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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

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在宅勤務と事業場外みなし労働時間制

この度、厚生労働省から在宅勤務での適正な労働時間管理の手引き.pdfという
パンフレットが発行されました。

ポイントは在宅勤務者に事業場外みなし労働時間制を適用するための要件です。

以下のすべての要件を満たす場合、
「事業場外労働によるみなし労働時間制」が適用できます。

①その業務が、起居寝食など私生活を営む自宅で行われること
②その業務に用いる情報通信機器が、使用者の指示により
 常時通信可能な状態におくこととされていないこと
③その業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

【解説】

②「使用者の指示により常時」
労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することが
使用者から認められていない状態をいいます。

②「通信可能な状態」
使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板などにより
随時具体的な指示を行うことが可能であり、
かつ、使用者から具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態
(具体的な指示に備えて手待ち状態で待機しているか、
 待機しつつ実作業を行っている状態)の意味であり、
これ以外の状態、例えば、単に回線が接続接続されているだけで
労働者が情報通信機器から離れることが自由である場合などは
「通信可能な状態」に当たりません。

③「具体的な指示に基づいて行われる」
例えば、業務の目的、目標、期限などの基本的事項を指示することや、
これらの基本的事項について変更の指示をすることは含まれません。

なお、在宅勤務に事業場外みなし労働時間制を適用した場合は、
次のような取り扱いとなります。

① 全てを在宅勤務した場合

【原則】所定労働時間労働したものとみなす。
【例外】通常その業務を遂行するためには所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合、
      その業務の遂行に通常必要とされる時間(※)労働したものとみなす。

② 一部は事業場内で勤務し、残りを在宅勤務した場合

【原則】事業場内勤務と在宅勤務とを合わせて、所定労働時間労働したものとみなす。
【例外】事業場内勤務分の労働時間と在宅勤務で行った業務に通常必要とされる時間(※)とを
      足し合わせた時間が所定労働時間を超える場合は、
      足し合わせた時間労働したものとみなす。

※ 過半数組合または過半数代表との間で労使協定を締結したときは、
  その協定で定める時間を「業務の遂行に通常必要とされる時間」とすることが認められます。
  なお、協定で定める時間が法定労働時間を超える場合には、
  所轄労働基準監督署への届け出が必要です。

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事業場外労働のみなし労働時間制における1日における労働時間の算定

事業場外で業務に従事し、会社や上司の具体的な指揮監督が及ばず、
労働時間の算定が困難な場合は、
事業場外労働のみなし労働時間制を活用して、
その事業場外労働の時間を「みなす」ことになりますが、
この場合の1日における労働時間の算定の方法は、以下の通りになります。

所定労働時間とは就業規則等で定められた
始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間のことで、
労働義務のある時間です。

例えば、次の図のとおり、所定労働時間が7時間30分、
休憩時間が1時間(午前12時から午後1時までの間)で
始業時刻が午前9時、終業時刻が午後5時30分の場合に、
事業場外労働のみなし労働時間制による労働時間の算定方法と
1日の労働時間の算定は次の通りになります。
(青い線:事業場内労働)

原則.jpg

<1 労働時間の全部について事業場外で労働した場合>

ア 労働時間の全部について事業場外での業務を行う
  いわゆる直行・直帰型の事業場外労働の場合

ケース1(赤い線:事業場外労働)
例1.jpg

この場合、労働時間の算定が困難な事業が外の業務の遂行に
通常必要とされる時間(通常必要時間)が所定労働時間以内であれば、
所定労働時間労働したものとみなして、
1日の労働時間は7時間30分と算定して労働基準法を適用することになります。
ただし、上のケース1のように、
事業場外労働が常態として
所定労働時間(7時間30分)を超えて8時間行われる等、
所定労働時間を超えることが通常必要となる時は、
通常必要時間を労働したもの(この場合は8時間)とみなすことになります。

なお、通常必要時間とは、「通常の状態でその業務を遂行するために
客観的に必要とされる時間」のことで、
対象従業員の事業場外労働の実態等により必要時間は異なることから、
事業場外労働の実際に必要とされる時間を平均した時間となります。

<2 労働時間の一部について事業場外で労働した場合>

ア 事業場内労働(内勤)を行った後、
  事業場外労働(外勤)を行ってそのまま直帰する場合

ケース2(青い線:事業場内労働 赤い線:事業場外労働)
例2.jpg

外勤の通常必要時間(例えば3時間の場合)が
内勤の時間(上のケース2の場合は9時から14時までの4時間)を合計すると7時間となり、
所定労働時間数(7時間30分)以内であるので、
外勤については内勤の時間を含めて所定労働時間働いたとみなし、
1日の労働時間は7時間30分となります。

ただし、内勤の時間が5時間である場合には、
外勤の通常必要時間の3時間を加えると所定労働時間数を超えるので、
この外勤は3時間働いたものとみなして、1日の労働時間は8時間となります。

イ 直行型の外勤を行い、その後内勤を行う場合

ケース3(青い線:事業場内労働 赤い線:事業場外労働)
例3.jpg

この場合は、外勤の通常必要時間(例えば3時間の場合)が
内勤の時間(上のケース3の場合は14時30分から18時30分までの4時間)を
合計して所定労働時間以内であるので、
外勤については内勤の時間を含めて所定労働時間労働したものとみなし、
1日の労働時間は7時間30分となります。

ただし、内勤の時間が6時間である場合には、
外勤の通常必要時間の3時間を加えると所定労働時間数を超えるので、
この外勤は3時間働いたものとみなして、1日の労働時間数は9時間となります。

ウ 外勤と内勤が混在する場合

ケース4(青い線:事業場内労働 赤い線:事業場外労働)
例4.jpg

この場合も、AとBの外勤の通常必要時間(例えば4時間の場合)が
内勤の時間(上野ケース4の場合は3時間30分)を合計して所定労働時間以内であるので、
外勤については内勤の時間を含めて所定労働時間働いたものとみなし、
1日の労働時間は7時間30分となります。

ただし、内勤の時間が5時間30分である場合には、
外勤の必要時間の4時間を加えると所定労働時間を超えるので、
この外勤は4時間働いたものとみなして、1日の労働時間は9時間30分となります。 

この他、事業場外労働のみなし労働時間制の概要を知りたい方はこちらをクリックしてください。

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事業場外労働のみなし労働時間制の概要は?

【事業場外労働のみなし労働時間制とは?】

事業場外労働のみなし労働時間制とは、
従業員が業務の全部または一部を事業場外で従事し、
会社や上司の指揮監督が及ばないために、
その業務についての労働時間の算定が難しい場合に、
本来、会社に課せられている労働時間の算定義務を免除し、
その事業場外労働について「特定の時間」働いたものと
みなすことのできる制度です。

【事業場外労働のみなし労働時間の要件は?】

事業場外労働のみなし労働時間制の対象とするためには、
次の2つの要件を満たす必要があります。

1 労働時間の全部または一部を事業場外で業務に従事すること
2 会社や上司の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が難しいこと

次のように事業場外で従事する場合であっても、
会社や上司の指揮監督が及んでいる場合については、
労働時間の算定が可能ですので、みなし労働時間制の適用はできません。

1 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、
  そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
2 携帯電話等によって随時使用者の指示を受けながら働いている場合
3 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、
  指示通りに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

新聞・雑誌の記者、直行直帰型の営業社員、
一般従業員の出張時等に適用されることが多いです。

【労働時間の算定方法は?】

事業場外労働のみなし労働時間制が適用される
事業場外の業務に従事した場合における労働時間の算定には、
次の3つの場合があります。

1 所定労働時間
2 事業場外の業務を遂行するためには、
  通常所定労働時間を超えて働くことが必要である場合には
  その業務の遂行に通常必要とされる時間
3 2の場合で労使協定が締結されている時は、
  その協定により事業場の業務の遂行に
  通常必要とする時間として定めている時間

ただし、2及び3の方法による場合で
「みなすことのできる労働時間」は
事業場外労働に該当する部分のみです。

労働時間の一部を事業場内で働いた場合には、
その時間については別途把握しなければならず、
「みなす」ことはできません。

したがって、労働時間の一部について
事業場外で業務に従事した日における労働時間は、
次の計算式となります。

みなし労働時間制により算定される業場外で業務に従事した時間
+ 別途把握した事業場内における時間

【1日における労働時間の算定方法は?】

こちらをクリックしてご確認ください。

【事業場外労働に関する労使協定について】

常態として行われている事業場外の業務であって
労働時間の算定が困難であり、
通常所定労働時間を超える場合は、
その業務について通常必要時間を労使協定書により定めると、
その協定で定める時間が通常必要時間となります。

労使協定の締結事項としては、下記の通りです。

1 対象とする業務
2 みなし労働時間
3 有効期間

さらに、下記のものについては就業規則で定めることで足りますが、
他の従業員と異なる扱いをする場合には、
労使協定で定めることになります。

4 時間外労働
5 休日労働
6 深夜労働

労使協定は従業員に周知しなければいけません。

また、その協定で定める時間が法定労働時間を超える場合には、
事業場外労働に関する協定届(様式第12号)を
事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出する必要があります。

なお、様式第9号の2の時間外労働に関する協定届を届け出ることにより
様式第12号に替えることができます。

<労働時間の全部について事業場外で働いた場合>

労使協定で定める時間は事業場外の業務についての通常必要時間となります。

<労働時間の一部について事業場外で労働した場合>

1 労使協定で定める時間と事業場内労働の時間を加えた時間が
  所定労働時間を超える日

  労使協定であらかじめ定めた時間が
  事業場外労働の時間と算定されます。

  この場合の労働時間は、労使協定で定めた事業場外労働の時間と
  別途把握した事業場内労働の時間の合計となります。

2 労使協定で定める時間と事業場内労働の時間を加えた時間が
  所定労働時間を超えない日

  労使協定で定めた時間ではなく、
  事業場外労働の労働時間は
  事業場内労働の時間を含めて所定労働時間働いたものとみなします。

【時間外労働についての考え方】

事業場外労働のみなし労働時間制により算定されるみなし労働時間が
法定労働時間を超える場合には
法定労働時間を超えた時間は時間外労働となり、
2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。
(例:事業場外の業務に従事した時間と
 別途把握した事業場内の業務に従事した時間の合計が
 法定労働時間を超えた場合 等)

【休日労働についての考え方】

事業場外労働のみなし労働時間制により
労働時間が算定される場合であっても、
法定休日の規程は適用になります。

<法定休日に労働時間の全部が事業場外で業務に従事した場合>

その労働時間の算定が困難であり、
通常必要時間が所定労働時間以内であるときには、
所定労働時間働いたものとみなします。

その結果、所定労働時間に対して
3割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

なお、休日労働の日の所定労働時間は
通常の労働日の所定労働時間によります。

<法定休日の労働時間の一部が事業場内労働である場合>

みなし労働時間制により算定される事業場外で業務に従事した時間と、
別途把握した事業場内における時間の合計に対して、
3割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

<法定休日以外の所定休日労働の場合>

法定休日と同様に、所定休日労働の時間を算定してください。
法定労働時間を超える時間は時間外労働となります。

時間外労働と同様に割増賃金を支払う必要があります。

【深夜労働についての考え方】

事業場外労働のみなし労働時間であっても、
深夜労働の条文は適用されます。

午後10時から午前5時までの間に働いた時は、
その時間については2割5分増以上の割増賃金を支払う必要があります。

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