【フレックスタイム制とは?】
フレックスタイム制とは、1ヶ月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、
従業員がその範囲内で、業務の繁閑などに合わせて、
各自の始業及び終業時刻を選択して働く制度です。
これにより、従業員はその生活と業務との調和を図りながら効率的に働くことが可能となります。
このフレックス制による場合は、三六協定がなくても、
清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、従業員が選択することにより、
1日の労働時間帯を、コアタイムとフレキシブルタイムとに分け、
始業及び終業の時刻を従業員の決定に委ねることになります。
※ コアタイム:従業員が労働しなければならない時間帯
※ フレキシブルタイム:従業員の選択により労働することができる時間帯の中であれば
いつ出社または退社してもよい時間帯
なお、コアタイムは必ず設けなければならないものではありませんので、
1日の労働時間帯の全部をフレキシブルタイムとすることもできます。
逆に、1日の労働時間帯の中でコアタイムがほとんどを占め、
フレキシブルタイムが極端に短い場合は、
基本的に始業及び終業の時刻を従業員の決定に委ねたことにならず
フレックスタイム制とはみなされません。
(経験的にはコアタイムは4時間くらいまでが限度のようです。)
【要 件】
フレックスタイム制を採用するためには、次の要件を満たさなければなりません。
1 就業規則その他これに準ずるものにより、
始業・終業の時刻を従業員の決定に委ねる旨を定めること
2 書面による労使協定で、対象従業員の範囲や清算期間など、
次に説明する「労使協定で定めること」に掲げる事項を定めること
※ この労使協定は従業員に周知させなければなりません。
※ この労使協定を管轄の労働基準監督署へ届け出る義務はありません。
【労使協定で定める事項】
1 対象となる従業員の範囲
フレックスタイム制を適用する従業員の範囲を明確に定めることが必要です。
この場合、対象となる従業員の範囲を「全従業員」あるいは
「特定の職種の従業員」と定めることができます。
個人ごと、課ごと、グループごとなど様々な範囲も考えられます。
2 清算期間
A 清算期間は、フレックスタイム制において
労働契約上従業員があろうどうすべき期間を定めるもので、1ヶ月以内とされています。
「1ヶ月以内」ですから、1週間単位なども可能です。
ただし、賃金計算期間に合わせて1ヶ月とする場合が一般的です。
B 清算期間については、その長さと起算日を定めることが必要です。
単に「1ヶ月」とせず、毎月1日から月末までなどと定めることが必要です。
3 清算期間における総労働時間
A この時間は, 労働契約上従業員が清算期間内において
労働すべき時間として定められている時間のことで、
清算期間における所定労働時間のことです。
B この時間は、 清算期間を平均し、1週間の労働時間が
法定労働時間(原則40時間)の範囲内とするように定めることと要します。
その計算方法は、1ヶ月単位の変形労働時間制と原則として同様です。
清算期間における総労働時間≦40×(清算期間における暦日数/7)
=清算期間における法定労働時間の総枠
C 労使協定は, 清算期間における法定労働時間の総枠の範囲内で、
例えば1ヶ月160時間というように
各清算期間を通じて一律の時間を定める方法の他、
清算期間における所定労働日を定め、
所定労働日1日当たり7時間というような定め方をすることもできます。
4 標準となる1日の労働時間
標準とのある1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に支払われる
賃金の算定基礎となる労働時間等となる労働時間の長さを定めるものであり、
単に時間数を定めれば足りますが、
定め方としては、清算期間における総労働時間を
その期間における所定労働日数で除す方法などがあります。
なお、フレックスタイム制を採用している従業員がその清算期間内において、
有給休暇を取得したときには、その取得した日については、
標準となる労働時間を労働したものとして取り扱うことになります。
5 コアタイム・フレキシブルタイムの開始および終了の時刻
コアタイム・フレキシブルタイム等を設ける場合は、
必ず労使協定でその開始および終了時刻を定めることとされています。
【労働時間の算定等】
フレックスタイム制においては、始業及び終業の時刻を
従業員の決定に委ねることになりますが、
その場合にも使用者は労働時間を把握する義務があり、
使用者は、各従業員の各日の労働時間を把握しなければなりません。
【労働時間の過不足の取り扱い】
実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として定められた時間に比べ
過不足が生じた場合には、
清算期間内で労働時間及び賃金を清算することが原則ですが、
次の清算期間に繰り越すことの可否については次の通りです。
1 実際の労働時間に過剰があった場合
結論:過剰分は残業代として支払うこと
清算期間における実際の労働時間に過剰があった場合に、
総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払い日に支払うが、
それを超えて働いた時間分を、次の清算期間中の総労働時間の一部に充当することは、
その清算期間内における労働の対価の一部が
その期間内の賃金支払い日に支払われないことになり、
賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に違反します。
2 実際の労働時間に不足があった場合
結論:一定条件の下、不足分を時月に繰り越すことができる
清算期間における労働時間に不足があった場合に、
総労働時間として定められた時間分の賃金は
その期間の賃金支払い日に支払うが、
それに達しない時間分を次の清算期間中の総労働時間に上積みして労働させることは、
法定労働時間総枠の範囲内である限り、
その清算期間においては実際の労働時間に対する賃金よりも多く賃金を支払い、
次の清算期間で、その分の賃金の過払いを清算するものと考えられ、
賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条)に違反するのではありません。
ただし、この場合には、繰り越された時間を加えた次の清算期間における労働時間が
法定労働時間の総枠の範囲内となるように、
繰り越しできる時間の限度を定める必要があります。
【時間外労働】
フレックスタイム制を採用した場合の時間外労働は1日及び1週間単位では判断せず、
清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間となります。
したがって、時間外労働に関する協定についても、1日の延長時間について協定する必要はなく、
清算期間を通算しての延長時間および1年間の延長期間の協定をすれば足りることとなります。
なお、清算期間が1ヶ月で、清算期間を通じて完全週休2日制を実施している場合、
清算期間における曜日の巡りや労働日の設定によっては、
清算期間の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えることがありますが、
次の要件を満たす場合に限って、清算期間の労働時間が法定労働時間の枠を超える場合にも、
法定労働時間以内とみなす特別な取り扱いを認めています。
A 清算期間を1ヶ月とするフレックスタイム制の労使協定が締結されていること
B 清算期間を通じて毎週必ず2日以上休日が付与されていること
C 特定期間(=その期間の29日目を起算日とする1週間)における
対象となる従業員の実際の労働日ごとの労働時間の和が
週の法定労働時間(40時間)を超えるものでないこと
D 清算期間における労働日ごとの労働時間が概ね一定であること。
したがって、完全週休2日制を採用する事業場における
清算期間中の労働日ごとの労働時間については、概ね8時間以下であること
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