退職直前に、たまっていた有給休暇を取得している最中に、
他社に転職し働き始めている人がいることが発覚しました。
他社に就労を始めている人に対し、有給休暇を与え続けるのも釈然とせず、
有給休暇の使用を認めたくない、という会社からのご相談があったとします。
これは法的には問題ないでしょうか?
結論から申し上げると、有給休暇の使用は認めざるを得ません。
労働基準法に定める有給休暇制度の趣旨は、
休日の他に毎年一定日数の有給休暇を与えることで、
従業員の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることにあるのですが、
法律上は、有給休暇をどのような目的で利用するかについては、
特段の制限を設けておらず、従業員側の自由なのです。
考えられる対抗手段としては、(懲戒)解雇を検討するという方法があります。
就業規則に定めてある、懲戒解雇の事由の中に
「 会社の許可なく在籍のまま兼業をした場合」
などという文言があれば、これを根拠に(懲戒)解雇をする道が開けます。
これで、「本日をもってあなたを(懲戒)解雇します。」
とすれば、従業員の有給休暇の消化を続けることができなくなります。
ただ、ここにも2つ問題が。
一つは、「(懲戒)解雇」の有効性です。
解雇をする場合や懲戒処分をする場合は、
労働契約法により下記の2点を満たすことが必要です。
★ 客観的に合理的な理由があること
★ 社会通念上相当であること
これを満たさない場合は、権利の濫用とされてしまいます。
就業規則に書いてあるからと言って、
必ずしも上記の2つの要件を満たすかどうかは別問題です。
従業員側が(懲戒)解雇をすんなりと受け入れてくれればよいのですが、
トラブルになると、正直、面倒を抱えることになることを覚悟しなければなりません。
2つ目の問題。これが意外に重要かもしれませんが、
即日解雇をする場合は、原則として30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。
懲戒解雇の場合は、労働基準監督署に「解雇予告除外認定申請書」を提出して、
「解雇予告手当を支払わずに解雇していいですか?」とお伺いを立てることになりますが、
これが結構ハードルが高く、なかなか認めてもらえません。
例えば、有給休暇は残り10日分で終わるというときに、
30日分の解雇予告手当を支払うとなると、かえって会社の出費が増えることになります。
これでは本末転倒ですね。
ということで、法律の世界の中で何とかしようとしても、
有効な手段が見つけにくいのが実情です。
残りの手段は法律外の手段。
ご本人を呼び出すなどして、話し合いで退職日を早めてもらうよう交渉するくらいでしょうか。
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