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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

賃金からの控除額に限度額はあるか?

賃金は全額を支払わなければなりませんが、
法令に別段の定めがある場合や
労使協定書がある場合は
賃金の一部を控除して支払うことができます。
(労働基準法第24条)

法令に別段の定めがある場合とは、
所得税や住民税、社会保険料を指しています。

さて、要件を充たしていさえすれば、
賃金の控除額に限度はあるのでしょうか?

結論から申し上げますと、
控除される金額が賃金の一部である限り、
控除額についてはの限度はありません。

なお、私法上は、民法第510条及び
民事執行法第152条の規定により
一賃金支払い期の賃金、または
退職金の額の4分の3に相当する部分
(退職手当を除く賃金にあっては
 その額が民事執行法施行令で
 定める額を超える時は、その額)については
使用者側から相殺することは
できないとされています。
ご注意ください。
(昭和29年12月23日 基収6185号、
 昭和63年3月14日 基発150号より)

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平均賃金の算定期間が2週間未満の場合の注意点

入社したばかりの人に休業を命じたケースが生じた場合、
どのように平均賃金を算出したらよいのでしょうか?

かなり特殊な計算方法になりますが、こんな通達があります。

----------------------------------------------------------
平均賃金の算定期間が2週間未満の労働者であって、

①満稼動の者は、当該労働者に対して支払われた賃金の総額を
 その期間の総暦日数で除した金額に7分の6を乗じた金額

②通常の労働者と著しく異なる労働に対する賃金額となる労働者は、
 通常の労働に対する賃金額に修正した金額が平均賃金となる
(昭和45.05.14基発(旧労働省労働基準局長名通達)第375号)
----------------------------------------------------------

「7分の6」...。滅多にお目にかからない数字ですよね。

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18時3分までの労働。3分は切り捨ててよいか?

終業時刻が18時である場合、
ほんのちょっと残業して18時3分に業務終了、
というケース、よくありますよね。

よくあるパターンは

「うちの会社の労働時間管理は15分刻み」

等としているケース。
上記の事例ですと、18時14分までの労働は
18時までの労働とみなし、
18時15分〜18時29分までの労働は
18時15分までの労働とみなして、
残業代等を計算するというものです。

法的にはこのやり方はOUTです。
賃金には全額払いの法則というものがありまして、
働いた時間は「1分単位」で
支払うことが義務づけられています。

したがって、18時3分まで働いた場合、
3分についても労働時間としてカウントし、
法定労働時間を超えているのであれば、
割増賃金も支払う必要があります。

逆に、従業員有利にする分には構いません。
同じ15分単位の労働時間管理でも、切上げ処理をして、
18時3分の仕事に対して18時15分の労働とみなし、
15分の労働に対する賃金(場合によっては割増賃金)を
支払うのはOKです。

その他、認められている処理としては、
1ヶ月の労働時間を通算した合計時間について、
30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げに
することは認められています。

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経営が苦しくなった時に思い出していただきたい賃金の支払いに関するルール

経営が厳しい状況におかれると、
従業員への賃金の支払いが重くのしかかってきます。

一方で、従業員には、自分の生活がありますので、
会社から賃金が支払われないなどのことがあると、
生活に窮してしまいます。

経営者からしてみると、
苦渋の選択を迫られることになります。

厚生労働省発行のリーフレットを土台に、
若干分かりやすい言葉に改めながら、
こうした場合に思い出していただきたい
労働法による規定をまとめてみました。


1 賃金の確実な支払い

賃金は、労働者にとって重要な生活の糧であり、
法は確実な支払いを求めています。

【法令】
賃金は、①通貨で、②直接労働者に、
③全額を、④毎月1回以上、⑤一定の期日を定めて
支払わなければなりません。(労働基準法第24条)

2 退職金・社内預金の確実な支払等のための保全措置

退職金は労働者の退職後の生活に重要な意味を持ちます。
また、社内預金は労働者の貴重な貯蓄です。
こうしたことから、企業が倒産した場合であっても、
労働者にその支払いや返還が確実になされなければなりません。

【法令】
退職金制度を設けている場合にも、
確実な支払のための保全措置を講ずるように努めなければならず、
また、社内預金制度を行う場合には、
確実な返還のための保全措置を講じなければなりません。
(賃金の支払の確保等に関する法律第3条、第5条)

3 休業手当の支払

企業側(使用者)の都合で休業させた場合には、
労働者に休業手当を支払い、
一定の収入を保障する必要があります。

【法令】
一時帰休など企業側の都合
(使用者の責に帰すべき事由)により
所定労働日に労働者を休業させた場合には、
休業させた日について
少なくとも平均賃金の100分の60以上の
休業手当を支払わなければなりません。
(労働基準法第26条)

ご参考:未払賃金の立替払制度の概要

未払賃金の立替払制度は、企業倒産に伴い、
賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、
未払となっている賃金の一部を、
国(独立行政法人労働者健康福祉機構)が
事業主に代わり、立て替えて支払う制度です。
立替払の対象となる未払賃金は、
退職日の6か月前以降の未払賃金で、
①定期賃金(休業手当を含む。)、
②退職金が対象となります。

※ 立替払を行った場合、
  国(独立行政法人労働者健康福祉機構)は、
  立替払金に相当する金額を、
  事業主等へ求償することとしています。

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賃金の端数処理 その2<割増賃金計算の端数処理>

割増賃金の計算において、
次の端数処理は、常に従業員側の不利になるものではなく、
賃金計算作業の簡便化を目的としてものとして認められています。

1 残業時間等の合計時間に関する端数処理

1ヶ月における時間外労働、休日労働、及び深夜業の
各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、
30分未満の端数を切り捨て、
30分以上を1時間に切り上げる
端数処理は認められています。

2 1時間当たりの賃金額・割増賃金額に関する端数処理

1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に
円未満の端数が生じた場合、
50銭未満の端数を切り捨て、
50以上の端数を1円に切り上げる
端数処理は認められています。

3 割増賃金総額に関する端数処理

1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜業の
各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、
50銭未満の端数を切り捨て、
50以上の端数を1円に切り上げる
端数処理は認められています。

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賃金の端数処理 その1<遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理>

賃金の計算において生じる端数処理で
遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理が問題になることがあります。

例えば、10分の遅刻に対して、
「15分遅刻したものとみなす」というようなことをしていませんか?

この例の場合、10分の遅刻に対して、
10分に相当する賃金カットをするには原則として構いませんが、
「15分-10分」である「5分」については、
労働の提供がされているにもかかわらず、
その分の賃金を支払わないということになります。

こうした労働の提供がされていない時間を超える時間のカットは
賃金の全額払いの原則に反するため、違法とされます。

なお、このような取り扱いを、
就業規則に定める減給の制裁として、
労働基準法第91条の制限内で行う場合には、
全額払いの原則には反しません。

労働基準法第91条の制限とは下記の通りです。

<一回の事案に対する減給額の制限>

 減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超えてはいけない
 ⇒例えば、制裁処分として
  「今月から給与10%カット」というのは違法です。

<減給の総額に対する制限>

 総額が一賃金支払期における賃金の総額の10%を超えてはならない
 ⇒減給の制裁処分に当たることを従業員が毎日したとしても、
   総額の制限があるため、一賃金支払期における賃金の総額の10%が
   その月に控除できる最高額となります。

仮に、10分の遅刻に対して、
15分の労働に相当する賃金を控除する場合で、
減給処分も合わせて行うと考える場合は、
10分の労働に相当する賃金控除は
ノーワーク・ノーペイの原則による賃金控除であり、
5分の労働に相当する賃金の控除部分が
減給の制裁処分としての賃金控除と考えます。

なお、こうした減給を含む制裁については、
就業規則に制裁に関する事項を定めてください。

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賃金の端数処理<全体像>

賃金を計算していると、
労働時間や賃金額について
端数処理の問題が生じることがあります。

端数処理については、3つの観点があります。


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電車が遅れた等のやむを得ない事情の場合、遅刻控除をしてはいけないか?

会社に余裕を持って着くように家を出たにもかかわらず、
電車が遅れてしまい、遅刻してしまった社員がいます。

こうした場合、遅延証明書を会社に提出する等すれば、
会社は遅刻して働かなかった時間分の
賃金の控除をしてはいけないのでしょうか?

労働基準法の側面で言えば、そのような定めはありません。

ノーワークノーペイの原則により、
遅刻した分は原則として賃金から控除して構いません。

始業時刻は9時と定めている会社の場合、
「とにかく9時から仕事を始めなさい」と
約束していることになります。
仮に9時に来なかったとなると、
会社と従業員間で締結された雇用契約内容に
違反することになります。

ただし、例外があります。

まず、労働基準法は労働条件の最低ラインを定めた法律です。
労働協約、就業規則や個別の雇用契約書で
法を上回る定めをする分には構いません。

「電車の遅延等やむを得ない事情の場合は、
 遅刻控除をしない。」

等という定めがあれば、
電車の遅延による遅刻の控除はしないことになります。

また、給与が完全月給制等により給与を支給している場合は、
遅刻や早退があっても、賃金から控除できません。

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定額で支給している通勤手当を出勤日数に応じて減額できるか?

通勤手当について、1ヶ月分の定期代相当額を
毎月支払っているケースって多いですよね。

でも、よく考えてみると、休日が多い月や、夏季休暇等、
満額を支払うのはもったいないと思われる
ケースもあるのではないでしょうか?

こうした際に、出勤日数に応じて
通勤手当の額を減額することは可能でしょうか?

結論を申し上げると、原則として、
労使が合意すれば問題ありません。

ただし、今までは満額を支払っていたにもかかわらず、
今後は減額する場合があるとなると、
従業員にとっては労働条件の不利益変更となります。

労使が合意すれば不利益変更であっても問題ないとはいえ、
合意できないこともあるでしょうし、
減額するための手続きにも十分に注意した方がよいでしょう。

そこで、減額するための手続きについて記しておきます。

通勤手当は、就業規則等にその支給が定められていれば、
賃金の一種となります。
何の根拠もなく、いきなり減額して支払うと、
労働基準法第24条「全額払いの原則」に違反してしまいます。

そこで、就業規則を変更して、
減額できる根拠を作ることになります。

ただ、使用者側の一方的な意思で
就業規則の不利益変更ができるかどうか。

この点について、最高裁は
第四銀行事件(平成9年2月28日、第二小法廷判決)で
「就業規則の作成・変更に合理性があれば構わない」としています。

具体的には、次のように判示しています。

――――――――――――――――――――――――
「新たな就業規則の作成または変更によって
 労働者の危篤の権利を奪い、
 労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、
 原則として許されないが、
 労働条件の集合的処理、
 特にその統一的かつ画一的な決定を
 建前とする就業規則の性質からいって、
 当該就業規則条項が合理的なものである限り、
 個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、
 その適用を拒むことはできない。
 (中略)特に賃金、退職金等
 労働者にとって重要な権利、
 労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす
 就業規則の作成または変更については、
 当該条項が、そのような不利益を労働者に
 法的に受認させることを許容することができるだけの
 高度の必要性に基づいた
 合理的な内容のものである場合において、
 その効力を生ずるものというべきである。」
――――――――――――――――――――――――

そして、合理性の有無の判断基準として、
次の点を総合考慮して判断すべきだと判示しています。

1 就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
2 使用者側の変更の必要性の内容・程度
3 変更後の就業規則の内容自体の相当性
4 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
5 労働組合等と交渉の経過
6 他の労働組合または他の従業員の対応
7 同種事項に関する我が国社会における一般的状況等

以上により、従業員の同意が得られない場合であっても、
就業規則の変更に合理性があれば、
通勤手当の減額も可能です。

ただ、合理性の有無の判定も
上記のように文字で書けば簡単に見えますが、
トラブルになれば、一つ一つ証明していくことになりますので、
非常に煩瑣です。

強行突破作戦は最後の手段にして、
従業員の同意を得ることに意を尽くした方が得策です。


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生理休暇を取得した者は賞与を減額してもよいか?

欠勤日数に生理休暇日数を加えた日数を出勤すべき日数から控除した、
実労働日数に応じた賞与額を計算することは労働基準法違反でしょうか?

結論から申し上げると、違反ではありません。

生理休暇については労働基準法第68条で次のように定めています。

――――――――――――――――――――――――――――――
使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、
その者を生理日に就業させてはならない。
――――――――――――――――――――――――――――――

年次有給休暇のように「有給にしなければならない義務」はありませんので、
賃金を計算する際に、欠勤として扱っても問題ありません。

賞与額を算定する際の出勤率の計算にあたり、
生理休暇取得日数を欠勤扱いとすることも労働基準法違反とはなりません。
(昭和49年4月1日婦収第125号、
 昭和63年3月14日基発第150号、婦発第47号)

また、賞与そのものではありませんが、
精皆勤手当の支給に当たり、
生理休暇を欠勤として扱うことは適法であるという判例もあります。
(昭和60年7月16日エヌ・ビー・シー工業事件)

以上により、賞与の額を算定する際に
出勤率の計算において、生理休暇日数を欠勤として取り扱うことは
労働基準法違反ではないと言えます。

ただし、こうした計算方法により
生理休暇を取りづらくしている面は否めません。
法の趣旨からは外れることになりますので、
生理休暇取得日を出勤したものとみなして計算する方が望ましいです。

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特定の月に限り給与の支払日を遅らせることはできるか?

毎月25日払いをしている会社があるとします。
資金繰りの関係で1月と6月に限り、月末払いにしたい場合は、
事前に従業員から同意を得ておけば問題ないでしょうか?

結論から申し上げると、例え従業員の同意を得たとしても、
あらかじめ定められた賃金支払日を
25日以外に変更することはできません。

賃金支払日を労使間で自由に決めることはできますが、
この場合であっても、毎月払いの原則や一定期日払いの原則
(労働基準法第24条第2項)に反することはできないためです。

次の判例が参考になります。

「たとえ各労働者が賃金の不払いを承諾していたとしても、
 賃金の支払いは労働条件の中でも重要な条件であって、
 使用者に対し労働者を保護するために
 特に賃金支払い確保の目的から
 労働基準法第24条が設けられたのであるから、
 同条第1項但書及び第2項但書の場合の外、
 所定の支払方法を変更することは
 許されないものと解するを相当」
 (昭和25年2月4日 大阪高裁判決 扶桑商運事件)

つまり、従業人の同意の有無に関係なく、
特定の月の給与支払日を遅らせることは違法なのです。

それでは、いっそのこと毎月の賃金支払を
25日から月末に変えるということではいかがでしょうか。

これについては労働条件の変更となりますが、
毎月払いの原則に反しない限り就業規則によって
自由に定めたり変更したりすることができます。
事前に労働基準法第90条による手続きに従って、
就業規則を変更する限り、
支払日が変更されても違法とはなりません。

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給与明細書を書面からメールに切り替えることはできるか?

給与明細書、大半の企業では「紙」で 渡していらっしゃるかと存じますが、
給与明細書をPDFファイルにしてデータで送ることはできるのでしょうか?

結論から申し上げると、特に問題ありません。

次のような通達が出ております。
―――――――――――――――――――――――――――――
使用者は、口座振込などの対象となっている個々の労働者に対し、
所定の賃金支払い日に、次に掲げる金額等を記載した
賃金の支払いに関する計算書を交付すること。

1 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
2 源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料額等
  賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額
3 口座振込等を行った金額
(平成10年9月10日基発530号、平成13年2月2日基発54号、
 平成19年9月30日基発0930001号)
―――――――――――――――――――――――――――――

賃金の計算書(=給与明細書)については、
「書面による交付」までは求めていないことから、
上記の3点を満たしている計算書であれば、
データで渡しても構わないということになります。

もちろん、PDFでなく、メール本文に記載しても構いません。
(個別に入力するのは面倒なので、おススメはしませんが...)

なお、賃金計算書は従業員の個人情報に該当します。
送信時等のセキュリティー、誤送信などには十分お気をつけください。

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給与の振込先を一人1口座に限定できるか?

中小・ベンチャー企業の大半では、
従業員が指定する1ヶ所の振込先に給与を振り込んでいます。

ところが、従業員の中には
給与のうち10万円はA口座に振り込み、
残額をB口座に振り込んでほしいなどと希望する人もいます。

会社としては、こうした要望に応えていくことは、
振込手数料もかかりますし、労力もかかるので、
できれば一人1口座に限定したいと考えるケースが多いのではないでしょうか?

さて、このように、給与の振込先を一人1口座に限定することは
法的に問題ないのでしょうか。

結論から申し上げると、原則として問題はありません。

平成10年9月10日基発530号により、
次の通達が出ています。

―――――――――――――――――――――
取扱金融機関及び取扱証券会社は、
金融機関または証券会社の所在状況等からして
1行、1社に限定せず、複数とする等
労働者の便宜に十分配慮して定めること
―――――――――――――――――――――

これは、一人の従業員に対して、
複数の口座に分けて振り込むことを配慮するという意味ではなく、
会社が振込先を「必ず○○銀行の口座に振り込む」等と定めるのではなく、
従業員にとって複数の金融機関等の中から
振込先銀行を選べるように配慮してください、という意味です。

この程度の便宜を図ることは求められていますが、
複数の口座に分けて振り込めるようにしなさい、
とまでは求められておりません。

従って、給与の振込先を一人1口座に限定することは
特に問題ないという結論になります。

なお、賃金の口座振込については、
次の要件をすべて満たすことが求められています。

1 労働者の同意を得ること
2 労働者が指定する本人名義の口座に振り込むこと
  (労働基準法施行規則第7条の2)

これらの要件に加え、
振り込まれた賃金の全額が
所定支払日に払い出せるようにしてください、等と
行政指導をしています。

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休日出勤に対する代休の取得が翌月となった場合の給与計算は?

ある会社の給与は月末締めです。月の途中に休日出勤を行い、
翌月に代休を取得することになっています。

この場合、賃金の支払いについてはどのように考えればよいでしょうか?

仮のこの休日が法定休日である場合、
休日出勤をしたのですから、1.35倍の賃金を支払わなければなりません。

ただし、従業員の意思に基づいて代休を付与したり、
代休の付与が制度として確立している場合は、
代休日の賃金(1.00倍)を1.35から差し引き、
結果として残る0.35部分の支払いをすればよいとなっています。

ただし、代休の取得が翌月となった場合は、
どのように考えればよいのでしょうか。

Aパターン 割増賃金を支払わない

まず考えられるのは、0.35部分を支払わないという選択です。
実態としては一番多いのですが、これは明らかに労働基準法違反となります。
ということで、おススメはできません。

Bパターン 0.35のみ支払う

0.35のみ支払うという選択は、
適法な取り扱いを目指している会社の中ではよくあるパターンですが、
厳密に言うと、これも法違反です。
労働基準法には「全額払いの法則」が掲げられており、
その賃金計算期間内に働いた分、
原則として全額を支払わなければならないからです。

とういことで、完ぺきに合法を目指すなら、次のCパターンとなります。

Cパターン いったん1.35倍全額を支払い、
        代休取得月に1.00分を控除する

いったん1.35倍を支払い、代休を取得した月に
1.00分を控除するという選択です。
これであれば、全額払いの原則に抵触しません。
代休を取得した月に1.00分を控除するというのも、
ノーワークノーペイの原則からして妥当となります。

ただ、正直、このパターンで実務を運用している会社って、
大企業ならともかく、中小・ベンチャー企業では
ほとんど見たことがありません・・・。

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自社の従業員を休日にアルバイトさせることってできますか?

例えば、土日が休みの会社があるとします。
Aという部署が忙しく、人手が足りないので、
Bという部署のメンバーに声をかけて、
希望者には土日に「アルバイト」として働いてもらうことはできるのでしょうか?

1 雇用契約上の問題

雇う側の会社も、雇われる側の従業員も同一であるにもかかわらず、
平日は正社員として雇用契約を結び、
休日はアルバイトとして別個の雇用契約を結ぶというのは
理論的にはありえますが、
実態は一体のものとして取り扱うべきものです。

そうしなければ、どこの会社も休日は「アルバイト」扱いにすることで、
休日出勤が休日出勤でなくなってしまいます。
これでは労働基準法が骨抜きとなってしまい、法の趣旨に反してしまいますので、
認められないわけです。

さらに、労働時間は、事業場を異にする場合においても、
労働時間に関する規定の適用については通算するという定めがあります。
(労基法38条第1項)

したがって、仮に1日の所定労働時間が8時間の会社であれば、
平日5日分で週の法定労働時間40時間となりますので、
土日のどちらかに出勤した時点で1.25倍で計算することになりますし、
その日が法定休日であれば、1.35倍で計算することになります。

2 残業単価

昭和23年11月22日基発第1681号には次のような説明があります。

所定労働時間中に甲作業に従事し、
時間外に乙作業に従事したような場合には、
その時間外労働についての「通常の労働時間又は労働日の賃金」とは、
乙作業について定められている賃金である。

ここから、休日労働での作業に対して
普段の仕事とは別の賃金が割り振られている場合は、
休日労働の作業に見合った賃金を元にした残業単価で計算すればよいということになります。

まとめ

1 雇用契約上は、二つの雇用契約を走らせるのは無理がある。
2 労働時間は平日の業務と通算して計算しなければならず、
  その上で、割増賃金が発生する場合は、割増賃金を支払わなければならない。
3 ただし、残業単価はその作業に見合った賃金が設定されている場合は、
  その賃金を元にして計算して構わない。

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