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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

解雇予告手当の注意ポイントは?

解雇予告手当を支払う際の実務上の注意ポイントを記しておきます。

1 支払う日はいつ?

解雇予告をした日です。
解雇予告した日以降の給与支払日ではありませんので、ご注意ください。

2 控除するものはありませんか?

<社会保険料>

控除しません。

雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、全て控除しないようご注意ください。

<所得税>

退職(解雇)に伴って支払われるものであることから、
税金を計算する際は給与所得ではなく、退職所得として計算します。

退職所得も課税対象ですが、控除額が大きいことが特徴です。
このため、退職金と一緒に支払われたり、
解雇予告手当がよほど高額でも無い限りは、
解雇予告手当に所得税が発生することは滅多にありません。

ちなみに勤続年数に応じて、下記の金額までは所得税がかかりません。

★ 勤続年数が20年以下の場合
  40万円×勤続年数
  ※80万円未満の場合には80万円

★ 勤続年数が20年を超える場合
  70万円×(勤続年数-20年)+800万円

なお、解雇予告手当を受け取る場合、
対象従業員は『退職所得の受給に関する申告書』に必要事項を記載し、
会社で保管しておくことになっております。

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解雇予告30日前って、結局いつのこと?

労働基準法では、解雇をする場合、
原則として下記の2種類の選択枝からどちらか一方を選ぶことになります。

1 少なくとも30日前に予告をする
2 30日分の解雇予告手当を支払う
  ※正確には1と2の合わせ技もOK。
   例:20日前に予告をし、10日分の解雇予告手当を支払う 等

さて、「1」を選択するとして、
12月1日に解雇予告をする場合、結局いつをもって解雇とすれば
30日前に予告したことになるのでしょうか?

12月30日? はたまた12月31日?

答えは「12月31日」。

民放という法律で「初日不算入の原則」が謳われており、
これは労働基準法にも適用されます。

したがって、12月1日に解雇の予告をするわけですから、
この日は初日不算入の原則により、カウントされません。

12月2日から30日後の12月31日。この日をもって解雇すると、
12月1日にご本人に伝えるということになります。

1ヶ月が31日の月ですと、分かりやすいのですが、
1ヶ月が30日の月ですとどのようになるのでしょうか?

例えば、9月30日をもって解雇したいという場合は、
9月1日に予告をしてしまったら29日前ということになってしまいます。
この場合は、8月31日までに9月末をもって解雇しますと予告しなければいけません。

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労働基準法による解雇制限

労働基準法第19条では次のようなケースの場合は、
解雇の制限をかけています。

1 業務上での従業員のケガや病気の療養のために休業する期間と、その後30日間
2 産前産後の女性が休業する期間と、その後30日間

ただし、使用者が、打切補償を支払う場合、または天災事変その他やむを得ない事由のために
事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでないとしています。
なお、、この場合は、その事由について労働基準監督署の認定を受けなければいけません。

さて、「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」とは
具体的にはどういうことを指しているのでしょうか。

以下、昭和63年3月14日基発150号を元にご説明します。

【やむを得ない事由】

やむを得ない事由とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づき、
かつ、突発的な事由の意味を指しています。
事業の経営者として、社会通念上取るべき必要な措置をもってしても
通常いかんともなしがたいような状況にある場合を言います。

通達では下記の事例が挙げられています。

★事業場が火災により焼失した場合。
 ただし、事業主の故意または重大な過失に基づく場合を除きます。
★震災に伴う工場、事業場の倒壊、類焼等により
 事業の継続が不可能となった場合

一方、次のような事例の場合は、やむを得ない事由には該当しません。

★事業主が経済法令違反のため強制収容され、
 または購入した諸機械、資材等を没収された場合
★税金の滞納処分を受け事業廃止に至った場合
★事業経営上の見通しの齟齬に代表される、
 事業主の危険負担に属すべき事由に起因して
 資材入手難、金融難に陥った場合
 個人企業で別途に個人財産を有するか否かは
 労基署の認定には直接関係はありません。
★従来の取引事業場が休業状態となり、発注品なく、
 そのために事業が金融難に陥った場合

【事業の継続が不可能】

事業の全部または大部分の継続が不可能になった場合を言います。

次のようなケースの場合は「事業の継続が不可能である」とは言えません。

★その事業場の中心となる重要な建物、設備、機械等が焼失を免れ、
 多少の従業員を解雇すれば従来通り操業できる場合
★従来の事業は廃止するが、多少の従業員を解雇すれば
 そのまま別個の事業に転換できる場合のように
 事業がなおその主たる部分を保持して継続できる場合
★一時的に操業中止のやむなきに至ったが、
 事業の現況、資材、資金の見通し等から
 全従業員を解雇する必要に迫られず、
 近く再開復旧の見込みが明らかであるような場合

なお、労働基準法による解雇制限以外にも他の法律により
解雇の制限がかけられています。
全体像を知りたい方はこちらも合わせてご覧ください。

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解雇が制限される場合とは?

民法において規定されている雇用契約(労働契約)は
当事者である会社側と従業員側のの交渉力や社会的地位が対等であることを前提としています。

ところが、実態としては、会社側の方が従業員側よりも強い立場にあるのが通常です。

そこで、現代社会においては労働契約法、労働基準法等の労働法や
判例法理によって、従業員側を厚く守るように全面的に修正されています。

まず、大原則です。

★期間の定めのない雇用契約

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
 社会通念上相当であると認められない場合は、
 その権利を濫用したものとして、無効となります。

★期間の定めのある雇用契約(有期雇用契約)

 やむを得ない事由がある場合でなければ、
 雇用契約期間中に解雇することができません。

さらに、解雇が具体的に禁止されている主な場合として、次のものがあります。

1 業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇(労働基準法19条1項)
2 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇(労働基準法19条1項)
3 労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇(労働基準法104条2項)
4 労働組合の組合員であること等を理由とする解雇(労働組合法7条)
5 労働者の性別を理由とする解雇(男女雇用機会均等法6条)
6 女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたことを理由とする解雇
  (男女雇用機会均等法9条)
7 労働者が育児・介護休業を申し出たこと、
  または育児・介護休業をしたことを理由とする解雇(育児・介護休業法10条、16条)
8 公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法3条)

ただし、上記1及び2については、次の場合に解雇制限を外すことができます。

1 業務上の傷病により使用者から補償を受ける労働者が、
  療養を開始して3年を経過してもその傷病が治らない場合、
  平均賃金の1200日分の打切補償(労働基準法81条)を支払えば解雇制限が外れます。

  ★ケガ等の症状が回復して職場に復帰し、
   通院により治療している期間は解雇制限の対象とはなりません。
   療養のために休業している(会社を休んでいる)期間が対象になります。
  ★解雇制限の対象になるのは、仕事が原因によるケガや病気に限られます。
   プライベートでのケガや病気は該当しません。
  ★通勤途上によるケガ等も解雇制限の対象とはなりません。

2 天災事変その他やむをえない事由が生じて、事業の継続が不可能になった場合、
  労働基準監督署長の認定を得ることができれば、解雇制限が外れます。

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会社の金を横領した社員を懲戒解雇することはできるか?

会社の金を横領。
そんなことってあるの?と知り合いで現金商売をしているレストラン経営者に聞いてみたところ、
「いっくらでもありますよ~。」

社長から信頼されて金庫の鍵を預けてもらっている幹部社員が、
その信頼を逆手に取り、こっそりネコババしていたとか、
具体的ケースを挙げ出したらキリがないほどだそうです。

皆で汗水たらして得たお金をコッソリ横領するなんて、とんでもないことです。
気持ち的には「許せん!懲戒解雇で即日解雇だー!!」となりますが、
法的には大丈夫でしょうか?

厳密な結論を言えば
「個々のケースにより異なりますので、何とも言えません」となります。

解雇の判断って微妙なんです。ただ、これでは答えになりませんね。

そこで、最終的には何とも言えなくとも、
考え方の筋道をお伝えしようと思います。

1 即日解雇はできるのか?

解雇処分が有効であるということが前提ですが
即日解雇、できます。

ただ、即日解雇をする際は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。
これを「解雇予告手当」と言います。

えっ?会社の金を横領したようなヤツになぜ、そんなお金を支払わなくてはいけないのか?

そりゃそうですよね。ごもっともです。

労働基準法第20条にも「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」は
解雇予告手当を支払わなくてよい、とされています。

そうなると、「労働者の責に帰すべき事由」かどうかを誰かが判断することになります。
これを判断するのが労働基準監督署です。会社ではありません。

したがって、労働基準監督署に「解雇予告除外認定申請書」という申請書を届け出て、
判断を仰ぐことになります。

労働基準監督署で判断する際には、次の通達を参考に決めていると思われます。
(昭和23年11月11日 基発第1637号、昭和31年3月1日基発第111号)

盗取、横領、傷害等があった場合の
「労働者の責に帰すべき事由」として認定すべき事例

1 原則として極めて軽微なものを除き、
  事業場内における盗取、横領、傷害等、刑法犯に該当する行為のあった場合

2 一般的にみて「極めて軽微」な事案であっても、
  使用者があらかじめ不祥事件の防止について
  諸種の手段を講じていたことが客観的に認められ、
  しかもなお労働者が継続的にまたは断続的に
  盗取、横領、傷害等の刑法犯、またはこれに類する行為を行った場合

3 事業場外で行われた盗取、横領、傷害等の刑法犯に該当する行為であっても、
  それが著しく当該事業場の名誉もしくは信用を失墜するもの、
  取引関係に悪影響を与えるもの
  または労使間の信頼関係を喪失せしめるものと認められる場合

ということで、極めて軽微でもなく、事業場内で行われたのであれば、
通常は、労基署も認めてくれるのではないかと考えます。

2 懲戒解雇処分は有効か?

懲戒解雇とは、普通解雇と異なり、けん責、減給、降職、出勤停止等とともに
企業秩序の違反に対し、使用者によって課せられる一種の制裁罰です。
(昭和38年6月21日 十和田観光電鉄事件 最高裁第二小法廷判決より)

懲戒解雇の具体的な方法や手続きについては、
特段法律で定められていませんが、
懲戒解雇を含む懲戒処分を社内の仕組みとして導入する場合は、
その種類や程度に関する事項を就業規則に定めなくてはいけません。
(労働基準法第89条第9号)

また、労働契約法で、懲戒処分を行う場合や解雇を行う場合は、
「客観的に合理的な理由を欠き、、社会通念上相当である」と
認められることが要件となっています。

――――――――――――――――――――――――――――――
(懲戒)
第十五条  使用者が労働者を懲戒することができる場合において、
当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の
性質及び態様その他の事情に照らして、
客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)
第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする。
――――――――――――――――――――――――――――――

横領した額、頻度、社内の防止体制、事業場内で起きた事件か否か等によって
結論も変わりえますが、
懲戒解雇、有効になる確率は高いと思います。

ただ、懲戒解雇を有効にしやすくするためにも、
次の点は押さえておいてください。

1 懲戒処分の種別や程度、事由等について就業規則に明記すること
2 日頃から不祥事件の防止策を講じておくこと
3 「こうした防止策を講じています」という証拠を残しておくこと

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抽象的な解雇理由しか告げずにした解雇は有効か?

ある従業員を「勤務成績不良のため解雇する」と伝え、解雇しました。
後日、その従業員が「具体的な理由も告げずに解雇したのは無効である」
と主張してきました。

会社としては、言いたいことはたくさんありますが、
具体的内容を本人に伝えるのも本人に気の毒ですし、
極力円満に解決したいと考え、具体的なところは言及しなかったのです。

この場合、Aに対して具体的な理由を告げないと、
解雇は無効になってしまうのでしょうか?

普通解雇、懲戒解雇を問わず、解雇をする場合は、
客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とされます。
(労働契約法第16条)

したがって、解雇をするには、合理的な理由が必要とされます。

したがって、解雇の効力が訴訟で争われたような場合、
会社は、解雇の具体的理由を裁判所で主張・立証することになり、
会社の言い分が認められなければ、
解雇権の濫用として解雇が無効になります。

しかしながら、これは解雇にあたって実体的な理由があるかどうか、という問題であり、
その理由を本人に伝える必要があるかどうかは別問題です。

会社が解雇理由を伝えないことで、
本人を意図的に騙そうとしたというような
特殊事情がある場合等は話は変わりますが、
一般的には、解雇の理由となった具体的事実を
本人に伝えることまでは法的には要求されていません。

判例も次のように判示しています。

「解雇理由は、これを被解雇者に通知しなければならないという根拠はない」
(昭和28年12月4日、最高裁第二小法廷、熊本電鉄事件)

なお、平成15年労働基準法改正により、
従業員が解雇の予告がされた日から退職日までの間において、
解雇理由を記載した文書の交付を請求した場合は
会社は遅滞なくこの文書を交付しなければならなくなりました。

この解雇理由についても、
特段詳しく具体的に記載する義務はありません。

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就業規則がないと解雇はできないか?

就業規則の作成義務や届け出義務がある会社であるにもかかわらず、
就業規則の作成や届け出を行っていない会社で、
従業員を解雇する事件が起きました。

従業員は

「就業規則がそもそもないのに、何を根拠に解雇するのか?
 解雇なんてできるはずがない!」

と主張しています。

就業規則がない会社は従業員を解雇することはできないのでしょうか?

結論から申し上げますと、解雇することは可能です。

もちろん、就業規則の作成・届け出義務を怠っているという、
労働基準法違反の問題はありますし、
解雇権の濫用ですとか、解雇に当たり正当な理由があるか等の
ハードルを越える必要はあります。

ただ、そうは言っても、雇用契約の性質上、
会社は本来的に従業員を解雇する権限を持っています。

上記で述べた、解雇権の濫用や、解雇に当たり正当な理由があるか等というのは、
会社が本来持っている解雇権の行使の仕方の問題であり、
解雇権そのものが失われるということではありません。

また、就業規則の作成や届け出義務に違反していたからといって、
それを理由に、当然にその従業員を解雇できなくなるいわれはないと
裁判官も判示しています。
(秀栄社事件:昭和46年11月1日、東京地裁判決)

なお、解雇権の行使の仕方という点については、
労働契約法第16条で次のような制限がかけられています。

---------------------
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして、無効とする。
---------------------

何をもって「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」かは、
最終的には裁判で争うことになりますが、
いずれにしても、トラブルに発展すると、
会社にとっても、そしておそらくはご本人にとっても、
とんでもない重荷を背負うことになります。

さらに、整理解雇ともなると、整理解雇の4要件(4要素ともいう)と言って、
さらに高いハードルが待ち構えています。

そこで、実務の上では極力解雇という選択肢を選ぶ前に
「退職勧奨→本人受諾」という流れを作るよう、
お客様にご提案をすることが多いです。

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配置転換・転勤命令が無効となる場合ってあるの?

原則的には、勤務地限定採用、職種限定採用でない限り、
配置転換や転勤命令は有効となります。

ただ、次の場合は、配置転換や転勤命令権の濫用とされ、
その命令は無効とされます。

1 業務上の必要性がない

一番イメージがしやすいのは、退職を促すための嫌がらせとしての
配置転換・転勤命令です。

2 合理的理由がない

例えば、退職勧奨を拒絶したことへの報復措置としての命令や、
結婚・出産を理由としてなされた命令です。
(昭和47年8月24日 横浜地裁判決 東洋鋼鈑事件)

3 労働条件が著しく低下する

配置転換や転勤命令によって給与額が
日常生活に影響を与えるほどに減額となる場合等が該当します。
(昭和34年3月14日 和歌山地裁判決 和歌山パイル織物事件)

4 職種・勤務場所について合理的な予想範囲を著しく超える

入社時の労働契約を締結した際の事情、これまでの社内慣行、
配置転換による新旧職務間の差等を総合的に判断して、
合理的な予想範囲を超えている場合が該当します。
(昭和48年12月18日 大阪地裁判決 名村造船所事件)

5 技術・技能等の著しい低下となる

特に技術系、職人系の従業員については、
それらの技術・技能の成長を著しく阻害するような
職種の変更等は配置転換権の濫用とされます。
(昭和47年10月23日 名古屋地裁判決 三井東圧化学事件)

6 私生活に著しい不利益が生じる

原則としては、私生活は会社がよくも悪くも立ち入ることではありませんので、
配置転換や転勤によって私生活が不便になる・不利益を被ると
従業員が主張しても、それを理由に
配置転換・転勤命令権が無効になるわけではありません。

ただし、これらの不便さ・不利益さが通常予想される範囲を超えて、
極めて著しいレベルである場合は、正当な拒否理由となるとされています。
(昭和43年8月31日 東京地裁判決 日本電気事件)

7 不当労働行為に該当する

  労働組合法第7条第1号・第3号違反となります。

8 思想・信条その他差別待遇に当たる

  労働基準法第3条違反となります。

大半の項目に共通して言えるのは
「著しい」ってどのくらい?という疑問です。

会社と従業員間でトラブルになると、こうした点が争点となり、
裁判で決着をつけるということになります。

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会社は、なぜ配置転換や転勤を命じることができるのですか?

会社が配置転換や転勤を会社が命じることの法的な根拠ってどこにあるのでしょうか?

そもそも、配置転換とは労働の種類が変わることであり、
転勤とは勤務場所が変わることです。

労働の種類については、
従事すべき職務の範囲(業務内容)もしくは職種(仕事の種類)は
労働契約の内容の一部を構成しており、
その変更は労働条件に影響を及ぼすことから、
法的根拠が必要です。
(昭和48年9月11日 大阪地裁判決 日本触媒化学工場事件等)

勤務場所については、
従業員の生活にも大きく影響を与えることから、
賃金や労働時間などとともに重要な労働条件に当たり、
労働契約の要素の一つであると位置づけられています。
(昭和44年7月10日 大阪地裁判決 日本生命事件等)

以上により、配置転換による労働の種類の変更、
転勤による勤務場所の変更ともに、
労働契約の要素であることから、
労働契約上の根拠が必要とされています。

一般には、労働契約というものは、
従業員が提供する労働力をどのように活用するかについて、
包括的に会社に委ねることを内容とするものであり、
個々の具体的労働を直接約束するものではありません。

会社は、従業員が行うべき労働の種類、態様、勤務場所等について
決定する権限を持っています。
したがって、会社が業務上の必要から従業員に転勤や配置転換を命ずることは、
原則として問題ないとされています。
(昭和42年7月21日 熊本地裁八代支部判決 三楽オーシャン事件、日本生命事件等)

本来ならば、個々の契約において
「会社は従業員に転勤を命じ、従業員はこれに応じなければならない」
とする旨を就業規則等で定めることが必要です。

昭和50年5月7日の日本コロムビア事件(東京地裁判決)の判決でも
就業規則に「業務上の都合で転勤、配置転換を命ずることがある」旨の規定があれば
会社が従業員に転勤や配置転換を命ずる権限を持つことを
より強く主張できると判示しています。

それでは、こうした就業規則上の明示がない場合はどうなるでしょうか?

黙示的、包括的にこのような権限が付与されていると考えられる場合であれば、
従業員は就業規則上の明示がないことを理由に
配置転換や転勤を拒否することはできないとされています。

ただ、裁判ともなれば「黙示的、包括的に権限が付与されていた」ことを
証明する必要が生じます。

このような面倒なことになるくらいなら、
就業規則を作成し、労働契約上の明確な根拠とした方がよいでしょう。

なお、職種限定採用、勤務地限定採用であることを明確にして採用した場合は、
会社が一方的に配置転換や転勤命令を下すことはできず、
双方の合意が必要です。
(昭和43年4月24日 東京高裁判決 日野自動車事件)

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採用時に労働条件を適正に明示していますか?

採用する際に、主要な労働条件について書面に記載し、採用された人に渡す必要があります。
相手が正社員でもアルバイトでも同じです。

書面に記載する最低限の事項については
労働基準法やパートタイム労働法などで決まっています。

結論的に申し上げると、今まで口頭で済ませていた会社や、書面の内容に自信のない会社は
こちらのサイトにある「労働条件通知書」を使ってください。

ポイントとしては下記の通りです。

☆有期雇用契約の場合

 1 更新の有無について記載すること
 2 更新の基準を明記すること

☆パートタイマーの場合
 
 1 昇給の有無、賞与の有無、 退職金の有無について明示すること

パートタイマーですら、昇給・賞与・退職金の有無について明示するよう言われておりますので、
正社員などについてもこれらの有無について明示しておくことをお勧めします。

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解雇の前に退職勧奨を!

従業員を解雇したい、と経営者の方からご相談をいただくことがあります。

私の場合は、解雇をするとなると本人のプライドは決定的に傷つくことが多く、
ご本人から不当解雇だなどと主張されて、後でもめることも多いことから、
まずは退職勧奨を打診してみてはどうか、とご提案することが多いです。

退職勧奨とは「退職してはどうか?」と本人に勧めることです。

こうした会社からの提案を受諾するかどうかは本人次第ですから、
本人の意思に関わらず、会社側のみの意思で行う解雇とは異なります。

退職勧奨であっても、ハローワークに行けば会社都合としての扱いになりますので、
解雇と同様、3か月間の支給制限期間なく、
7日間の待機期間の後、すぐに受給対象期間となります。

また、ご本人の意向や場合にもよりますが、
ご本人の再就職先などについても配慮してあげる等すると、
さらに交渉がスムーズです。

解雇や退職勧奨をするくらいですから、
経営者としてもいろいろ本人に言いたい気持ちがあることが多いのですが、
そこは大人になっていただき、
本人の怒りや憤りの感情に極力スイッチが入らないような発言、態度で
面談に臨んでください、とアドバイスをしています。

ご本人が弁護士に依頼したり、
労働組合に加入したりする等、深刻なトラブルになってしまうと、
かかる労力や時間(場合によっては金銭)が何倍にも膨れ上がります。

深刻なトラブルに発展しないよう、会社側としても本人の言い分も真摯に聴き、
対応できることは対応した上で、ご本人にも退職の道を選んでいただいた方が
お互いにとって前向きな人生を歩みやすくなります。

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有期雇用契約の場合、契約期間の限度はありますか?

有期雇用契約を締結する場合、契約期間の下限はありません。
「1日」でもいいし、1日の中の数時間でも構いません。

一方、上限については不当に従業員を拘束することを避けるため、
一定の上限が設定されています。
これには原則と特例が3種類あります。

ざっくり言えば、原則は3年間。
特例としては次の通りです。
①○○士、博士の学位を持っている人等の
 高度専門性を持っている人とされている人が、
 その専門性を活かした仕事をする場合は5年間。
②60歳以上の人との雇用契約は5年間。
③有期の建設工事で雇用する場合は、その工事の期間

以下、詳細です。

<原則>

3年間です。

ただし、有期雇用契約(特例3 に定めたものを除き、その期間が一年を超えるものに限ります。)を
締結した従業員(下記特例1又は2に該当する労働者は除きます。)は、
雇用契約の期間の初日から 1 年を経過した日以後であれば、
会社に申し出ることにより、 いつでも退職することができます。

この原則に対して、特例が3種類あります。

<特例1>

高度の専門的知識等を有する従業員との間に締結される雇用契約⇒上限5年
(※)当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限ります。

高度の専門的知識等を有する従業員とは、次の①から⑦のいずれかに該当する従業員です。
① 博士の学位を有する者
② 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、
   薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士又は弁理士
③ システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
④ 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
⑤ 大学卒で 5 年、短大・高専卒で 6 年、高卒で 7 年以上の実務経験を有する
   農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニア
   又はデザイナーで、年収が 1,075 万円以上の者
⑥ システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントで、
   年収が 1,075 万円以上の者
⑦ 国等によって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に
   準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者

<特例2>

満 60 歳以上の従業員との間に締結される雇用契約⇒上限5年

<特例3>

一定の事業の完了に必要な期間を定める雇用契約(有期の建設工事等)⇒その期間

通常、よく見られるパターンとしては、6か月もしくは1年間の有期雇用契約です。

なお、労働契約法上、有期労働契約によって従業員を雇い入れる目的に照らして、
契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮することとなっています。(第17条第2項)

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委任契約と雇用契約の違いって何ですか?

会社に対して個人が貢献する契約のあり方として、
委任契約というものがあります。

委任契約とは、当事者の一方が、相手に対して法律行為を委託して、
相手が、委託されたことを承諾することで成立する契約です。
ちなみに、法律行為以外のことを委託して、
相手が、それを承諾することで成立する契約もあります。
これを準委任契約と言います。
委任契約も準委任契約も、権利義務関係で実質的な違いはありません。

代表的な契約のイメージとしては、
会社と取締役との間の契約、大半のコンサルティング契約、
弁護士、税理士、社労士等との(大半の)顧問契約、
医者による医療契約等が挙げられます。

請負契約は「仕事の完成」とそれに対する「報酬」があることが要件でした。
「仕事の完成」というくらいですから、結果重視です。

一方、委任契約は「プロセス重視」です。
善良な管理者としての注意義務(通称、善管注意義務)を法律上負っています。

善管注意義務とは、委任された分野のプロとしての
注意を払いながら委任事務を行う義務です。

望ましい結果が得られない場合であっても、プロとしての注意を払っていた場合は
責任を取らなくてもいいですが、
仕事をするプロセスで、プロだったら当然気づくべき点を気づけなかったばかりに
望ましい結果が得られなかった場合は、善管注意義務に違反したことになります。

従って、取締役は経営のプロとしての注意を払いながら経営をする訳ですが、
プロとしての注意を払っていれば、会社が赤字になっても
株主から責任を取らされることはありません。

さて、この委任契約もやりようによっては雇用契約から切り替えることが可能です。

切り替えることができれば、会社としては社会保険料の負担がなくなりますし、
残業代の支払い、有給休暇の付与等の労働基準法上の義務からも解放されます。

当然のことですが、この切換えを合法的にするには、
雇用契約の色彩をなくすことが求められます。

雇用契約の場合は、会社と従業員の関係は使用/従属関係ですが、
委任契約の場合は、対等です。
委任事務をきちっとやってもらえればそれでよいのですから、
雇用契約のように何時から何時まで、どこそこで働け、というこまごまとした規制や、
指揮命令していると疑われる程度にまで仕事の進め方に口を出しすぎるのも御法度です。

当然ですが、雇用契約が前提の就業規則も適用できません。

また、従業員に対しても、労災保険は適用外となること等、
雇用契約と委任契約の違いについて
しっかり説明しないとトラブルの元となります。

実際に切換えを行う場合は、上記の他にも個々の企業ごとに検討すべきことが生じます。
信頼できる社労士か弁護士と相談しながら切換えを進めることをお勧めします。

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雇用契約だからこそできることって何ですか?

雇用契約よりも、委任契約や請負契約を締結する方が
残業代は支払わなくて済むし、社会保険料はかからないし、
契約の解消も簡単にできるし・・・、いいこと尽くめのような気もしますが、
そんなことはありません。

何事もデメリットもあれば、メリットもあります。

そもそも雇用契約の本質は
労働力を提供する代わりに、労働の対価としての賃金をもらうというものです。

労働力を提供する訳ですから、その労働力をどのように活用するかという点については、
会社側に相当広い裁量権が渡されています。

経理で働いていた人を営業に回すこともできますし、
平社員として働いていた人を管理職にすることもできます。
「ついでにこの仕事もやっておいて。」と業務範囲を広げることもできます。
原則として出向、転勤等にも幅広い裁量権が会社に与えられています。

何時から何時まで、どこそこで働いてくれ、という指示もできますし、
会社が指定する作業手順を遵守してくれ、という指示も可能です。

これらを請負契約や委任契約の枠組みでやろうとすると、
相当無理が生じますし、無理どころか違法行為となる可能性も秘めています。

残業代の節約や社会保険料の節約も会社に取っては切実な問題ですが、
形式的には委任や請負契約、実態は雇用契約とすると、
トラブルになったときに雇用契約にひもづいている
様々な法律に違反するリスクを抱えてしまいます。

やはり、王道としてはそもそもどういう働き方、
どういう関係性を相手と求めているのかという軸をしっかり確立した上で、
その軸にふさわしい形式を整えていくということになろうかと存じます。

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生命保険の営業スタッフは雇用契約?委任契約?

生命保険会社で働く営業の方に伺うと、
営業成績によって、報酬のアップダウンが相当激しいそうです。

成果を出している営業スタッフ(保険外務員)は、年収が億単位。
一方、成果を出せない営業スタッフは、月収がなんと数万円程度とか...。
(必然的に辞めていくことになります。)
雇用契約の場合、従業員には「最低賃金法」が適用されます。
数万円程度では、最低賃金法に抵触してしまいます。

ところが、そのあたりはうまくできていまして、
下記の要件を満たす場合は、原則として雇用契約ではなく、
委任契約とすることになっています。
(昭和23年1月9日 基発13号より)

1 所属会社との契約を委任契約にすること(雇用契約を締結しない)
2 保険外務員に対して、成績に応じて受任事務の処理経費や報酬を
  受け取ることができるようにすること
3 保険外務員の名称を「職員」とする等、雇用契約を想起させるような名称にしないこと
4 所属会社は保険外務員の労働の時間および場所などを制限しないこと
  ただし、委任契約によって募集地域を委任することはOK
5 上記4点を満たしても、実質上労働関係があるとみなされる場合は、
  法の適用があるので注意すること

実際、P社やS社の方に伺ってみると、
基本経費は本人負担だそうで、移動にかかる交通費はもちろん、
名刺、営業用のパンフレットは会社から購入するそうです。
(雇用契約であれば、会社が負担すべきものです。)

また、所得税については一人ひとりが個人事業主として取り扱い、
会社が年末調整をしてくれることもありません。
個人で確定申告をするそうです。

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