業務上ケガや病気をした社員が職場復帰したその初日に、
「あなたを30日後に解雇します。」と解雇の予告をすることはできるでしょうか?
結論から申し上げると、問題ありません。
労働基準法第19条において、次の定めがあります。
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使用者は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり
療養のために休業する期間及びその後三十日間
並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって
休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。
(後略)
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これが「解雇制限」と言われているものです。
この条文により、業務上のケガや病気の療養のために
休業中と、職場復帰後30日間は
原則として、解雇が禁止されています。
ここでのポイントは「解雇」は禁止されていますが、
「解雇の予告」までは禁止されていないということです。
また、業務中にクギを踏んでケガをして、
労災認定を受け休業療養中の労働者に対して、
就業規則違反を理由に懲戒解雇の意思表示を行った事件があります。
(昭和31年9月13日福岡地裁小倉支部判決 小倉炭鉱事件)
裁判官は次のように判示しています。
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労働基準法第19条は同条の規定する条件の下にある
要保護労働者のために
特にその労働者の地位を一定の期間内
確保するのが目的であるから、
解雇制限期間内と言えども
解雇制限期間の満了を条件とし
あるいは解雇制限期間が確定している場合は
その確定した期間を期限として、
解雇の事由に応じそれぞれの要件を充たして
あらかじめ解雇する旨の意思表示をなす事は許される。
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なお、例えば職場復帰日が8月1日の場合、
初日不算入の原則を踏襲した30日後となりますので、
最短の解雇可能日は8月31日となります。
最後に、解雇予告期間中に、またも業務上ケガや病気をした等、
解雇制限に該当する事由が発生した場合は、
その事由が消滅するまでの間、解雇予告の効力が停止します。
(昭和26年6月25日 基収第2609号)
併せてご注意ください。
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