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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

労使委員会と既存の労働組合との関係について

労働組合固有の団体交渉権は、労使委員会が設置されても特段の影響はありません。

会社は、両者の関係を明確にするため、
労使委員会を設置する際には、労働組合と事前に協議を行い、
労使委員会が調査審議する事項の範囲を
労使委員会の運営規定で定めておくことが適当とされています。

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労使委員会で決議できる事項

労使委員会では、次の表にある労使協定について
それぞれ5分の4以上の多数による決議により
代替することができます。

<決議等の届け出が不要なもの>

1 1週間単位の非定型的労働時間制
2 1ヶ月単位の変形労働時間制
3 1年単位の変形労働時間制
4 フレックスタイム制
5 一斉休憩の適用除外
6 事業場外のみなし労働時間制
7 専門業務型裁量労働制
8 年次有給休暇の計画的付与
9 年次有給休暇中の賃金の支払い方法

<決議等の届け出が必要なもの>

1 三六協定(時間外・休日労働に関する協定)

<労使委員会での決議が必要で、決議等の届け出が必要なもの>
(労使協定では導入ができないもの)

1 企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制について

『企画業務型裁量労働制に関する決議届』(様式第13号の2)で
労働基準監督署長へ届出が必要です。

『企画業務型裁量労働制に関する決議届』(様式第13号の2)のひな形

三六協定について

『時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届』(様式第9号の3)で
労働基準監督署長へ届出が必要です。
ただし、事業場外労働に関する協定が締結されている場合は、
時間外・休日労働については様式第9号の3、
事業場外労働については『事業場外労働に関する協定届』(様式第12号)で
それぞれ届け出が必要です。

『時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届』(様式第9号の3)のひな形

『事業場外労働に関する協定届』(様式第12号)のひな形

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労使委員会の設置の手順は?

労使委員会の設置の手順は以下の通りです。

1 設置にあたって必要な事項について、労使で話し合う

<過半数労働組合がある場合>

会社側と労働組合で、労使委員会の日程、手順、
会社による一定の便宜の供与がなされる場合にあっては
そのあり方等について十分に話し合い、定めておくことが望ましいです。

<事業場の従業員の過半数で組織する労働組合が存在しない場合>

労使委員会の設置について、会社の申し入れを受け、または会社に対して申し入れを行う際には、
従業員は、必要に応じ、過半数代表者を選任して対処することになります。
過半数代表者は、管理監督者以外の人の中から、民主的な手続きによる選出方法で選びます。
(例:挙手、投票など)

過半数代表者は、会社と労使委員会の設置の時期の目標、設置に至る日程、
労使委員会の委員数等を話し合います。

2 労使各側を代表する委員を選ぶ

労使委員会は、従業員を代表する委員と会社を代表する委員で構成されています。
人数については、特に基準はありませんが、
従業員側委員は半数以上を占めていなければなりません。
ただし、労使各1名の2名からなるものは「労使委員会」として認められません。
会社側の代表委員は、会社側の指名により選出してください。

労働組合は、従業員側の代表委員を任期を定めて指名してください。

過半数代表者は、労使委員会の設置準備段階での取り決めに従い、
従業員側の代表委員を管理監督者以外の人の中から任期を定めて指名してください。
この場合、指名される人から事前の同意を得てください。

なお、対象事業場の労使委員会の委員として、
その事業場に属さない人を指名しても差し支えありません。

3 運営のルールを定める

労使委員会の同意を得て、運営規程を策定してください。

運営規定には、以下の項目についての定めが必要です。

1 労使委員会の招集に関する事項
  1 定例として予定されている委員会の開催に関すること
  2 必要に応じて開催される委員会の開催に関すること
2 労使委員会の定足数に関する事項
  1 全委員に関する定足数
  2 労使各側を代表する委員ごとに一定の割合または一定数以上の出席を必要とすること
3 議事に関する事項
  1 議長の選出に関すること
  2 決議の方法に関すること
4 その他労使委員会の運営について必要な事項
  1 会社が労使委員会に対して開示すべき情報の範囲、開示手続き、
    開示が行われる労使委員会の開催時期
  2 労働組合や労働条件に関する事項を調査審議する労使協議機関がある場合には、
    それらと協議の上、労使委員会の調査審議事項の範囲についての定め
5 労使委員会が労使協定に代えて決議を行うことができる規定の範囲についての定め

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企画業務型裁量労働制の概要は?

【企画業務型裁量労働制とは?】

対象業務に、その業務を適切に遂行するための知識や経験等を
持っている従業員を就かせた場合に適用できるみなし労働時間制度です。
の場合、労使委員会であらかじめ決議した時間働いたものとみなすことが出来ます。

「対象業務」とは次の全ての要件を満たす業務です。

1 事業運営上の重要な決定が行われる事業場で行われる業務であること
2 事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務であること
3 業務の性質上、その遂行方法を大幅に従業員の裁量に委ねる必要があり、
  その業務の遂行の手段、時間配分の決定等に関し、
  会社が具体的指示をしない業務であること

広い意味では裁量労働制ですので、
1日当たりの時間数働いたものとみなすという意味で、
専門業務型裁量労働制と同様の効果を生じさせますが、
対象となる業務や、導入手順などが異なりますので、注意が必要です。
    
【対象業務が存在する事業場とは?】

対象業務については具体的な範囲を労使委員会で決議しなければなりません。
(例:本社において企業全体の経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、
   経営に関する計画を策定する業務)
その要件として、以下の4つがあります。

1 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること

例えば、対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすもの、
事業場独自の事業戦略に関するものなど、
対象業務の該当性の有無(○×)は次の通りです。

例1 本社で企業全体の事業戦略の策定を行っている →○
例2 本社で個別の営業活動を行っている →×
例3 事業本部で特定の製品についての企業全体の事業戦略の策定を行っている →○
例4 関東支社で関東支社および関東地域の各支社を統括した事業戦略の策定を行っている →○
例5 茨城支店で個別の営業活動を行っている →×
例6 千葉支店のみの事業戦略の策定を行っている →○
例7 埼玉工場で特定の製品についての海外における事業戦略の策定を行っている →○
例8 埼玉工場で個別の製造作業やその工程管理を行っている →×

2 企画、立案、調査及び分析の業務であること
3 業務遂行の方法を大幅に従業員の裁量にゆだねる必要があると、
  「業務の性質に照らして客観的に判断される」業務であること
4 企画・立案・調査・分析という相互に関連しあう作業を、
  いつ、どのように行うか等についての
  広範な裁量が従業員に認められている業務であること

以上の要件のすべてを満たした業務が対象業務となります。
したがって、一定の職務経験年数以上で職能資格が一定以上の
従業員全てが該当するわけではありません。

なお、対象業務となりえる業務やなりえない業務の例については、
こちらのサイトをご覧ください。

【労使委員会の設置】

企画業務型裁量労働制を導入する際は、対象となる事業場において労使委員会を設置し、
その委員会の委員の5分の4以上の多数による決議で、必要な事項を決議する必要があります。

労使委員会とは、賃金、労働時間その他の労働条件に関する事項を調査審議し、
会社に対して意見を述べ、会社及びその事業場の従業員を代表する者が
構成員となっている委員会です。

労使委員会の設置の手順はこちらのサイトをご覧ください。
労使協定に代えて労使委員会で決議できる事項については、こちらのサイトをご覧ください。
労使委員会と既存の労働組合との関係については、こちらのサイトをご覧ください。

【労使委員会で決議する】

労使委員会では、会議に出席している委員の5分の4以上の多数決により、
8項目について決議する必要があります。
決議及び議事録(開催の都度作成する必要があります)は3年間
(決議を行った委員会にかかるものは、決議の有効期間の満了後3年間)保存し、
作業場への掲示等により従業員に周知しなければいけません。

適切な決議がなされるためには、各委員が決議にあたって必要な情報を
十分把握していることが必要です。
そのため、会社は対象従業員の評価制度や賃金制度等の情報を
労使委員会に対し開示することが適当です。

【労使委員会での決議事項】

企画業務型裁量労働制を導入するに当たり、
労使委員会で決議しなければならない事項が8項目あります。
(詳細はこちらのサイトをご覧ください。)

1 対象となる業務の具体的な範囲
2 対象従業員の具体的な範囲
3 労働したものとみなす時間
4 健康・福祉の確保措置の具体的内容
5 従業員からの苦情処理のため実施する措置の具体的内容
6 本制度の運用について従業員本人の同意を得なければならないこと及び
  不同意の従業員に対し不利益取り扱いをしてはならないこと
7 決議の有効期間
8 企画業務型裁量労働制の実施状況にかかる従業員ごとの記録を保存すること

なお、以上挙げた8項目以外にも、会社が対象となる従業員に適用される
評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更しようとする場合にあっては、
労使委員会に対し事前に変更内容の説明をするものとすることを盛り込むよう、
行政は指導しています。

【決議の届け出】

労使委員会で決議したことを、所定様式により労働基準監督署に届け出ます。
会社が決議を届けなければ、本制度の効果(労働時間のみなし効果)は生じません。

【対象従業員の同意を得る】

対象従業員に本制度を適用するには、決議に従い、
対象となる従業員の個人の同意を得なければなりません。
また、不同意の従業員に対して、会社は、解雇その他不利益な取り扱いをしてはいけません。

なお、就業規則による包括的な同意は、個別の同意には当たりません。
ご注意ください。

【制度を実施する上での注意点は?】

1 対象従業員を対象業務に就かせ、本制度を実施することにより、
  対象従業員については「実際の労働時間と関係なく、
  決議で定めた時間労働したものとみなす」効果が発生します。
  このみなしの効果は、年少者及び女性の労働時間に関する法の規定にかかる
  労働時間の算定については適用されません。

2 企画業務型裁量労働制の対象従業員も、
  休憩、法定休日に関する規程や深夜業の割増賃金の規程は原則通り適用されます。
  すなわち、法定休日や深夜に労働させた場合には、
  みなし労働時間にかかわらず、実際に働いた時間分の割増賃金を支給する必要があります。

3 決議に定めた範囲以外の業務・従業員に本制度を適用しても効力は発生しません。

4 会社は、健康及び福祉を確保するための措置や苦情の処理のための措置等の決議で
  定めた措置を実施しなければなりません。

5 会社は、決議が行われた日から起算して6ヶ月以内ごとに1回、
  所定様式により所轄労働基準監督署長へ定期報告を行うことが必要です。
  報告する事項は次の通りです。
  1 対象となる従業員の労働時間の状況
  2 対象となる従業員の健康及び福祉を確保する措置の実施状況

6 画業務型裁量労働制の導入の際には就業規則の所要の改定が必要です。

【決議の有効期間】

決議の有効期間は3年以内とすることが適当です。

有効期間が満了して企画業務型裁量労働制を継続する場合には、
再び「労使委員会で決議する」に挙げた8項目について決議し、
その上で決議に従い、改めて対象となる従業員の個人の同意を得なければなりません。

【時間外労働】

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は時間外労働になりますので、
三六競艇を締結し、届け出た上で、法定労働時間を超えた部分の時間に対しては
2割5分増以上の割増賃金を支払わなければなりません。

【休日労働】

みなし労働時間制が適用になる場合でも、法定休日の規程は適用されますので、
三六協定を締結し、届け出た上で、法定休日に労働した場兄は実際の労働時間に応じた3割5分増以上の割増賃金を支払わなければなりません。

【深夜労働】

午後10時から午前5時までの深夜に労働させた場合には、
深夜労働の時間に応じた割増賃金分(2割5分以上)を支払わなければなりません。

【休憩時間】

みなし労働時間が6時間を超え8時間までであれば45分以上、
8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を与えなければなりません。

【就業規則】

常時10人以上の従業員を使用する事業場において裁量労働制を適用する場合においては、
就業規則における始業・終業時刻の例外であること等により、
就業規則においても、始業・終業時刻、時間外労働、休日労働、深夜労働、休憩時間等について
定めた上で、従業員に周知して所轄労働基準監督署に届け出る必要があります。

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「うちの会社は裁量労働制だから」ってホント?

社長さんとお話ししてますと、時々、
「うちは裁量労働制でやっているから」とおっしゃる方がいます。

しかも対象者はどうやら全社員らしい。

こういう会社は大半、
「法的には認めていない独自の裁量労働制」を適用しています。

裁量労働制は、「専門業務型」と「企画業務型」があります。
簡単に言えば、専門業務型は職種に縛りがありまして、
全ての職種で認められている裁量労働制ではありません。

企画業務型は全社もしくは各部門の戦略立案を担当しているような人が対象で、
ルーチンワークをメインにしている人は除外されます。

例えば、給与計算等のルーチンワークをメインにしている人の場合、
給与計算業務は、専門業務型の裁量労働制に該当する職種ではありませんし、
ルーチンワークがメインですので、企画業務型の裁量労働制に該当する人でもありません。

また、裁量労働制を導入するには労働基準監督署に届け出を出す書類もあります。

こうした会社さんの場合、社長さんがおっしゃる「裁量労働制」とは
どんな労働時間制のことを指しているのか、
社長さんはどのような労働時間制を実現したいのかを伺い、
極力実態と法律の双方を満たせるようなご提案をすることがキモだと思っています。

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専門業務型裁量労働制の概要は?

【専門業務型裁量労働制とは?】

業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を
大幅に従業員の裁量に委ねる必要があるため、
その業務を行う手段や時間配分の決定などについて
会社や上司が具体的な指示をすることが難しい業務がありませんか?

専門業務型裁量労働制は、こうした業務として
厚生労働省令などにより定められた19業務の中から、
対象となる業務や1日当たりの時間数などを労使協定で定め、
従業員を実際にその業務に就かせた場合、
労使協定であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

【専門業務型裁量労働制の対象業務とは?】

専門業務型裁量労働制を採用することができるのは、
以下の19業務です。(以下、「対象業務」といいます。)

各対象業務をクリックすると、
対象業務の範囲についての詳細が表示されます。


【導入要件は?】

制度の導入にあたっては、
次の1~7の事項を労使協定で定めた上で、
導入する事業場ごとに様式第13号(下記のPDF)により、
所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。

なお、労使協定は従業員に周知しなければいけません。

1 対象業務(法令で定める19種類の対象業務に限る)
2 みなし時間(対象業務に従事する従業員の労働時間として算定される時間)
3 対象業務を遂行する手段、方法、時間配分等に関し、
  対象業務に従事する従業員に具体的な指示をしないこと
4 対象となる従業員の労働時間の状況に応じて実施する
  健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
5 対象となる従業員からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
6 有効期間(3年以内とすることが望ましい)
7 4および5に関し従業員ごとに講じた措置の記録を
  協定の有効期間中及びその期間の満了後3年間保存すること
8 時間外労働・休日労働・深夜労働
  (この事項は協定締結上任意事項ですが、
   専門業務型裁量労働制を適用する従業員に対して
   就業規則における一般従業員との定めと異なっており就業規則で定めない場合は、
   就業規則により協定に委任して協定により定める必要があります。)

【みなし時間】

労使協定には、対象業務の遂行に必要とされる時間を
1日当たりの労働時間として定める必要があり、
1日以外の期間、例えば1か月の労働時間として定めることはできません。

労使協定で定めた時間、すなわち、みなし労働時間は
労働基準法第4章の労働時間に関する規定の適用にかかる
労働時間の算定についてのみ適用されることになります。

また、労働基準法第6章の年少者及び労働基準法第6章の2の女性の規定に関する
規定における労働時間の算定には適用されません。

例えば、労働基準法第66条の規定により、
妊産婦の請求があった場合は、
実際の労働時間が1日8時間及び1週40時間を
超えないように労働させなければなりません。

よって、みなし労働時間制が適用される場合であっても、
休憩、深夜業、休日、年次有給休暇などの規定は排除されません。

【健康・福祉の確保措置の具体的内容】

健康・福祉確保措置の内容については、企画業務型裁量労働制における
措置の内容と同等のものとすることが望ましいとされています。

企画業務型裁量労働制における措置の内容は以下の通りです。

会社は、対象労働者の健康及び福祉を確保するため、
下記の2点について決議する必要があります。

1 対象従業員の勤務状況を把握する方法を具体的に定めること
2 把握した勤務状況に応じ、どういう状況の対象従業員に対し、
  いかなる健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にすること

勤務状況の把握方法については、
通常の労働時間管理と同様の管理までは求められていませんが、
出退勤時刻のチェック等によって、
従業員がいかなる時間帯にどの程度の時間在社していたのかの
状況を把握する方法で明確に定めることが必要です。

<健康・福祉確保措置の例>

1 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
  代償休日または特別な休暇を付与すること
2 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
  健康診断を実施すること
3 働き過ぎ防止の観点から、年次有給休暇について
  まとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
4 心と体の健康問題についての相談窓口を設置すること
5 働きすぎによる健康障害防止の観点から、
  必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、
  または対象従業員に産業医等による保健指導を受けさせること
6 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に配慮し、
  必要な場合には適切な部署に配置転換をすること

また、上記と合わせて次の事項についても決議することが望まれます。

1 会社が対象となる従業員の勤務状況を把握する際、併せて健康状況を把握すること
2 会社が把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
  対象従業員への企画業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うこと
3 会社が対象となる従業員の自己啓発のための特別の休暇の付与等
  能力開発を促進する措置を講ずること

【従業員からの苦情処理のため実施する措置の具体的内容】

苦情処理措置の内容については、企画業務型裁量労働制における
措置の内容と同等のものとすることが望ましいとされています。

企画業務型裁量労働制における措置の内容は以下の通りです。

申し出の窓口、取り扱う苦情の範囲等、措置の具体的内容を
決議で定めることが求められています。
業績評価制度や目標管理制度、
これに基づく報酬制度などが導入されている場合には、
評価制度や報酬制度に付随する苦情が多く寄せられることが予想されます。

そこで、これらに関する苦情についても、
苦情処理の対象に含めるように措置することが適当であると
行政では指導をしています。

既に企業内に苦情処理システムをお持ちの企業については、
例えば、そのようなシステムで裁量労働制に関する苦情処理を
合わせて行うことを対象従業員に周知するというように、
実態に応じて機能するよう配慮することが求められます。

【記録の保存】

次の事項の記録については、労使協定の有効期間中と
有効期間満了後3年間保存しなければならず、
このことを労使協定に定めておく必要があります。

1 対象従業員の労働時間の状況
2 対象従業員の健康・福祉確保措置の状況
3 対象従業員からの苦情処理措置の状況

【時間外労働】

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合には時間外労働になります。
したがって、「三六協定」を締結し、届け出た上で、
法定労働時間を超えた部分の時間に対しては
2割5分増以上の割増賃金を支払わなければなりません。

【休日労働】

みなし労働時間制が適用になる場合でも、
労働基準法第35条の休日の規定は適用されます。

したがって、「三六協定」を締結し、届け出た上で、
法定休日に働いた場合には労働基準法第37条第1項により、
実際の労働時間に応じた3割5分増以上の
割増賃金を支払わなければなりません。

【深夜労働】

午後10時から翌朝午前5時までの深夜に働かせた場合には、
労働基準法第37条第3項が適用されます。
したがって、深夜労働の時間に応じた
2割5分以上の割増賃金を支払わなければなりません。

【休憩時間】

みなし労働時間が6時間を超え8時間までであれば45分以上、
8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を与えなければなりません。
ただし、対象従業員に所定の休憩時間を支持することは
労働時間の配分についての指示となりますので、
可能な限り所定の休憩時間を与え、
取得できなければ別の時間帯に取得させる必要があります。

【その他の労使協定事項】

みなし労働時間制の対象従業員に対しては、
「出退勤時刻の管理」や「裁量労働制適用の中止」の事項も労使協定事項となります。
それは以下の観点から要請されるものです。

1 労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を講ずる必要がある
2 休日労働・深夜労働について法定基準の定めがある
3 健康・福祉確保措置または苦情処理措置と合わせて
  事後措置も設けることが望ましい

【就業規則】

常時10人以上の従業員を使用する事業場において
裁量労働制を適用する場合においては、
就業規則における始業・終業時刻の例外であることなどにより、
就業規則においても、始業・終業時刻、休日労働、
深夜労働、休憩時間などについて定めた上で、
従業員に周知して所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

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事業場外労働のみなし労働時間制における1日における労働時間の算定

事業場外で業務に従事し、会社や上司の具体的な指揮監督が及ばず、
労働時間の算定が困難な場合は、
事業場外労働のみなし労働時間制を活用して、
その事業場外労働の時間を「みなす」ことになりますが、
この場合の1日における労働時間の算定の方法は、以下の通りになります。

所定労働時間とは就業規則等で定められた
始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間のことで、
労働義務のある時間です。

例えば、次の図のとおり、所定労働時間が7時間30分、
休憩時間が1時間(午前12時から午後1時までの間)で
始業時刻が午前9時、終業時刻が午後5時30分の場合に、
事業場外労働のみなし労働時間制による労働時間の算定方法と
1日の労働時間の算定は次の通りになります。
(青い線:事業場内労働)

原則.jpg

<1 労働時間の全部について事業場外で労働した場合>

ア 労働時間の全部について事業場外での業務を行う
  いわゆる直行・直帰型の事業場外労働の場合

ケース1(赤い線:事業場外労働)
例1.jpg

この場合、労働時間の算定が困難な事業が外の業務の遂行に
通常必要とされる時間(通常必要時間)が所定労働時間以内であれば、
所定労働時間労働したものとみなして、
1日の労働時間は7時間30分と算定して労働基準法を適用することになります。
ただし、上のケース1のように、
事業場外労働が常態として
所定労働時間(7時間30分)を超えて8時間行われる等、
所定労働時間を超えることが通常必要となる時は、
通常必要時間を労働したもの(この場合は8時間)とみなすことになります。

なお、通常必要時間とは、「通常の状態でその業務を遂行するために
客観的に必要とされる時間」のことで、
対象従業員の事業場外労働の実態等により必要時間は異なることから、
事業場外労働の実際に必要とされる時間を平均した時間となります。

<2 労働時間の一部について事業場外で労働した場合>

ア 事業場内労働(内勤)を行った後、
  事業場外労働(外勤)を行ってそのまま直帰する場合

ケース2(青い線:事業場内労働 赤い線:事業場外労働)
例2.jpg

外勤の通常必要時間(例えば3時間の場合)が
内勤の時間(上のケース2の場合は9時から14時までの4時間)を合計すると7時間となり、
所定労働時間数(7時間30分)以内であるので、
外勤については内勤の時間を含めて所定労働時間働いたとみなし、
1日の労働時間は7時間30分となります。

ただし、内勤の時間が5時間である場合には、
外勤の通常必要時間の3時間を加えると所定労働時間数を超えるので、
この外勤は3時間働いたものとみなして、1日の労働時間は8時間となります。

イ 直行型の外勤を行い、その後内勤を行う場合

ケース3(青い線:事業場内労働 赤い線:事業場外労働)
例3.jpg

この場合は、外勤の通常必要時間(例えば3時間の場合)が
内勤の時間(上のケース3の場合は14時30分から18時30分までの4時間)を
合計して所定労働時間以内であるので、
外勤については内勤の時間を含めて所定労働時間労働したものとみなし、
1日の労働時間は7時間30分となります。

ただし、内勤の時間が6時間である場合には、
外勤の通常必要時間の3時間を加えると所定労働時間数を超えるので、
この外勤は3時間働いたものとみなして、1日の労働時間数は9時間となります。

ウ 外勤と内勤が混在する場合

ケース4(青い線:事業場内労働 赤い線:事業場外労働)
例4.jpg

この場合も、AとBの外勤の通常必要時間(例えば4時間の場合)が
内勤の時間(上野ケース4の場合は3時間30分)を合計して所定労働時間以内であるので、
外勤については内勤の時間を含めて所定労働時間働いたものとみなし、
1日の労働時間は7時間30分となります。

ただし、内勤の時間が5時間30分である場合には、
外勤の必要時間の4時間を加えると所定労働時間を超えるので、
この外勤は4時間働いたものとみなして、1日の労働時間は9時間30分となります。 

この他、事業場外労働のみなし労働時間制の概要を知りたい方はこちらをクリックしてください。

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事業場外労働のみなし労働時間制における1日における労働時間の算定の続きを読む ≫

事業場外労働のみなし労働時間制の概要は?

【事業場外労働のみなし労働時間制とは?】

事業場外労働のみなし労働時間制とは、
従業員が業務の全部または一部を事業場外で従事し、
会社や上司の指揮監督が及ばないために、
その業務についての労働時間の算定が難しい場合に、
本来、会社に課せられている労働時間の算定義務を免除し、
その事業場外労働について「特定の時間」働いたものと
みなすことのできる制度です。

【事業場外労働のみなし労働時間の要件は?】

事業場外労働のみなし労働時間制の対象とするためには、
次の2つの要件を満たす必要があります。

1 労働時間の全部または一部を事業場外で業務に従事すること
2 会社や上司の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が難しいこと

次のように事業場外で従事する場合であっても、
会社や上司の指揮監督が及んでいる場合については、
労働時間の算定が可能ですので、みなし労働時間制の適用はできません。

1 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、
  そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
2 携帯電話等によって随時使用者の指示を受けながら働いている場合
3 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、
  指示通りに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

新聞・雑誌の記者、直行直帰型の営業社員、
一般従業員の出張時等に適用されることが多いです。

【労働時間の算定方法は?】

事業場外労働のみなし労働時間制が適用される
事業場外の業務に従事した場合における労働時間の算定には、
次の3つの場合があります。

1 所定労働時間
2 事業場外の業務を遂行するためには、
  通常所定労働時間を超えて働くことが必要である場合には
  その業務の遂行に通常必要とされる時間
3 2の場合で労使協定が締結されている時は、
  その協定により事業場の業務の遂行に
  通常必要とする時間として定めている時間

ただし、2及び3の方法による場合で
「みなすことのできる労働時間」は
事業場外労働に該当する部分のみです。

労働時間の一部を事業場内で働いた場合には、
その時間については別途把握しなければならず、
「みなす」ことはできません。

したがって、労働時間の一部について
事業場外で業務に従事した日における労働時間は、
次の計算式となります。

みなし労働時間制により算定される業場外で業務に従事した時間
+ 別途把握した事業場内における時間

【1日における労働時間の算定方法は?】

こちらをクリックしてご確認ください。

【事業場外労働に関する労使協定について】

常態として行われている事業場外の業務であって
労働時間の算定が困難であり、
通常所定労働時間を超える場合は、
その業務について通常必要時間を労使協定書により定めると、
その協定で定める時間が通常必要時間となります。

労使協定の締結事項としては、下記の通りです。

1 対象とする業務
2 みなし労働時間
3 有効期間

さらに、下記のものについては就業規則で定めることで足りますが、
他の従業員と異なる扱いをする場合には、
労使協定で定めることになります。

4 時間外労働
5 休日労働
6 深夜労働

労使協定は従業員に周知しなければいけません。

また、その協定で定める時間が法定労働時間を超える場合には、
事業場外労働に関する協定届(様式第12号)を
事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出する必要があります。

なお、様式第9号の2の時間外労働に関する協定届を届け出ることにより
様式第12号に替えることができます。

<労働時間の全部について事業場外で働いた場合>

労使協定で定める時間は事業場外の業務についての通常必要時間となります。

<労働時間の一部について事業場外で労働した場合>

1 労使協定で定める時間と事業場内労働の時間を加えた時間が
  所定労働時間を超える日

  労使協定であらかじめ定めた時間が
  事業場外労働の時間と算定されます。

  この場合の労働時間は、労使協定で定めた事業場外労働の時間と
  別途把握した事業場内労働の時間の合計となります。

2 労使協定で定める時間と事業場内労働の時間を加えた時間が
  所定労働時間を超えない日

  労使協定で定めた時間ではなく、
  事業場外労働の労働時間は
  事業場内労働の時間を含めて所定労働時間働いたものとみなします。

【時間外労働についての考え方】

事業場外労働のみなし労働時間制により算定されるみなし労働時間が
法定労働時間を超える場合には
法定労働時間を超えた時間は時間外労働となり、
2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。
(例:事業場外の業務に従事した時間と
 別途把握した事業場内の業務に従事した時間の合計が
 法定労働時間を超えた場合 等)

【休日労働についての考え方】

事業場外労働のみなし労働時間制により
労働時間が算定される場合であっても、
法定休日の規程は適用になります。

<法定休日に労働時間の全部が事業場外で業務に従事した場合>

その労働時間の算定が困難であり、
通常必要時間が所定労働時間以内であるときには、
所定労働時間働いたものとみなします。

その結果、所定労働時間に対して
3割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

なお、休日労働の日の所定労働時間は
通常の労働日の所定労働時間によります。

<法定休日の労働時間の一部が事業場内労働である場合>

みなし労働時間制により算定される事業場外で業務に従事した時間と、
別途把握した事業場内における時間の合計に対して、
3割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

<法定休日以外の所定休日労働の場合>

法定休日と同様に、所定休日労働の時間を算定してください。
法定労働時間を超える時間は時間外労働となります。

時間外労働と同様に割増賃金を支払う必要があります。

【深夜労働についての考え方】

事業場外労働のみなし労働時間であっても、
深夜労働の条文は適用されます。

午後10時から午前5時までの間に働いた時は、
その時間については2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

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1週間単位の非定型的変形労働時間制の概要は?

【1週間単位の非定型的変形労働時間制とは?】

30人未満の事業場である小売業・旅館・料理店・飲食店において、
業務の繁閑に応じて1週間単位で毎日の労働時間を柔軟に定めることができる制度です。

この制度を導入することで、
1週間40時間以内の範囲で1日の法定労働時間(8時間)を超える
所定労働時間を設定することができます。

週ごとに忙しい日と暇な日が異なる場合や、
日々の業務において繁閑の差が大きい等、
1週間ごとに労働時間を変更した方が効率がよい場合に適しています。

【導入するための要件】

1 労使協定を締結すること
  労使協定は従業員に周知し、所轄労働基準監督署長に届け出を行う必要があります。
2 就業規則を作成し、所轄労働基準監督署に届け出を行うこと
  ※1週間単位の非定型的変形労働時間制を実施する旨を規定します。
  ※本来は就業規則の作成・届出義務がない従業員が常時9人以下の事業場についても
   この制度を導入する場合は、就業規則を作成し、届け出ることになっています。
3 1週間の所定労働時間は40時間以内1日は10時間を限度とすること
4 1週間の各日の労働時間を、その週の始まる前(前週末)までに
  従業員に書面で通知すること
5 緊急でやむを得ない事由が生じた場合には既に通知した労働時間を、
  変更しようとする日の前日までに書面により従業員に通知すること
  (ただし、台風の接近等客観的事実により、
   当初想定した業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合はよいですが、
   使用者の主観的な必要性である場合は認められません)
6 1週間の各日の労働時間を決めるにあたっては、従業員の意思を尊重するように努めること

なお、小売業・旅館・料理店・飲食店の事業のうち、
10人未満の事業場の1週間の法定労働時間は、週44時間となっていますが、
1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合には、
この特例は適用されず、1週間40時間以内としなければなりません。

【就業規則に定めることは何?】

1週間単位の非定型的変形労働時間制は
各週ごとに各日の所定労働時間を定める制度です。

このため、就業規則においては、1週間の所定労働時間を定めて、
各日の始業・終業時刻及び休憩時間については、
従業員に通知する時期や方法などを規定することになります。

なお、業務ごとに勤務パターン、例えば、早出・中出・遅出が業務ごとに定められている場合は、
それぞれの業務ごとの勤務パターンにおける始業・終業時刻及び休憩時間も規定してください。

【割増賃金の支払いについて】

次の時間について時間外労働となり、割増賃金を支払うことが必要です。

1 従業員に対する通知により所定労働時間が8時間を超える日については
  その所定労働時間を超えた時間
  所定労働時間が8時間以内の日については8時間を超えた時間
2 1週間については、40時間を超えた時間
  (ただし、「1」で時間外労働となる部分は除きます)

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フレックスタイム制のメリットとデメリットは?

フレックスタイム制は従業員の意思で始業時刻と終業時刻を決められる点に特徴があります。

といっても、ある社員は早朝に来て昼過ぎに帰り、
別の社員は昼過ぎに来て夜に帰るような形になると、
会議もしづらくなってしまいます。

そこで、この時間帯は必ず在籍するようにという「コアタイム」を設け、
その前後にこの時間帯の範囲内で出社・退社してくださいという「フレキシブルタイム」を設けます。
コアタイムをあまり長くしすぎると、実質的にフレックスタイム制度の趣旨が損なわれることから、
だいたい4時間程度までをコアタイムとすることが多いです。

※昔、コアタイムを5時間にしたら、労基署から行政指導を受けたことがありました。

従業員にとっては、自分の意思で出社時刻や退社時刻が決められますので、
非常にメリットが大きい制度です。

しかも、1日8時間働かなくても、コアタイムの時間帯に在籍していれば、
遅刻・早退もありません。

コアタイムが4時間の会社の場合、月の半分はコアタイムの4時間のみ、
残り半分はコアタイムを含めて12時間働けば、平均8時間となります。
この場合、この人は(深夜や休日に仕事をしていなければ)
遅刻・早退・残業が一切ないとみなされ、
通常の月給をもらうことになります。

今日は早めに退社して、その分明日頑張ろうといった時間配分もできるわけです。

一方、会社側から見たらいかがでしょうか。
上記のメリットを従業員が享受することで、ライフワークバランスが取りやすくなり、
仕事に活力が生まれ、生産性が上がれば会社にとってもメリットとなります。

ただし、実は他の変形労働時間制と比較して、扱いづらい制度ではあります。

従業員が自主的に出社・退社時刻を決めるということは、
原則として「明日は9時に来なさい」等と言いづらくなることを意味しています。
(※ 絶対言えないということではありません。)

朝イチ全員で集まって早朝会議をすることもしづらくなり、
コアタイムの時間帯に会議を設定することが多くなってきます。
この時間帯はお客様とお目にかかったりすることも多いでしょうから、
コアタイムにも会議を入れづらくなるでしょう。

月曜日は通常の労働時間制度、他の日はフレックスタイム制といったように
曜日単位で変形労働時間制を導入することもできません。

要は、労働時間に関する権限の一部について、会社から従業員側に譲ることになるのです。
こうしたことにストレスを感じる経営者の方や、
これでは仕事が回らなくなるという会社の場合は、
導入を見送ることを検討した方がよいでしょう。

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フレックスタイム制の概要は?

【フレックスタイム制とは?】

フレックスタイム制とは、1ヶ月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、
従業員がその範囲内で、業務の繁閑などに合わせて、
各自の始業及び終業時刻を選択して働く制度です。

これにより、従業員はその生活と業務との調和を図りながら効率的に働くことが可能となります。

このフレックス制による場合は、三六協定がなくても、
清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、従業員が選択することにより、
1日の労働時間帯を、コアタイムとフレキシブルタイムとに分け、
始業及び終業の時刻を従業員の決定に委ねることになります。

 ※ コアタイム:従業員が労働しなければならない時間帯
 ※ フレキシブルタイム:従業員の選択により労働することができる時間帯の中であれば
    いつ出社または退社してもよい時間帯

なお、コアタイムは必ず設けなければならないものではありませんので、
1日の労働時間帯の全部をフレキシブルタイムとすることもできます。

逆に、1日の労働時間帯の中でコアタイムがほとんどを占め、
フレキシブルタイムが極端に短い場合は、
基本的に始業及び終業の時刻を従業員の決定に委ねたことにならず
フレックスタイム制とはみなされません。
(経験的にはコアタイムは4時間くらいまでが限度のようです。)

【要 件】

フレックスタイム制を採用するためには、次の要件を満たさなければなりません。

1 就業規則その他これに準ずるものにより、
  始業・終業の時刻を従業員の決定に委ねる旨を定めること
2 書面による労使協定で、対象従業員の範囲や清算期間など、
  次に説明する「労使協定で定めること」に掲げる事項を定めること
  
  ※ この労使協定は従業員に周知させなければなりません。
  ※ この労使協定を管轄の労働基準監督署へ届け出る義務はありません。

【労使協定で定める事項】

1 対象となる従業員の範囲
  フレックスタイム制を適用する従業員の範囲を明確に定めることが必要です。
  この場合、対象となる従業員の範囲を「全従業員」あるいは
  「特定の職種の従業員」と定めることができます。
  個人ごと、課ごと、グループごとなど様々な範囲も考えられます。

2 清算期間
  A 清算期間は、フレックスタイム制において
    労働契約上従業員があろうどうすべき期間を定めるもので、1ヶ月以内とされています。
    「1ヶ月以内」ですから、1週間単位なども可能です。
    ただし、賃金計算期間に合わせて1ヶ月とする場合が一般的です。
  B 清算期間については、その長さと起算日を定めることが必要です。
    単に「1ヶ月」とせず、毎月1日から月末までなどと定めることが必要です。

3 清算期間における総労働時間
  A  この時間は, 労働契約上従業員が清算期間内において
    労働すべき時間として定められている時間のことで、
    清算期間における所定労働時間のことです。
  B  この時間は、 清算期間を平均し、1週間の労働時間が
    法定労働時間(原則40時間)の範囲内とするように定めることと要します。
    その計算方法は、1ヶ月単位の変形労働時間制と原則として同様です。

   清算期間における総労働時間≦40×(清算期間における暦日数/7)
                       =清算期間における法定労働時間の総枠

  C 労使協定は, 清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、
    例えば1ヶ月160時間というように
    各清算期間を通じて一律の時間を定める方法の他、
    清算期間における所定労働日を定め、
    所定労働日1日当たり7時間というような定め方をすることもできます。

4 標準となる1日の労働時間
  標準とのある1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に支払われる
  賃金の算定基礎となる労働時間等となる労働時間の長さを定めるものであり、
  単に時間数を定めれば足りますが、
  定め方としては、清算期間における総労働時間を
  その期間における所定労働日数で除す方法などがあります。
  なお、フレックスタイム制を採用している従業員がその清算期間内において、
  有給休暇を取得したときには、その取得した日については、
  標準となる労働時間を労働したものとして取り扱うことになります。

5 コアタイム・フレキシブルタイムの開始および終了の時刻
  コアタイム・フレキシブルタイム等を設ける場合は、
  必ず労使協定でその開始および終了時刻を定めることとされています。

【労働時間の算定等】

フレックスタイム制においては、始業及び終業の時刻を
従業員の決定に委ねることになりますが、
その場合にも使用者は労働時間を把握する義務があり、
使用者は、各従業員の各日の労働時間を把握しなければなりません。

【労働時間の過不足の取り扱い】

実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として定められた時間に比べ
過不足が生じた場合には、
清算期間内で労働時間及び賃金を清算することが原則ですが、
次の清算期間に繰り越すことの可否については次の通りです。

1 実際の労働時間に過剰があった場合

  結論:過剰分は残業代として支払うこと

  清算期間における実際の労働時間に過剰があった場合に、
  総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払い日に支払うが、
  それを超えて働いた時間分を、次の清算期間中の総労働時間の一部に充当することは、
  その清算期間内における労働の対価の一部が
  その期間内の賃金支払い日に支払われないことになり、
  賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に違反します。

2 実際の労働時間に不足があった場合

  結論:一定条件の下、不足分を時月に繰り越すことができる

  清算期間における労働時間に不足があった場合に、
  総労働時間として定められた時間分の賃金は
  その期間の賃金支払い日に支払うが、
  それに達しない時間分を次の清算期間中の総労働時間に上積みして労働させることは、
  法定労働時間総枠の範囲内である限り、
  その清算期間においては実際の労働時間に対する賃金よりも多く賃金を支払い、
  次の清算期間で、その分の賃金の過払いを清算するものと考えられ、
  賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に違反するのではありません。

  ただし、この場合には、繰り越された時間を加えた次の清算期間における労働時間が
  法定労働時間の総枠の範囲内となるように、
  繰り越しできる時間の限度を定める必要があります。

【時間外労働】

フレックスタイム制を採用した場合の時間外労働は1日及び1週間単位では判断せず、
清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間となります。

したがって、時間外労働に関する協定についても、1日の延長時間について協定する必要はなく、
清算期間を通算しての延長時間および1年間の延長期間の協定をすれば足りることとなります。

なお、清算期間が1ヶ月で、清算期間を通じて完全週休2日制を実施している場合、
清算期間における曜日の巡りや労働日の設定によっては、
清算期間の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えることがありますが、
次の要件を満たす場合に限って、清算期間の労働時間が法定労働時間の枠を超える場合にも、
法定労働時間以内とみなす特別な取り扱いを認めています。

A 清算期間を1ヶ月とするフレックスタイム制の労使協定が締結されていること
B 清算期間を通じて毎週必ず2日以上休日が付与されていること
C 特定期間(=その期間の29日目を起算日とする1週間)における
  対象となる従業員の実際の労働日ごとの労働時間の和が
  週の法定労働時間(40時間)を超えるものでないこと
D 清算期間における労働日ごとの労働時間が概ね一定であること。
  したがって、完全週休2日制を採用する事業場における
  清算期間中の労働日ごとの労働時間については、概ね8時間以下であること

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1年単位の変形労働時間制の概要は?

【1年単位の変形労働時間制とは?】

労使協定を締結することにより、1ヶ月を超え1年以内の一定期間を平均し、
1週間の労働時間を40時間以下の範囲以内にした場合、
特定の日や週について1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。

業務に繁閑のある事業場において、
繁忙期に長い労働委時間を設定し、かつ、閑散期に短い労働時間を設定することにより
効率的に労働時間を配分して、年間の総労働時間の短縮を図ることを目的にしたものです。

この労使協定は労働基準監督署長に届け出る必要があります。
1年単位の変形労働時間制を実施する時には、
書面による労使協定で次の5項目について定めることとされています。

1 対象労働者の範囲
2 対象期間及び起算日(対象期間:1ヶ月を超え1年以内の期間に限ります)
3 特定期間
4 対象期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
5 労使協定の有効期間

1年単位の変形労働時間制に関する労使協定を締結した場合は従業員に周知し、
所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。

また、常時10人以上の従業員を使用している事業場については、
1年単位の変形労働時間制を採用すること等を就業規則に記載したうえで、
これを労働基準監督署長に届け出ることとされています。

【対象労働者の範囲は?】

1年単位の変形労働時間制により労働させる従業員の範囲を
労使協定で明確にしなければいけません。
なお、勤務期間が対象期間に満たない途中採用者・途中退職者等についても
賃金の精算を条件に本制度の適用が認められています。

【対象期間及び起算日は?】

変形労働時間制の対象期間は、その期間を平均して1週間当たりの労働時間が
40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、
1ヶ月を超え1年以内の期間に限ります。

最長期間は1年間です。
期間が1年以内であれば、3ヶ月、4カ月、半年等の対象期間を採用することも可能です。

【労働日と労働時間の特定について】

対象期間を平均して、1週間の労働時間が40時間を超えないように
対象期間内の各日、各週の労働時間を定めることが必要です。
これは対象期間の全期間にわたって定めなければなりません。

ただし、対象期間を1ヶ月以上の期間に区分することとした場合には
下記の4点を定めればよいこととなっています。

1 最初の期間における労働日
2 最初の期間における労働日ごとの労働時間
3 最初の期間を除く各期間における労働日数
4 最初の期間を除く各期間における総労働時間

この場合でも、最初の期間を除く各期間の労働日と労働日ごとの労働時間については、
その期間の始まる少なくとも30日前に労働組合
(労働組合がない場合には労働者の過半数を代表するもの)の同意を得て、
書面により定めなければいけません。

なお、対象期間を通した所定労働時間の総枠は、次の計算式によることになります。

対象期間における所定労働時間総枠≦40時間×(対象期間の暦日数/7)

※参考:対象期間が1年間の場合、約2085時間となります。

【労働日数の限度について】

対象期間における労働日数の限度は、原則として1年当たり280日となります
(対象期間が3ヶ月以内の場合は、制限はありません。)。

対象期間が3ヶ月を超え1年未満の場合は、下記計算式で上限日数が決まります。
通常の年は1年間で365日ですが、閏年は366日です。

計算式:280日×対象期間中の暦日数÷365日

例:対象期間が平成●年1月1日から6月30日までの6カ月(総暦日数181日)の場合は
280日×181日÷365日=138.84となり、138日が限度となります。

ただし、対象期間が3ヶ月を超える場合であって、
前年度において、3ヶ月を超える期間を対象期間とする協定
(以下「旧協定」といいます)があった時は、
旧協定の1日または1週間の労働時間よりも新協定の労働時間を長く定め、
及び1日9時間または1週48時間を超えることとしたときは、
1年間の労働日数を280日または、旧協定の労働日数から1日を減じた日数のうち
いずれか少ない日数としなければいけません。

【対象期間における連続労働日数と特定期間について】

連続労働日数は原則として最長6日までです。
ただし、「特定期間」を設ければ1週間に1日の休日が確保できる日数(最長12日)
とすることができます。

なお、「特定期間」とは労使協定により対象期間のうち
特に業務が繁忙な時期として定められた期間をいいます。

【1日・1週間の労働時間の限度】

1年単位の変形労働時間制には、1日・1週(対象期間の初日の曜日を起算とする7日間。
以下同じ。)労働時間の限度が定められており、
1日10時間、1週52時間が限度時間です。
(隔日勤務のタクシー運転者の1日の限度時間は16時間です。)

この場合、対象期間が3ヶ月を超える時は、
この限度時間を設定できる範囲には次のような制限があります。
(ただし、積雪地域の建設業の屋外従業員等に対する1年単位の変形労働時間制については
 制限がありません。)

1 対象期間名中に、週48時間を超える労働時間を定めるのは連続3週間以内とすること。
2 対象期間を初日から3ヶ月ごとに区切った各期間
  (3ヶ月未満の期間がある場合にはその期間)において、
  週48時間を超える労働時間を定める週の初日の数が3以内であること。

【割増賃金の支払い方は?】

労働時間が法定労働時間を超えた場合には、
その超えた時間について割増賃金を支払うことが必要です。

次の時間については時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。

1 1日の法定時間外労働

労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、
それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

2 1週の法定時間外労働

労使協定で1週40時間を超える時間を定めた日はその時間、
それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(1で時間外労働となる時間は除く)

3 対象期間の法定時間外労働

対象期間の法定労働時間の総枠(40時間×対象期間の暦日数÷7)を超えて
労働した時間(1または2で時間外労働となる時間を除く)

【途中採用者・途中退職者等の賃金精算】

対象期間より短い期間労働した者に対しては、
使用者はこれらの従業員が実際に勤務した期間を平均して
週40時間を超えて働いた時間に対して、
次の計算式により割増賃金を支払うことが必要です。
割増賃金の精算を行う時期は、途中採用者の場合は対象期間が終了した時点、
途中退職者の場合は、退職した時点となります。

なお、転勤等により対象期間の途中で移動により労使協定の対象となった場合や、
逆に対象外となった場合についても精算が必要になります。

割増賃金を支払う時間 = 実勤務期間における実労働時間
- 労働基準法第37条の規定に基づく割増賃金の支払いを要する時間
- (40×実労働期間の暦日数÷7)

なお、労働基準法第37条の規定に基づく割増賃金の支払いを要する時間とは、
上記【割増賃金の支払い方は?】の1、2で解説した、
1日・1週の法定労働時間外労働に該当する時間を指しています。

【育児を行う者等に対する配慮】

1年単位の変形労働時間制を導入する場合においても、
育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練または教育を受ける者
その他特別の配慮を要する者については、
これらの者が育児等に必要な時間を確保できるよう配慮しなければならないとされています。

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1ヶ月単位の変形労働時間制の概要は?

【1ヶ月単位の変形労働時間制とは?】

1ヶ月以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲において、
その変形期間においては、1日及び1週間の法定労働時間
(1日8時間、1週40時間(特例措置対象事業場は44時間))の規制にかかわらず、
法定労働時間を超えて労働させることができる労働時間制です。

1ヶ月単位の変形労働時間制は、就業規則その他これに準ずるもの、
または労使協定により導入することができます。

【要件】

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則等または労使協定により
次の1~4の要件を具体的に定める必要があります。

1 変形労働時間制を採用する旨の定め

2 労働日、労働時間の特定

  変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めなければいけません。
  各日の労働時間は、単に「労働時間は1日8時間とする」という定め方ではなく、
  長さの他、始業及び終業の時刻をも具体的に定め、かつ、
  これを従業員に周知しなければいけません。
  変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても、
  使用者が任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しません。

3 変形期間の所定労働時間

  変形期間の労働時間を平均して1週間の労働時間は
  法定労働時間を超えないこととされているため、
  変形期間の所定労働時間の合計は、
  次の式によって計算された範囲内とすることが必要となります。

  法定労働時間×変形期間の暦日(1ヶ月以内)÷7(1週間)

  これによって計算すると、例えば1ヶ月の場合、労働時間の総枠は次のようになります。

  31日の月 ⇒ 177.1時間
  30日の月 ⇒ 171.4時間
  29日の月 ⇒ 165.7時間
  28日の月 ⇒ 160.0時間

  ※ 労働時間の総枠は法定労働時間を週40時間として計算し、
     小数点第2位以下を切り捨てて算出しています。
  ※ 例措置対象事業場の場合は、上記計算式の法定労働時間を
     44時間として計算したものが、変形期間の労働時間の総枠となります。

4 変形期間の起算日

  変形期間の始期を明らかにしなければいけません。

【就業規則等と労使協定について】

1 就業規則等

常時従業員を10人以上使用している事業場については就業規則の作成義務があるため、
その事業場が1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合は、
就業規則に前述の1~4の要件を記載し、従業員に周知するほか、
就業規則(変更)届を所轄労働基準監督署に届け出なければいけません。

従業員常時9人以下の事業場については、就業規則の作成義務がないので、
就業規則に準ずるものに規定することにより1ヶ月単位の変形労働制を採用することができます。
この場合、「就業規則に準ずるもの」を従業員に周知しなければいけません。

2 労使協定

労使協定を締結する場合には、次の4点について協定し、従業員に周知するほか、
所轄労働基準監督署に届け出を行う必要があります。

  1 変形期間と変形期間の起算日
  2 対象となる従業員の範囲
  3 変形間中の各日及び各週の労働時間
  4 労使協定の有効期間

なお、常時10人以上の従業員を使用する事業場が労使協定を締結し届け出を行う場合には、
就業規則(変更)の届け出も必要となります。

【割増賃金の支払い方は?】

労働時間が法定労働時間を超えた場合には、
その超えた時間について割増賃金を支払うことが必要です。

次の時間については時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。

1 1日の法定時間外労働

就業規則等または労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、
それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

2 1週の法定労働時間

就業規則等または労使協定で1週40時間を超える時間を定めた日はその時間、
それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(1で時間外労働となる時間は除く)

3 対象期間なの法定時間外労働

対象期間の法定労働時間の総枠(40時間×対象期間の暦日数÷7)を超えて
労働した時間(1または2で時間外労働となる時間を除く)

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業務中の事故でケガをした社員の通院時間は労働時間か?

業務中に発生した事故が元でケガをした社員が、
勤務時間中に通院をする場合、病院への移動時間や診察時間は労働時間となるのでしょうか。

労働時間とは、一般的には使用者の指揮監督の下にあることを意味しており、
必ずしも実際に働いているかどうかは問われません。

例えば、トラックの運転手が荷物の到着を待ってトラック内で待機している場合や、
トラック内で運転手が二人いて、助手席に座っている人が休息していたり、
仮眠をとっている場合等は「手待ち時間」と言い、労働時間の一種とされています。

手待ち時間と休憩時間。似たような概念ですが、その違いは下記の通りです。

手待ち時間:使用者の指揮監督の下にある(従業員に時間の自由利用が保障されていない)
休憩時間:使用者の指揮監督の下にない(従業員に時間の自由利用が保障されている)

「休憩時間とは単に作業に従事していない手待ち時間を含まず、
 労働者が権利として労働から離れることを保証されている時間の意であって、
 その他の拘束時間は労働時間として取り扱う」
という通達も出ています。(昭和22年9月13日 発基第17号)

冒頭の質問について検討しますと、業務中に起きたケガ(労災)という点がポイントです。
これがプライベートのケガであれば、私用外出の一環ですから、
当然労働時間に含める必要はありません。

業務中のケガの場合は、どのように考えるかと申しますと、
実は、プライベートのケガと同じです。

業務上の災害(労災)に対し、どのような補償をするかという問題と、
業務上の災害のための通院時間を労働時間に含めるかどうかは別問題です。

業務上の災害のための通院時間は、使用者の指揮監督の下にあるとは言えませんし、
従業員に時間の自由利用が保障されているのでしょうから、
これは手待ち時間ではなく、休憩時間です。

したがって、労働時間に含める必要はありません。

なお、労働基準法は最低限の基準を定めた法律です。
業務上の災害のための通院時間を労働したものとみなして賃金を支払うというのは、
法を上回る措置となりますので、問題ありません。

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労働時間の適正な把握のために会社がすべきこと

先日、厚生労働省より、
『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準』
というパンフレットが公表されました。

そのパンフレットに、始業・終業時刻の確認(記録)の方法についての記載がありました。
該当部分を読みやすいように若干改変した上で、
皆様にご案内申し上げます。

1 始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、
原則として次のいずれかの方法によることとされています。

(ア)使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
(イ)タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

(ア)について

「自ら現認する」とは、使用者自ら、あるいは労働時間管理を行う者が、
直接始業時刻や終業時刻を確認することです。
なお、確認した始業時刻や終業時刻については、
該当労働者からも確認することが望ましいものです。

(イ)について
タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基本情報とし、
必要に応じて、例えば使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、
使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録とを
突き合わせることにより確認し、記録して下さい。
なお、タイムカード、ICカード等には、
IDカード、パソコン入力等が含まれます。

2 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

その2の方法によることなく、自己申告制により行わざるを得ない場合、
以下の措置を講ずることとされています。

(ア)自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、
    労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて
    十分な説明を行うこと。

(イ)自己申告により把握した労働時間が
    実際の労働時間と合致しているか否かについて、
    必要に応じて実態調査を実施すること。

(ウ)労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で
    時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。
    また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の
    定額払等労働時間に係る事業場の措置が、
    労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因と
    なっていないかについて確認するとともに、
    当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

自己申告による労働時間の把握については、
あいまいな労働時間管理となりがちであるため、
やむを得ず、自己申告制により始業時刻や終業時刻を
把握する場合に講ずべき措置を明らかにしたものです。

(ア)について
労働者に対して説明すべき事項としては、基準で示したもののほか、
自己申告制の具体的内容、適正な自己申告を行ったことにより
不利益な取扱いが行われることがないこと、などがあります。

(イ)について
使用者は自己申告制により労働時間が
適正に把握されているか否かについて定期的に実態調査を行い、
確認することが望ましいものです。
特に、自己申告制が適用されている労働者や労働組合等から、
労働時間の把握が適正に行われていない旨の指摘がなされた場合などには、
このような実態調査を行って下さい。

(ウ)について
労働時間の適正な申告を阻害する措置としては、
基準で示したもののほか、
職場単位ごとの割増賃金に係る予算枠や
時間外労働の目安時間が設定されている場合において、
その時間を超える時間外労働を行った際に賞与を減額するなど
不利益な取扱いをしているものがあります。

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