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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

懲戒解雇。解雇予告手当を支払いたくない場合、どうする?

懲戒解雇の際、通常は即時解雇となりますが、
通常、会社としては懲戒解雇となる人にまで、
解雇予告手当は支払いたくないと考えます。

このような場合は、所轄の労働基準監督署に
「解雇予告除外認定申請書」を出してください。
書式はこちらです。
解雇予告除外認定申請書.doc

本来、会社は、労働者を解雇しようとする場合には
少なくとも30日前にその予告をするか、
30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を
支払わなければなりません。

ただし、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する等の場合には
この手続は除外されます。
ただし、その事由については、
所轄労働基準監督署長の認定を受けることになっています。

なお、この書類を提出する際、
原則的な提出書類は下記の通りです。

すべて2部作成して、監督署に提出してください。
解雇予告手当除外認定申請書も原本が2部必要です。
1部原本、もう1部はコピーでは不可とされますので、ご注意ください。

なお、こうしたルールや添付書類については、
労働基準監督署により異なるケースがあります。
実際に申請する際は、事前に所轄の労働基準監督署にご確認ください。

【提出書類の一覧】

1 解雇予告手当除外認定申請書
2 事実の経緯が分かるもの(書式自由)
3 本人の労働者名簿
4 本人の現在の連絡先が分かるもの
  (労基署が本人にも確認作業を行うために必要となります。)
5 懲戒部分の就業規則のコピー
6 懲罰委員会を開いた場合は、その議事録
7 本人の始末書があれば、そのコピー

当日は、事情を口頭で確認しつつ、
書類の不備の有無を確認し、
受理印を押してもらうだけです。
受理印は書類を預かったという印であり、
申請が認められたかどうか、という判断とは関係ございません。

労基署は、本人からも事情を聴取します。
その上で、直接御社に労基署から電話で連絡があります。
(今までの経験上、3~4日かかるケースが大半です。)

申請が認められない場合は、
下記の2択となります。

1 認定しないという処理を確定させる。
2 申請自体を取り下げる。

今後、裁判等で争われる可能性を考えると、
取下げの方がよろしいかと存じます。

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 7

解雇に関するルール、第7回(最終回)です。

これまで取り扱った内容については、
下記のリンク先でご覧ください。

1 解雇が禁止されているケース
2 解雇の効力

3 解雇の手続
4 解雇事由

5 整理解雇
6 退職勧奨

7 勤務成績を理由とする解雇

第5回
8 有期労働契約の雇止め

9 採用内定取消
10 入社時期の繰り下げ

今回は退職時の証明ついて、
厚生労働省発行のパンフレットを
若干ですが読みやすいように改変・追記して、
皆様にご紹介致します。

11 退職時の証明


労働者から請求があった場合には、
解雇の理由等について、証明書を交付する必要があります。

【法令】

労働者が退職する場合に、
以下の事項について証明書を請求したときには、
遅滞なく証明書を交付しなければなりません。

また、労働者に解雇の予告をした場合に、
労働者が解雇の理由について証明書を請求したときには、
遅滞なく証明書を交付しなければなりません。

この証明書には、労働者の請求しない事項を
記入してはなりません。
(労働基準法第22条)

1 使用期間
2 業務の種類
3 その事業における地位
4 賃金
5 退職の事由
  (解雇の場合は、その理由を含みます。)

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 6

解雇に関するルール、第6回です。

これまで取り扱った内容については、
下記のリンク先でご覧ください。

1 解雇が禁止されているケース
2 解雇の効力

3 解雇の手続
4 解雇事由

5 整理解雇
6 退職勧奨

7 勤務成績を理由とする解雇

第5回
8 有期労働契約の雇止め

今回は内定取消や、入社させてもいきなり
休職させる入社時期の繰り下げについて、
厚生労働省発行のパンフレットを
若干ですが読みやすいように改変・追記して、
皆様にご紹介致します。

9 採用内定取消し

採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、
採用内定取消しは解雇に当たり、
労働契約法第16条の解雇権の濫用についての
規定が適用されます。

したがって、採用内定取消しについても、
客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
権利を濫用したものとして無効となります。

なお、採用内定通知等に採用内定取消事由が記載され、
解約権が留保されている場合があります。
(解約権が留保:一定の条件を満たした場合は、
 労働契約を解約するということ。)

裁判例によれば、採用内定の取消事由は、
解約権留保の趣旨、目的に照らして
客観的に合理的と認められ
社会通念上相当として是認することが
できるものに限られるとされています。

採用内定取消事由が
客観的に合理的と認められ
社会通念上相当として是認できないものであれば、
その事由をもって、採用内定の取消を
することはできないということです。

【法令】

上記のほか、採用内定により
労働契約が成立したと認められる場合には、
採用内定取消しには、労働基準法第20条(解雇の予告)、
第22条(退職時等の証明)等の
規定が適用されます。

このため、やむを得ない事情により
採用内定取消しを行おうとする場合には、
次の点を遵守するようにしてください。

1 使用者は解雇予告等解雇手続を
  適正に行うこと
2 採用内定者が採用内定取消しの理由について
  証明書を請求した場合には、
  遅滞なくこれを交付すること

【裁判例】
(読みやすくするため、多少、文章を改変)

採用内定の実態は多様であるため、
その法的性質を一義的に論断することはできませんが、
採用内定通知のほかには労働契約締結のための
特段の意思表示が予定されていない場合、
企業からの採用内定通知は労働者からの
労働契約の申込みに対する承諾であり、
誓約書の提出と相まって、
就労の始期を定めた解約権を
留保した労働契約が成立したと解釈します。

採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、
また知ることが期待できないような事実であって、
これを理由として採用内定を取消すことは、
解約権留保の趣旨、目的に照らして
客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として
是認することができるものに限られます。
(最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決)

10 入社時期の繰下げ

採用内定の際に定められていた
入社日は変更しないものの、
事業主の都合により休業させ、
実際の就業をさせない措置(自宅待機)を行う場合には、
その期間について、労働基準法第 26条に定める
休業手当を支払う必要があります。

事業主の都合により、採用内定の際に定められていた
入社日を延期する措置(入社日の延期)を行う場合には、
原則として採用内定者の合意を得る必要があります。

参考 新規学校卒業者の採用内定取消しの防止

新規学校卒業者に対する事業主の一方的な都合による
採用内定取消し及び入職時期繰下げは、
その円滑な就職を妨げるものであり、
特に、採用内定取消しについては、
対象となった学生及び生徒本人
並びに家族に計り知れないほどの
打撃と失望を与えるとともに、
社会全体に対しても大きな不安を与えるものであり、
決してあってはならない重大な問題です。

このため、採用内定取消し、入社時期繰下げの防止等について
考慮すべき事項について
「新規学校卒業者の採用に関する指針」を定めています。

また、やむを得ない事情により採用内定取消し
又は入職時期繰下げを行おうとするときは、
あらかじめハローワーク等に通知を行うことが必要です。

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 5

解雇に関するルール、第5回です。

これまで取り扱った内容については、
下記のリンク先でご覧ください。

1 解雇が禁止されているケース
2 解雇の効力

3 解雇の手続
4 解雇事由

5 整理解雇
6 退職勧奨

7 勤務成績を理由とする解雇

今回は厳密にいうと解雇ではありませんが、
雇用期間を定めて契約する、有期労働契約の
雇止め(期間満了に伴う雇用契約の終了のこと)について、
厚生労働省発行のパンフレットを
若干ですが読みやすいように改変・追記して、
皆様にご紹介致します。

8 有期労働契約の雇止め

有期労働契約(期間の定めのある労働契約)については、
契約の締結時や期間の満了時における
紛争を未然に防止するため、
労働基準法の規定により、
締結時に書面の交付により「更新の基準」を
示すこととされているほか、
使用者が講ずるべき措置について、
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が
定められています。

【法令】

有期労働契約の締結時には、
契約期間とともに「期間の定めがある労働契約を
更新する場合の基準」についても、
書面の交付によって明示しなければならない事項となります。
(労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条)

具体的に明示すべき内容としては、
下記の通りです。

1 「更新の有無」の具体的内容の例

  ★自動的に更新する
  ★更新する場合があり得る
  ★契約の更新はしない 等

2 「判断の基準」としての具体的内容の例

  ★契約期間満了時の業務量により判断する
  ★労働者の勤務成績、態度により判断する
  ★労働者の業務を遂行する能力により判断する
  ★会社の経営状況により判断する
  ★従事している業務の進捗状況により判断する 等

「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の
主な内容は、次のとおりです。

1 有期労働契約が3回以上更新されているか、
  1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、
  有期労働契約を更新しない場合には、
  少なくとも30日前までに予告をしなければなりません。
2 雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について
  証明書を請求したときには、
  遅滞なく証明書を交付しなければなりません。
3 有期労働契約が1回以上更新され、かつ、
  1年を超えて継続勤務している有期契約労働者について、
  有期労働契約を更新しようとする場合には、
  契約の実態及び労働者の希望に応じて、
  契約期間をできる限り長くするよう努めなければなりません。

参考 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準

「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」は
労働基準法に基づく厚生労働大臣の告示であり、
雇止めの手続等について定めています。
罰則はありませんが、労働基準監督署において
遵守のための指導が行われます。

労働契約法による規制

有期労働契約であっても、
期間の定めのない契約と実質的に異ならない
状態に至っている契約である場合や、
反復更新の実態、契約締結時の経緯等から
雇用継続への合理的期待が認められる場合は、
労働契約法の規定により、
雇止めが認められないことがあります。

【法令】

まず、下記の2点のいずれかを
満たしているかをご確認ください。

1 有期労働契約が反復更新されたことにより、
  雇止めをすることが解雇と社会通念上
  同視できると認められる場合
  (契約の更新手続きをいい加減にしていると、
   この要件に当てはまりやすくなります。)
2 労働者が有期労働契約の契約期間の満了時に
  その有期労働契約が更新されるものと
  期待することについて
  合理的な理由が認められる場合
  (「普通にやっていれば更新するから」等と
   安易な発言をしないようご注意ください。)

上記の要件のいずれかに当てはまる場合で、
なおかつ、次の要件にも当てはまる場合、
雇止めは認められません。

1 使用者が雇止めをすることが、
  客観的に合理的な理由を欠き、
  社会通念上相当であると認められない。
  ⇒「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」
   という文言は、労働契約法の
   解雇の判定基準に出てくる文言と同一です。

2 労働者からの有期労働契約の
  更新の申込みがされている。
  (契約期間満了後でも遅滞なく申込みをすればOK)

雇止めが認められない場合、
使用者は、従前の有期労働契約と
同一の労働条件で労働者による有期労働契約の更新
または締結の申込みを承諾したものとみなされ、
有期労働契約が同一の労働条件
(契約期間を含む)で成立します。
(労働契約法第19条)

労働者からの更新の申込みは、
使用者による雇止めの意思表示に対して
「嫌だ、困る」と言うなど、
労働者による何らかの反対の意思表示が
使用者に伝わるものでもかまわないと解されます。

この規定は、雇止めについて、労働者保護の観点から、
一定の場合に解雇に関する法理を類推適用して
雇止めの可否を判断するとの確立した
判例上のルール(雇止め法理)が条文化されたものです。

最後に、雇用期間中に会社側の都合で
雇用契約を終了させると「解雇」になります。

有期雇用契約の解雇のハードルは、
一般に期間の定めのない契約をしている正社員の
解雇のハードルよりも高いとされています。

これは、正社員と異なり、
契約期間の終了日が決まっているにもかかわらず、
それよりも短い期間で雇用契約を終了させるからには、
それ相当のやむを得ない理由がないとダメだ、
という考えが背景にあるためです。

「アルバイトだから」「パートだから」と
安易に解雇をしていると、
アルバイトやパートとトラブルになった際、
法的には劣勢に立たされかねません。
ご注意ください。

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 4

解雇に関するルール、第4回です。

これまで取り扱った内容については、
下記のリンク先でご覧ください。

1 解雇が禁止されているケース
2 解雇の効力

3 解雇の手続
4 解雇事由

5 整理解雇
6 退職勧奨

今回は能力不足による解雇について、
厚生労働省発行のパンフレットを
若干ですが読みやすいように改変・追記して、
皆様にご紹介致します。

7 勤務成績を理由とする解雇


能力不足を理由に解雇を検討することは、
会社側の立場としてはよくあることです。

特に、経営状況が厳しい場合、
パフォーマンスが低い人には辞めてもらい、
その分人件費を浮かしつつ、
パフォーマンスが高い人の集団として、
組織をスリムアップしたいと考える
経営者の方は多いのではないでしょうか?

ところが、こうしたことがトラブルとなり、
従業員とのトラブルに発展すると、
裁判で能力不足を認めさせることは
結構、骨が折れます。

実際、就業規則の普通解雇の事由を掲げる条文に
「労働能力が劣り、向上の見込みがない」ことを
掲げていたとしても、
相対評価による考課順位が下位であることをもって
直ちに著しく労働能力が劣るとはいえないとし、
さらに、労働者の労働能力の向上を図る
余地があったにもかかわらず
体系的な教育・指導が行われなかったとして、
解雇を権利の濫用と認めた裁判例があります。

【裁判例】

従業員として、平均的な水準に
達していなかったからといって、
直ちに本件解雇が有効となるわけではない。

就業規則に定める「労働能力が劣り、向上の見込みがない」に
該当するといえるためには、
平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、
著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないときで
なければならないというべきである。

...右人事考課は、相対評価であって、
絶対評価ではないことからすると、
そのことから直ちに労働能率が著しく劣り、
向上の見込みがないとまでいうことができない。

...さらに体系的な教育、指導を実施することによって、
その労働能率の向上を図る余地があるもあるというべきであり、
...いまだ「労働能力が劣り、向上の見込みがない」ときに
該当するとはいえない。
(東京地裁 平成11年10月15日決定)

こうした観点も踏まえ、
会社側としては、下記のような対策が考えられます。

1 相対評価ではなく、絶対評価に切り替える。
2 能力不足の社員については、
  解雇の前に下記の対策を講じる。

   1 教育・研修を行う。
   2 配置転換をする。

3 会社側からの指導の状況や、本人の成長度合い等を
  客観的に確認できる資料として残す。

こうした対策を講じれば大丈夫、とまでは言えませんが、
必要な対策ではあるかと存じます。

また、現実的には、解雇を検討する前に、
退職勧奨を行い、円満退職に向けた努力をすべきでしょう。

さらに言えば、日本の社会においては、
採用するのは簡単ですが、
解雇するには高いハードルが待ち構えています。

安易に採用せず、人材を見極める不断の努力と、
特に能力や協調性等については、
試用期間中にしっかりと見極めることが重要です。

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 3

解雇に関するルール、第3回です。

これまで取り扱った内容については、
下記のリンク先でご覧ください。

1 解雇が禁止されているケース
2 解雇の効力

3 解雇の手続
4 解雇事由

今回は整理解雇と退職勧奨について、
厚生労働省発行のパンフレットを
若干ですが読みやすいように改変・追記して、
皆様にご紹介致します。

5 整理解雇

事業を継続することが困難な場合に行う
人員整理としての使用者からの労働契約(雇用契約)の解除を
整理解雇と言います。

いわゆる「リストラ」です。

普通解雇の一種ではありますが、
一般的には、従業員側に落ち度がないにもかかわらず、
会社の都合により労働契約を解除する行為であることから、
解雇の妥当性については、厳しく判定されます。

整理解雇についても、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当と認められない場合には、
権利の濫用として、労働契約法の規定により、無効となります。

また、次のことについて
慎重に検討を行っていただくことが望まれます。

・ 人員削減を行う必要性
・ できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと
・ 解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること
・労働組合との協議や労働者への説明を行う等、
  妥当な手続きを行うこと

 ※ 解雇回避のための方法としては、
   例えば、配置転換、出向、希望退職募集等を
   検討することが考えられます。
 ※ 人員削減を避けるために、
   労働時間の短縮(ワークシェアリング)を行うことも
   一つの方策です。

整理解雇を検討する場合は、
その前段階として、早期退職制度を設け、
自主的な退職を促したり、
退職勧奨を行って、合意の下に
退職してもらうなどをするケースが多いです。

【裁判例】


余剰人員となったというだけで解雇が可能なわけではなく、
これが解雇権の行使として、
社会通念に沿う合理的なものであるかどうかの判断を要し、
その判断のためには、人員整理の必要性、人選の合理性、
解雇回避努力の履践、説明義務の履践などは
考慮要素として重要なものというべきである。
(大阪地裁 平成12年12月1日判決)

6 退職勧奨

使用者が労働者に対して
強制ではない退職の働きかけを行うことを
退職勧奨と言います。

使用者が「退職してはどうか?」と提案する行為であり、
俗に言う「肩たたき」です。

あくまでも会社側からの提案であり、
その提案には強制力がないことから、
退職勧奨自体には法的な規制はありません。

ただし、裁判例によれば、
被勧奨者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、
退職を強要することにつながり、
違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。

【裁判例】

ことさらに多数回、長期にわたる退職勧奨は、
いたずらに被勧奨者の不安感を増し、
不当に退職を強要する結果となる可能性が高く、
退職勧奨は、被勧奨者の家庭の状況、
名誉感情等に十分配慮すべきであり、
勧奨者の数、優遇措置の有無等を総合的に勘案し、
全体として被勧奨者の自由な意思決定が
妨げられる状況であった場合には、
当該退職勧奨行為は違法な権利侵害となる。
(最高裁第一小法廷 昭和55年7月10日判決)

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 2

解雇に関するルール、第2回です。

第1回では下記の2点を取り上げました。


今回は解雇の手続きに関する基本事項と
解雇事由について、
厚生労働省発行のパンフレットを
若干ですが読みやすいように改変して、
皆様にご紹介致します。

3 解雇の手続

やむを得ず解雇を行う場合、
労働基準法にしたがって、
30 日前に予告を行うことや、
予告を行わない場合には
解雇予告手当を支払うことが必要です。

【法令】

解雇を行う場合には、解雇しようとする労働者に対して、

イ  少なくとも30日前に解雇の予告
   (予告の日数が30日に満たない場合には、
    その不足日数分の平均賃金を支払う必要があります。)
ロ 予告を行わない場合には、
   平均賃金の30日分以上の解雇予告手当の支払いを
   しなければなりません。(労働基準法第20条)

参考:ハロ-ワークへの届出や通知

やむを得ず一定期間内に相当数の離職者が発生する場合
高年齢者・障害者・外国人を解雇する場合は、
ハローワークに届出や通知を行うことが必要です。
詳細は、こちらのパンフレットをご覧ください。

4 解雇事由

就業規則には「解雇の事由」を定めておくことが必要です。

【法令】

退職に関することは、労働条件の重要な事項です。
このため、定年制や解雇等の退職に関する事項については、
就業規則に定めておかなければなりません。
また、就業規則は、常時各作業場の見やすい場所に
掲示又は備え付けること、書面を交付すること等により、
労働者に周知しなければなりません。
(労働基準法第89条、第106条)

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 1

経営が苦しくなると、最終的には
従業員の解雇を検討せざるを得なくなります。

ただ、解雇された従業員は、
次の日から生活の糧を得る手段を奪われますので、
生活が困窮する恐れがあります。

従業員も生活がかかっていますので、
解雇をする場合は、
従業員との間に重大なトラブルを抱える
可能性を秘めています。

そこで、企業としては、
トラブルを最小限にするためにも、
法的な観点で逸脱した行動をとらないように、
十分に気をつける必要があります。

特に、下記の法律等には十分配慮してください。

1 労働基準法
2 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準
3 労働契約法 その他各種労働法
4 解雇・雇止め等に関する裁判例

さて、今回は解雇が禁止されている場合と
解雇の効力について、
厚生労働省発行のパンフレットを
若干ですが読みやすいように改変して、
皆様にご紹介致します。

1 解雇が禁止されているケース

一定の場合には、解雇が法律で禁止されています。

【法令】

法律で解雇が禁止されている主な場合として、
次のものがあります。

① 業務上の傷病による休業期間及びその後 30 日間の解雇
  (労働基準法第 19 条)
② 産前産後の休業期間及びその後 30 日間の解雇
  (労働基準法第 19条)
③ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
  (労働基準法第3条)
④ 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇
  (労働基準法第 104 条)
⑤ 労働組合の組合員であること等を理由とする解雇
  (労働組合法第7条)
⑥ 女性(男性)であること、女性の婚姻、妊娠、出産、
  産前産後休業等を理由とする解雇
  (男女雇用機会均等法第6条、第9条)
⑦ 育児・介護休業等の申出等をしたこと、
  育児・介護休業等を取得したことを理由とする解雇
  (育児・介護休業法第10 条、第 16条、第16 条の4、
   第 16条の7、第16 条の9、第 18条の2、
   第 20条の2、第23 条の2)
⑧ 通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者について、
  パートタイム労働者であることを理由とする解雇
  (パートタイム労働法第8条)
⑨ 公益通報をしたことを理由とする解雇
  (公益通報者保護法第3条)

2 解雇の効力

①  期間の定めのない労働契約の場合

権利の濫用に当たる解雇は、
労働契約法の規定により、無効となります

【法令】

客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当と認められない解雇は、
権利を濫用したものとして、無効となります。
(労働契約法第16条)

②  有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の場合

やむを得ない事由がある場合でなければ、
契約期間中に解雇することはできません。
期間の定めのない労働契約を結んでいる場合の解雇よりも、
解雇の有効性は厳しく判断されます。

【法令】

有期労働契約については、やむを得ない事由がある場合でなければ、
契約期間が満了するまでの間において、
解雇することはできません。
(労働契約法第17条第1項)

労働者派遣契約が中途解約された場合】

派遣元の使用者は、派遣先との間の労働者派遣契約が
中途解除された場合でも、
そのことが直ちに労働契約法第17条の
「やむを得ない事由」に該当するものでは
ないことに注意してください。

労働者派遣法第29条の2で、
派遣先の都合により派遣契約を解除する場合には、
派遣先は派遣労働者の新たな就業機会の確保、
休業手当等の支払に要する負担等の措置を
講じなければならない旨定められています。

また、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」で、
休業手当の支払等、労働者派遣契約の解除に伴い
生じた派遣元事業主の損害の賠償を
派遣先が行わなければならない旨が
定められていること等を踏まえ、
派遣元の使用者は、新たな就業機会の確保ができない場合でも、
休業等を行い、解雇は避けるようにしてください。

なお、企業側の都合で派遣労働者を休業させた場合には、
派遣元の使用者は、派遣労働者に対して
休業手当を支払うことが必要です。

なお、休業手当については、
コチラ(3 休業手当の支払)を御参照ください。

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい解雇等に関するルール 1の続きを読む ≫

解雇予告と同時に休業命令。これで人件費削減!?

時解雇したい従業員がいるとします。
即時解雇の場合は、解雇予告手当として、
平均賃金の30日分以上を支払う義務が生じます。

1日当たりの平均賃金が仮に1万円の人の場合、
解雇予告手当として30万円支払うことになります。

「なんでこんなヤツに30万円も支払わなきゃいけないの?」と
ウニャウニャ考え始めたA社長は
こんなことを思いつきました。

1 即時解雇をするのではなく、
  30日後に解雇しますという解雇予告をする。
2 でも、会社には来てほしくないので、
  解雇予告と同時に、休業命令を出す。
3 会社都合の場合は休業手当として、
  平均賃金の6割を支給することになっている。
  しかも、休日については支払わなくてよいので、
  実質22日程度の営業日数に対して支払えば済む。
  (平均賃金1万円×6割×22日=132,000円)

なんと、この作戦を実行すると、
30万円が13万2千円に支払額がグッと減ります。

限りなく労働基準法の脱法行為に近いような感じがしますが、
こんなことは法律上、許されているのでしょうか?

結論から申し上げると、労働基準法上、問題ありません。

実は、上記のような問いに対する通達がありまして、
そこには次のように書いてあります。

「本件については30日前に予告がなされている限り、
 その労働契約は予告期間の満了によって
 終了するものである。」
 (昭和24年12月27日 基収1224号)

ま、あまりお勧めしませんけどね(理由は後述)。

なお、休業ですと従業員としては
平均賃金の6割しかもらえませんので、
通常の賃金額をもらいたいがために、
「有給休暇を取りたい」と申請してくる可能性があります。

これに対しても、有給休暇を認めなくて結構です。

有給休暇は労働義務のある日に対して、
労働を免除するものです。

休業日は、労働義務がありません。
労働義務のない日に有給休暇を使うことはできないのです。

なお、この作戦を遂行する上で
一点気をつけていただきたいことがあります。

就業規則もしくは賃金規程等に
会社都合による休業を命じる場合は、
6割の休業手当を支払う旨が明記しておくことが要件です。

この規定がないと、
民法536条2項の危険負担が優先され、
6割でなく100%の賃金を支払うことになります。

・・・以上が法律上のお話。

ただ、このやり方はおススめできません。
やはり、即日解雇で解雇予告手当30日分を
支払うことをおススメします。

本来は即時解雇したいくらいの人なのですから、
経営者にしてみたら、従業員が相当腹立たしいことを
しでかしたのだと思います。

おそらく、この時点では、従業員との人間関係も
決裂している可能性が高いです。

そんな人に解雇予告手当を支払うというのも
「盗人に追い銭」のような気持ちになるというのも、
十分理解できます。

それでも、経営者たるもの、
「忍」の一字で耐え忍んだ方がいいです。

この世の中には因果の法則があります。
善因善果、悪因悪果と申しまして、
よい原因を作れば、その良さに見合った結果が生まれ、
悪い原因を作れば、その悪さに見合った結果が生まれます。

相手を苦しめるという行為をすれば、
それは、悪因悪果。
後日、確実に自分にはね返ってきます。

経営者の場合、自分=自社ですから、
「悪果」が自社に起こります。

自社が経営者一人の会社ならまだいいですが、
従業員を雇用している場合、
「悪果」の影響が従業員にまで及んでしまいます。

相手のためというよりも、
自分や他の従業員のために、
ぜひ、耐えていただきたいです。

また、現実的な問題として、
解雇というのは、ただでさえ、
従業員とトラブルになりやすいです。

トラブルになれば、労力もかかりますし、
時間もかかります。
最後は金銭解決になることも多く、
その時には数か月分の給与を
退職金や和解金の形で支払うケースが大半です。

そんなことになるのなら、
相手をあまり追い込まず、
会社と対決姿勢になってしまう事態を
極力避けた方が無難であると
私は思います。

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解雇制限期間中に解雇の予告をすることはできるか?

業務上ケガや病気をした社員が職場復帰したその初日に、
「あなたを30日後に解雇します。」と解雇の予告をすることはできるでしょうか?

結論から申し上げると、問題ありません。

労働基準法第19条において、次の定めがあります。

――――――――――――――――――――――――――
使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり
療養のために休業する期間及びその後三十日間
並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって
休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
(後略)
――――――――――――――――――――――――――

これが「解雇制限」と言われているものです。
この条文により、業務上のケガや病気の療養のために
休業中と、職場復帰後30日間は
原則として、解雇が禁止されています。

ここでのポイントは「解雇」は禁止されていますが、
「解雇の予告」までは禁止されていないということです。

また、業務中にクギを踏んでケガをして、
労災認定を受け休業療養中の労働者に対して、
就業規則違反を理由に懲戒解雇の意思表示を行った事件があります。
(昭和31年9月13日福岡地裁小倉支部判決 小倉炭鉱事件)

裁判官は次のように判示しています。

――――――――――――――――――――――――――
労働基準法第19条は同条の規定する条件の下にある
要保護労働者のために
特にその労働者の地位を一定の期間内
確保するのが目的であるから、
解雇制限期間内と言えども
解雇制限期間の満了を条件とし
あるいは解雇制限期間が確定している場合は
その確定した期間を期限として、
解雇の事由に応じそれぞれの要件を充たして
あらかじめ解雇する旨の意思表示をなす事は許される。
――――――――――――――――――――――――――

なお、例えば職場復帰日が8月1日の場合、
初日不算入の原則を踏襲した30日後となりますので、
最短の解雇可能日は8月31日となります。

最後に、解雇予告期間中に、またも業務上ケガや病気をした等、
解雇制限に該当する事由が発生した場合は、
その事由が消滅するまでの間、解雇予告の効力が停止します。
(昭和26年6月25日 基収第2609号)
併せてご注意ください。

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解雇予告期間の起算日と終了日をどう考えたらいいのか?

解雇に当たっては、労働基準法第20条において、
次のように定められています。

―――――――――――――――――――――――
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、
少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。
―――――――――――――――――――――――

この30日の予告期間の計算をする際に、
起算日と終了日についてはどのように考えればよいのでしょうか?

<起算日について>

民法第140条に次の定めがあります。

―――――――――――――――――――――――
日、週、月または年によって期間を定めたときは、
期間の初日は、算入しない。(後略)
――――――――――――――――――――――

この条文により、解雇予告をした初日は参入されません。

<期間満了日について>

民法第141条に次の定めがあります。

―――――――――――――――――――――――
前条の場合には、期間は、
その末日の終了をもって満了する。
――――――――――――――――――――――

この条文により、期間の末日の終了(24時)をもって
期間の満了となります。

<実 例>

例えば、6月30日に解雇するためには、
6月1日に解雇予告をするというのはどうなるのでしょうか。

初日不算入の原則により、
6月1日は起算日とならず、2日が起算日となります。
2日から30日までの期間の日数は29日。
労働基準法第20条により、
「少なくとも30日前に予告しなければならない」のですから、
これでは1日不足してしまいます。

6月30日に解雇するためには、
5月31日に解雇予告をしなければならないということです。

そして、6月30日の24時をもって
解雇対象となっている従業員との雇用契約が終了すると考えます。

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行方不明の社員をどうする? 退職 or 解雇?

従業員がある日突然出社しなくなり、行方が分からなくなりました。
この場合、会社としてどのような対応が考えられるでしょうか。

1 退職扱い

就業規則の退職事由に、
「行方不明となり、その期間が○日を経過したとき」
等と記載されている場合、
その期間を超えれば当然に退職となります。

この場合は、本人の退職の意思表示も、
会社からの通知も必要ありません。

後にご紹介する解雇の場合よりも
手続きが簡単で、おススメです。

なお、「○日」が短すぎるとトラブルの元になりかねません。
具体的に「○日以上とすること」等の通達はありませんが、
厚生労働省監修の書籍による事例ですと、
「2ヶ月」という例が表示されています。
また、懲戒解雇となる無断欠勤日数の基準を
14日とする通達もありますし(後述)、
解雇予告をする場合は「30日前」という基準もあります。

これらを参考にしていただき、
妥当な日数を設定ください。

2 懲戒解雇扱い

懲戒解雇の事由に
「無届欠勤が○日以上に及んだとき」等と記載されている場合、
この要件を満たす期間、行方不明であれば、
懲戒解雇の要件を満たすことになります。

従業員の責に基づく解雇の場合は、
解雇の予告をしなくても構いません。

また、日数の設定については次の通達が参考になります。

----------------------------------------------------------
原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、
出勤の督促に応じない場合は
労働者の責に帰すべき事由となる。
(昭和23年11月11日基発第1637号、
 昭和31年3月1日基発第111号)
----------------------------------------------------------

出勤督促をしようと思ってもできない行方不明の場合は、
2週間以上無断欠勤しているというだけで十分かと存じます。

なお、この場合は、労働基準監督署長から
解雇予告手当の除外認定を受けることで、
解雇予告手当の支払いをしなくて済むようになります。

なお、面倒なのはここからです。

解雇をする場合、
解雇の意思表示が本人に届かないと、
解雇の効力が生じません。

そこで、公示送達(民法第97条、民事訴訟法第110~113条)
という手段を用います。

公示送達は、従業員の住所地を管轄する
簡易裁判所に申し立てをし、
裁判所の掲示場に掲示することによって行います。

掲示場に掲示を始めた日から2週間経過すると、
公示送達の効力が発生し、
従業員に解雇の意思表示が届いたとみなします。

公示送達、面倒ですよね?
となると、退職という形を取れるよう、
就業規則を見直しておく方がよいかと存じます。

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いきなり本採用したが3日後に即日解雇。解雇予告手当の支払い義務はあるか?

「この人の働きぶりはよく分かっているから」と、
試用期間を設けることなく、
Aさんをいきなり本採用したB社。

入社後、Aさんの仕事ぶりを見てみると、意外や意外。
期待していたほどの仕事ぶりが全く発揮されていません。

B社としては「こりゃダメだ」と、
Aさんの入社3日後に即日解雇を言い渡しました。

するとAさんは「即日解雇は分かりましたので、
解雇予告手当を支払ってください。」と主張。

これに対しA社としては、次のように考えています。

「労働基準法第21条にある、『解雇予告の適用除外』で定められている
 『試みの使用期間』の期間内に該当し、
 入社後14日以内の解雇であれば、
 解雇予告手当の支払い義務はないはずだ」

さて、A社は解雇予告手当を支払う義務はあるのでしょうか?
なお、A社は就業規則等の規程類は作成しておりません。

結論から申し上げると、支払い義務が生じています。

試みの使用期間は、労働契約上の契約事項の一つです。
したがって、就業規則や雇用契約において
明確に定められている必要があります。

これらを定めずに直ちに本採用をした場合は、
労働基準法第21条の適用はなく、
採用後14日以内であっても解雇予告制度の適用があります。

試用期間を設けていない会社の社長さん、十分お気をつけください!

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既婚の女性を整理解雇することはできるか?

業績の悪化に伴い、余剰人員を解雇する「整理解雇」。

通常の解雇に加え、次の4つの要件(要素)についても
考慮しなければならないとされています。


4番の「整理対象者選定の合理性」について、
次の主張は認められるでしょうか?

「既婚の女性の場合、メインの稼ぎ手である男性(夫)がいるので、
 他の社員よりは家計全体で見た場合の影響度は少ない可能性が高い。
 そこで、今回は既婚の女性を整理解雇の対象者とする。」

結論から申し上げると、法的には厳しいと言わざるを得ません。

男女雇用機会均等法では次のような定めがあります。(第6条第1項第4号)

――――――――――――――――――――――――――――――――――
事業主は、次に掲げる事項について、
労働者の性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない
(中略)
 4 退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新
――――――――――――――――――――――――――――――――――

また、同じく第9条第2項では次のような定めもあります。

―――――――――――――――――――――――――――――――――― 
事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない
――――――――――――――――――――――――――――――――――

したがって、「既婚の女性」を選定基準にすると、
これらの条文に抵触することになってしまいます。

今の世の中「女性だから・・・」ということを理由にした取り扱いは
時代遅れとなっているようです。

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会社の金を横領した社員を懲戒解雇することはできるか?

会社の金を横領。
そんなことってあるの?と知り合いで現金商売をしているレストラン経営者に聞いてみたところ、
「いっくらでもありますよ~。」

社長から信頼されて金庫の鍵を預けてもらっている幹部社員が、
その信頼を逆手に取り、こっそりネコババしていたとか、
具体的ケースを挙げ出したらキリがないほどだそうです。

皆で汗水たらして得たお金をコッソリ横領するなんて、とんでもないことです。
気持ち的には「許せん!懲戒解雇で即日解雇だー!!」となりますが、
法的には大丈夫でしょうか?

厳密な結論を言えば
「個々のケースにより異なりますので、何とも言えません」となります。

解雇の判断って微妙なんです。ただ、これでは答えになりませんね。

そこで、最終的には何とも言えなくとも、
考え方の筋道をお伝えしようと思います。

1 即日解雇はできるのか?

解雇処分が有効であるということが前提ですが
即日解雇、できます。

ただ、即日解雇をする際は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
これを「解雇予告手当」と言います。

えっ?会社の金を横領したようなヤツになぜ、そんなお金を支払わなくてはいけないのか?

そりゃそうですよね。ごもっともです。

労働基準法第20条にも「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」は
解雇予告手当を支払わなくてよい、とされています。

そうなると、「労働者の責に帰すべき事由」かどうかを誰かが判断することになります。
これを判断するのが労働基準監督署です。会社ではありません。

したがって、労働基準監督署に「解雇予告除外認定申請書」という申請書を届け出て、
判断を仰ぐことになります。

労働基準監督署で判断する際には、次の通達を参考に決めていると思われます。
(昭和23年11月11日 基発第1637号、昭和31年3月1日基発第111号)

盗取、横領、傷害等があった場合の
「労働者の責に帰すべき事由」として認定すべき事例

1 原則として極めて軽微なものを除き、
  事業場内における盗取、横領、傷害等、刑法犯に該当する行為のあった場合

2 一般的にみて「極めて軽微」な事案であっても、
  使用者があらかじめ不祥事件の防止について
  諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、
  しかもなお労働者が継続的にまたは断続的に
  盗取、横領、傷害等の刑法犯、またはこれに類する行為を行った場合

3 事業場外で行われた盗取、横領、傷害等の刑法犯に該当する行為であっても、
  それが著しく当該事業場の名誉もしくは信用を失墜するもの、
  取引関係に悪影響を与えるもの
  または労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合

ということで、極めて軽微でもなく、事業場内で行われたのであれば、
通常は、労基署も認めてくれるのではないかと考えます。

2 懲戒解雇処分は有効か?

懲戒解雇とは、普通解雇と異なり、けん責、減給、降職、出勤停止等とともに
企業秩序の違反に対し、使用者によって課せられる一種の制裁罰です。
(昭和38年6月21日 十和田観光電鉄事件 最高裁第二小法廷判決より)

懲戒解雇の具体的な方法や手続きについては、
特段法律で定められていませんが、
懲戒解雇を含む懲戒処分を社内の仕組みとして導入する場合は、
その種類や程度に関する事項を就業規則に定めなくてはいけません。
(労働基準法第89条第9号)

また、労働契約法で、懲戒処分を行う場合や解雇を行う場合は、
「客観的に合理的な理由を欠き、、社会通念上相当である」と
認められることが要件となっています。

――――――――――――――――――――――――――――――
(懲戒)
第十五条  使用者が労働者を懲戒することができる場合において、
当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の
性質及び態様その他の事情に照らして、
客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)
第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする。
――――――――――――――――――――――――――――――

横領した額、頻度、社内の防止体制、事業場内で起きた事件か否か等によって
結論も変わりえますが、
懲戒解雇、有効になる確率は高いと思います。

ただ、懲戒解雇を有効にしやすくするためにも、
次の点は押さえておいてください。

1 懲戒処分の種別や程度、事由等について就業規則に明記すること
2 日頃から不祥事件の防止策を講じておくこと
3 「こうした防止策を講じています」という証拠を残しておくこと

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