか?

多くの経営者にとって有給休暇の取得は残業代と並んで頭を悩ます問題です。

正直、できれば有給休暇なんて取得せずに、毎日会社に来て働いてほしい、
そう願っている経営者って多いのではないでしょうか。

そこで、ある会社で、有給休暇を取得しなかった社員については、
賞与額を上乗せすることにしました。

こうしたことは違法なんでしょうか?

結論から申し上げますと、有給休暇取得者に対する不利益取り扱いの禁止
(労働基準法附則第136条)に抵触することとなり、
裁判となっても民法上の公序良俗違反(民法第90条)となる可能性が濃厚ですので、
このような取り扱いは避けた方がよいです。

例えば、皆勤手当や賞与を支給する際に、
有給休暇を取得して休んだ日を働かなかった日として扱うなど、
有給休暇の取得を抑制することにつながるようなことは禁止されています。

労働基準法附則第136条において、
有給休暇を取得した従業員に対して賃金を減額する等、
不利益な取り扱いをすることが禁止されていることが背景にあります。

行政解釈においても、下記のような通達が出されています。

「賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、
 または欠勤に準じて取り扱うこと、
 その他労働基準法上労働者の権利として認められている
 年次有給休暇の取得を抑制するすべての取扱はしないように」

ただ、実はこの規定については労働基準法上の罰則がついていません。
規程に違反しても、特段咎められない点が弱いところです。

こうした点について、裁判所は民法の公序良俗に違反するとして無効としています。

例えば下記の判例があります。

★ 年次有給休暇を取得して休んだ日があることを理由に、
   皆勤手当等の諸手当の全部または一部を支給しなかったのは
   労働者に対する不利益取り扱いであり、公序良俗違反により無効である。
   (昭和51年3月4日、横浜地裁 大瀬工業事件)

★ 年次有給休暇の取得日を府就労時間に含めて稼働率の計算をし、
   その稼働率が80%以下の者には昇給をさせないといった労働協約の条項は
   労働者に対する不利益取り扱いであり、公序良俗違反により無効である。
   (平成元年12月14日、最高裁第一小法廷 日本シェーリング事件)

こうした点を総合的に考えると、
有給休暇を取得しなかった社員を賞与算定で優遇するということは、
裏を返せば、有給休暇を取得した社員を賞与算定で冷遇するということであり、
有給休暇の不利益取り扱いとなるので、避けた方がよいでしょう。

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当日の朝に申請してきた有給休暇は認められるか?

出勤日の当日の朝になり、いきなり「今日は有給で休ませてほしい」と伝えてきた従業員。

こうした出勤時間直前に申請された有給休暇について、
会社は認めなくてはいけないのでしょうか。

結論から申し上げると、法的には認めなくてはいけない義務はありません。
(現実の運用の話は別問題ですが...。)

まず、有給休暇は暦日単位で1日確保するように求められています。
暦日単位で1日とは、午前0時(夜中の0時)からの24時間を指しています。

出勤時刻直前の申請をした場合、すでに労働日としての1日は始まっており、
一種の事後申請のような状態となっています。

また、会社には業務が煩雑な際には別の日に有給休暇を取得させる
「時季変更権」が認められています。
ただ、この時季変更権を実際に行使するためには、
代替要員の確保や人員配置の変更などの努力をしても、
なお有給休暇を取得させてしまっては
正常な業務の運営ができない場合に限定されています。

いきなり当日の朝に「休ませてほしい」と言われても、
始業開始時刻まであと数分。この数分間で代替要員の確保や人員配置の変更など
できるわけがありません。

つまり、始業時刻直前の有給休暇申請を認めてしまうと、
会社としては時季変更権を有効にする要件を満たすための時間の確保が実質的にできず、
時季変更権という権利を行使できない状況に置かれています。

こうしたことから、当日の有給休暇申請は認めなくて構わないとされています。

なお、法的には認めなくても構わないという結論ですが、
現実の運用は別問題という側面はあります。

当日の体調不良で休みたいと言ってきた社員に対して、
「今言われても有給休暇は認められませんから、欠勤扱いとなりますよ。」とするかどうか。

実際はこうしたことも配慮して、独自の運用ルールを定めることをお勧めします。

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