企画業務型裁量労働制導入に際しての労使委員会での決議事項は?
企画業務型裁量労働制導入に際しての労使委員会での決議事項は以下の通りです。
1 対象となる業務の具体的な範囲
対象業務については具体的な範囲を労使委員会で決議しなければなりません。
(例:本社において企業全体の経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、
経営に関する計画を策定する業務)
その要件として、以下の4つがあります。
1 業務が所属する事業場の事業の運営に関するものであること
例えば、対象事業場の属する企業等に係る事業の運営に影響を及ぼすもの、
事業場独自の事業戦略に関するものなど、
対象業務の該当性の有無(○×)は次の通りです。
例1 本社で企業全体の事業戦略の策定を行っている →○
例2 本社で個別の営業活動を行っている →×
例3 事業本部で特定の製品についての企業全体の事業戦略の策定を行っている →○
例4 関東支社で関東支社および関東地域の各支社を統括した事業戦略の策定を行っている →○
例5 茨城支店で個別の営業活動を行っている →×
例6 千葉支店のみの事業戦略の策定を行っている →○
例7 埼玉工場で特定の製品についての海外における事業戦略の策定を行っている →○
例8 埼玉工場で個別の製造作業やその工程管理を行っている →×
2 企画、立案、調査及び分析の業務であること
3 業務遂行の方法を大幅に従業員の裁量にゆだねる必要があると、
「業務の性質に照らして客観的に判断される」業務であること
「業務の性質に照らして客観的に判断される」業務であること
4 企画・立案・調査・分析という相互に関連しあう作業を、
いつ、どのように行うか等についての
広範な裁量が従業員に認められている業務であることいつ、どのように行うか等についての
以上の要件のすべてを満たした業務が対象業務となります。
したがって、一定の職務経験年数以上で職能資格が一定以上の
従業員全てが該当するわけではありません。
なお、対象業務となりえる業務やなりえない業務の例については、
こちらのサイトをご覧ください。
2 対象従業員の具体的な範囲
対象従業員は、「対象業務に状態として従事していることが原則」です。
また、客観的にみて、「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等」がない従業員、
例えば4年制大学を卒業した新卒で職務経験がない従業員は、対象従業員と決議しても、
企画業務型裁量労働制の効果は生じません。
こうした従業員は、少なくとも3~5年の職務経験を経た上で、
初めて「対象業務を適切に遂行するための知識・経験等」がある従業員として
認められることになります。
この辺り、実際は新卒でもまれに「学生起業」等の経験があり、
ちょっとした中堅社員よりよっぽど見識等があるケースもありますが、
いかんせん、役所の判断基準ですので、認められずらいかと存じます。
3 労働したものとみなす時間
労働したものとみなす時間は、労働時間として算定される時間です。
その際、1週間単位や1ヶ月単位の時間を決議することはできません。
実際のみなし労働時間の決め方については、
法令で「このような水準で決めるべき」という規定は盛り込まれていませんが、
割増賃金節約だけのために短めのみなし労働時間を定めることは、制度の趣旨に反しています。
このため、決議する際に、労使委員会の委員は、
会社側から評価制度・賃金制度に関する説明を十分に受けて、
対象業務の内容を理解した上で、
みなし労働時間が適切な水準のものとなるよう決議するように注意してください。
4 健康・福祉の確保措置の具体的内容
会社は、対象労働者の健康及び福祉を確保するため、
下記の2点について決議する必要があります。
申し出の窓口、取り扱う苦情の範囲等、措置の具体的内容を
1 対象従業員の勤務状況を把握する方法を具体的に定めること
2 把握した勤務状況に応じ、どういう状況の対象従業員に対し、
いかなる健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にすること
勤務状況の把握方法については、
通常の労働時間管理と同様の管理までは求められていませんが、
出退勤時刻のチェック等によって、
従業員がいかなる時間帯にどの程度の時間在社していたのかの
状況を把握する方法で明確に定めることが必要です。
<健康・福祉確保措置の例>
1 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
代償休日または特別な休暇を付与すること
2 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
健康診断を実施すること
3 働き過ぎ防止の観点から、年次有給休暇について
まとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること
4 心と体の健康問題についての相談窓口を設置すること
5 働きすぎによる健康障害防止の観点から、
必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、
または対象従業員に産業医等による保健指導を受けさせること
6 把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に配慮し、
必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
また、上記と合わせて次の事項についても決議することが望まれます。
1 会社が対象となる従業員の勤務状況を把握する際、併せて健康状況を把握すること
2 会社が把握した対象従業員の勤務状況及びその健康状態に応じて、
対象従業員への企画業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うこと
3 会社が対象となる従業員の自己啓発のための特別の休暇の付与等
能力開発を促進する措置を講ずること
5 従業員からの苦情処理のため実施する措置の具体的内容
決議で定めることが求められています。
具体的には、企画業務型裁量労働制に関しては、業績評価制度や目標管理制度、
これに基づく報酬制度などが導入されている場合には、
評価制度や報酬制度に付随する苦情が多く寄せられることが予想されます。
そこで、これらに関する苦情についても、
苦情処理の対象に含めるように措置することが適当であると
行政では指導をしています。
既に企業内に苦情処理システムをお持ちの企業については、
例えば、そのようなシステムで企画業務型裁量労働制に関する苦情処理を
合わせて行うことを対象従業員に周知するというように、
実態に応じて機能するよう配慮することが求められます。
6 本制度の運用について従業員本人の同意を得なければならないこと及び
不同意の従業員に対し不利益取り扱いをしてはならないこと
次の事項についても決議することが望まれます。
1 企画業務型裁量労働制の概要、企画業務型裁量労働制の適用を
受けることに同意した場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容
並びに同意しなかった場合の配置及び処遇について、
会社が従業員に明示してその従業員の同意を得ることとすること
2 企画業務型裁量労働制の適用を受けることについての従業員の同意の手続き
(書面によること等)
3 対象となる従業員から同意を撤回することを認めることとする場合には、その要件及び手続き
7 決議の有効期間
3年以内とすることが望ましいとされています。
また、委員の半数以上から決議の変更等のための労使委員会の開催の申し出があった場合は、
決議の有効期間の中途であっても決議の変更等のための
調査審議を行うものとすることとされています。
8 企画業務型裁量労働制の実施状況にかかる従業員ごとの記録を保存すること
決議の有効期間中及びその満了後3年間が保存期間です。
なお、以上挙げた8項目以外にも、会社が対象となる従業員に適用される
評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更しようとする場合にあっては、
労使委員会に対し事前に変更内容の説明をするものとすることを盛り込むよう、
行政は指導しています。
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