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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

前倒し付与した年次有給休暇はいつまで有効か?

労働基準法上では最初の年次有給休暇は
入社半年後に10日付与すればよいとされているところ、
一部前倒し、例えば、入社日に3日、
入社半年後に7日付与する会社があります。

この場合、入社日に付与した3日はいつまで有効なのでしょうか?

結論から申し上げると、付与された日から2年間有効です。

中には、入社半年後を起算日にして
2年後(3日付与された日から2年半後)
なのではないかと考える方もいらっしゃるようですが、
そうではございませんので、ご注意ください。

なお、このように10日間の年次有給休暇の一部を
前倒しして付与することを「分割付与」と言います。

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アルバイト就業規則を作成。意見を聴取する「労働者」は 誰にすればよいか?

全従業員のうち30%がアルバイトで構成されている会社が
アルバイト用の就業規則を作成することとなりました。
この場合、就業規則を作成・変更する際に意見を聴取する「労働者」は
誰にすればよいのでしょうか?

結論から申し上げると、全従業員の代表者です。
(アルバイトの代表者ではないということです。)

ここでいう全従業員の代表者については、
労働基準法第90条に詳しく記載されています。

――――――――――――――――――――――――――
使用者は、就業規則の作成または変更について、
当該事業場に、労働者の過半数で組織する
労働組合がある場合においてはその労働組合、
労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては
労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
――――――――――――――――――――――――――

物理的には「正社員用の就業規則」と「アルバイト用の就業規則」の
2冊に分かれていたとしても、
労働基準法上は、その2冊を合わせたものが
「当該事業場の就業規則」という取り扱いになります。

したがって、対象者がアルバイトだから
アルバイトの代表者から意見を聴取するという考えではなく、
あくまで就業規則の意見を聴取するのは
「全従業員の代表者」となります。

逆に言えば、「全従業員の代表者」は
正社員の代表、あるいは組合員の代表というよりも、
全従業員の代表であるという視点に立って、
意見を述べることが期待されています。

もっとも、アルバイトの代表者にも意見を聞くことは、
労務管理上望ましいことは言うまでもありません。

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特定の月に限り給与の支払日を遅らせることはできるか?

毎月25日払いをしている会社があるとします。
資金繰りの関係で1月と6月に限り、月末払いにしたい場合は、
事前に従業員から同意を得ておけば問題ないでしょうか?

結論から申し上げると、例え従業員の同意を得たとしても、
あらかじめ定められた賃金支払日を
25日以外に変更することはできません。

賃金支払日を労使間で自由に決めることはできますが、
この場合であっても、毎月払いの原則や一定期日払いの原則
(労働基準法第24条第2項)に反することはできないためです。

次の判例が参考になります。

「たとえ各労働者が賃金の不払いを承諾していたとしても、
 賃金の支払いは労働条件の中でも重要な条件であって、
 使用者に対し労働者を保護するために
 特に賃金支払い確保の目的から
 労働基準法第24条が設けられたのであるから、
 同条第1項但書及び第2項但書の場合の外、
 所定の支払方法を変更することは
 許されないものと解するを相当」
 (昭和25年2月4日 大阪高裁判決 扶桑商運事件)

つまり、従業人の同意の有無に関係なく、
特定の月の給与支払日を遅らせることは違法なのです。

それでは、いっそのこと毎月の賃金支払を
25日から月末に変えるということではいかがでしょうか。

これについては労働条件の変更となりますが、
毎月払いの原則に反しない限り就業規則によって
自由に定めたり変更したりすることができます。
事前に労働基準法第90条による手続きに従って、
就業規則を変更する限り、
支払日が変更されても違法とはなりません。

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口頭による退職願いの効力はあるか?

ある従業員が上司から叱責を受けたところ、
「それなら私は会社を辞めます!」と発言し、
そのまま帰宅し、会社に出勤しなくなりました。

その後、本人に連絡を取って確認したところ、
「会社は退職するが、退職願は提出しない。」と主張。

一方、就業規則には、退職に当たって
「退職の事由を記載した退職願を提出しなければならない。」
という条文があります。

この場合、会社としては退職扱いとしてよいのでしょうか?

結論から申し上げると、本人が会社を辞めたいと
明確に意思表示している場合には、
退職として処理しても構いません。

退職という判断は従業員にとって非常に重要な事柄です。
これを受けて、上記の就業規則の条文は
退職願は書面によるべきであり、
口頭による退職願は原則として認めないという趣旨と思われます。

「従業員が退職しようとするときは、
 事由を詳細に記した退職願を提出し、
 協会の承認を受けなければならない」
という就業規則の規定について、
裁判所が次のように判示しています。

「(この規定は)従業員が退職するに際し、
 その時期、事由を明確にして、
 使用者に善後措置を講じさせて
 企業運営上、無用の混乱を避けるとともに、
 他方、従業員が退職という雇用関係上
 最も重大な意思表示をするに際しては、
 これを慎重に考慮させ、
 その意思表示をする以上はこれに疑義を残さないため、
 退職に際してはその旨を書面に記して提出すべきものとして、
 その意思表示を明確かつ決定的なものとし、
 この雇用関係上、最も重要な法律行為に
 紛糾を生じさせないようにするとともに、
 書面による退職の申し出がない限り、
 退職者として取り扱われないことを
 保障した趣旨であると考えなければならない。」
 (昭和38年9月30日 横浜地裁判決 全日本検数協会事件)
 (就業規則の条文、判決文ともに読みやすいように一部改変)

判決文を読む限り、就業規則に「退職願の提出」が
義務づけられている規定は、
ある意味、従業員を守るためのものだと読み取れます。

ただ、その従業員が退職願を出さないからと言って、
退職を認めないというのも不合理な話ですので、
本人の退職意思が明確なのであれば、
口頭による退職の意思表示でもよいとする結論です。

なお、実務上、私どもが心配するのは、次の点です。

 ★今は『退職』と言っているけれど、
   後日いきなり『辞めさせられた。不当解雇だ!』
   等と言ってこないか?

言った・言わないの世界は極力避けた方が無難です。
状況にもよりますが、極力退職願を入手して、
本人の意思を客観的に証明できるようにした方が
無難であることは間違いありません。

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欠勤を事後、年次有給休暇として振り替えることはできるか?

急な病気で会社を休んだ従業員から
「先日の休んだ分、有給休暇ってことにしてもらえますか?」
と言われた場合、会社として認めなくてはならないのでしょうか?

法的には認める義務はありません。

年次有給休暇は事前請求が原則です。
事後請求を認めてしまったら、
使用者側で「時季変更権」を行使する余地がなくなってしまいます。

ただし、使用者が、従業員からの事後の申し出を認める分には構いません。
(従業員に有利な話なので)

事後振替を認める場合は、
就業規則などで事後振替ができる旨を定めておくとよいでしょう。

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定年後再雇用された人の年次有給休暇の取扱いは?

60歳で定年を迎えた人が継続雇用制度により再雇用されました。
通常、退職時に消化し切れなかった有給休暇の権利は消滅しますが、
再雇用の場合はどのように取り扱えばよいのでしょうか?

結論を申し上げると、定年なくそのまま継続して勤務した人と
同じように取り扱います。

具体的には次の通りです。

★ 定年時に未消化であった日数は再雇用後にも引き継がれます。
★ 定年退職・再雇用といったん契約がリセットされたとしても、
   「継続勤務」の要件を満たします。
★ 付与時には定年前からの勤務年数によって加算された日数を付与します。

一般に、退職時に未消化の年次有給休暇の権利は消滅しますが、
それは、雇用関係が存在しなくなる以上、
年次有給休暇を取るということができなくなるからです。

再雇用の場合は、契約の内容
(例:月給制から時給制へ等)は変わることが多いですが、
雇用関係そのものは消滅するわけではありません。

雇用関係が存続するわけですから、
定年時に未消化の有給休暇を
再雇用後に取得することができるわけです。

したがって、定年前の未消化分の
有給休暇の日数は引き継がれます。

次に、年次有給休暇の付与要件として
下記のものがあります。

「1年間(初年度は6ヶ月間)継続勤務し、
 全労働日の8割以上出勤した労働者」
(労働基準法第39条)

定年を迎え再雇用されるということが、
継続勤務として考えられるかどうかがポイントです。

こちらも前述の通り、雇用関係そのものは
引き継がれておりますので、
継続勤務していると考えます。

また、雇用関係そのものは引き継がれている観点から、
再雇用後の年次有給休暇の付与日数は
定年前の勤続期間も加えた付与日数を付与しなければなりません。

結局、定年を迎えずに引き続き勤務している人と
同一の処理をするということになります。

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行方不明の社員をどうする? 退職 or 解雇?

従業員がある日突然出社しなくなり、行方が分からなくなりました。
この場合、会社としてどのような対応が考えられるでしょうか。

1 退職扱い

就業規則の退職事由に、
「行方不明となり、その期間が○日を経過したとき」
等と記載されている場合、
その期間を超えれば当然に退職となります。

この場合は、本人の退職の意思表示も、
会社からの通知も必要ありません。

後にご紹介する解雇の場合よりも
手続きが簡単で、おススメです。

なお、「○日」が短すぎるとトラブルの元になりかねません。
具体的に「○日以上とすること」等の通達はありませんが、
厚生労働省監修の書籍による事例ですと、
「2ヶ月」という例が表示されています。
また、懲戒解雇となる無断欠勤日数の基準を
14日とする通達もありますし(後述)、
解雇予告をする場合は「30日前」という基準もあります。

これらを参考にしていただき、
妥当な日数を設定ください。

2 懲戒解雇扱い

懲戒解雇の事由に
「無届欠勤が○日以上に及んだとき」等と記載されている場合、
この要件を満たす期間、行方不明であれば、
懲戒解雇の要件を満たすことになります。

従業員の責に基づく解雇の場合は、
解雇の予告をしなくても構いません。

また、日数の設定については次の通達が参考になります。

----------------------------------------------------------
原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、
出勤の督促に応じない場合は
労働者の責に帰すべき事由となる。
(昭和23年11月11日基発第1637号、
 昭和31年3月1日基発第111号)
----------------------------------------------------------

出勤督促をしようと思ってもできない行方不明の場合は、
2週間以上無断欠勤しているというだけで十分かと存じます。

なお、この場合は、労働基準監督署長から
解雇予告手当の除外認定を受けることで、
解雇予告手当の支払いをしなくて済むようになります。

なお、面倒なのはここからです。

解雇をする場合、
解雇の意思表示が本人に届かないと、
解雇の効力が生じません。

そこで、公示送達(民法第97条、民事訴訟法第110~113条)
という手段を用います。

公示送達は、従業員の住所地を管轄する
簡易裁判所に申し立てをし、
裁判所の掲示場に掲示することによって行います。

掲示場に掲示を始めた日から2週間経過すると、
公示送達の効力が発生し、
従業員に解雇の意思表示が届いたとみなします。

公示送達、面倒ですよね?
となると、退職という形を取れるよう、
就業規則を見直しておく方がよいかと存じます。

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半日の有給を取得した日の時間外労働の取扱いは?

 午前中、半日単位の有給休暇を取得した後、
13時に出勤した人がいるとします。
終業時刻の18時を超えて仕事をした場合、
割増賃金を支払う義務はあるのでしょうか。

結論から言えば、実際に働いた時間が8時間を超えていない限り、
割増賃金を支払う義務はありません。

ただ、18時以降の勤務について、
何も支払わなくてよいということではありません。

1.25倍などの割増率をかける前の
時間単価分(1.00倍)の金額については
支払う必要があります。

また、実労働時間が1日8時間、
1週40時間の法定労働時間を超えた場合は、
その超えた時間について、割増賃金の支払い義務が発生します。

次の通達が参考になるかと存じます。

――――――――――――――――――――――――――
法第32条または第40条に定める労働時間は
実労働時間をいうものであり、
時間外労働について法第36条第1項に基づく協定
及び法第37条に基づく割増賃金の支払いを要するのは、
右の実労働時間を超えて労働させる場合に限るものである。

したがって、例えば労働者が遅刻をした場合
その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合には、
1日の実労働時間を通算して
法第32条または第40条に定める労働時間を超えないときは、
法第36条第1項に基づく協定
及び法第37条に基づく割増賃金支払いの必要はない。
(昭和29年12月1日基収第6143号、
 前掲基発第150号・婦発第47号、
 平成11年3月31日基発第168号)
――――――――――――――――――――――――――

上記の通達は遅刻について言及していますが、
法定労働時間を超えない原因が
欠勤や年次有給休暇であっても、
実際に労働に従事した時間が8時間を超えない限り、
割増賃金の支払い義務は生じません。

なお、就業規則で、
「18時以降の勤務については割増賃金を支払う」
等と記載されている場合は、
法を上回る措置を就業規則で定めていますので、
就業規則によることとなります。
ご注意ください。

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給与明細書を書面からメールに切り替えることはできるか?

給与明細書、大半の企業では「紙」で 渡していらっしゃるかと存じますが、
給与明細書をPDFファイルにしてデータで送ることはできるのでしょうか?

結論から申し上げると、特に問題ありません。

次のような通達が出ております。
―――――――――――――――――――――――――――――
使用者は、口座振込などの対象となっている個々の労働者に対し、
所定の賃金支払い日に、次に掲げる金額等を記載した
賃金の支払いに関する計算書を交付すること。

1 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
2 源泉徴収税額、労働者が負担すべき社会保険料額等
  賃金から控除した金額がある場合には、事項ごとにその金額
3 口座振込等を行った金額
(平成10年9月10日基発530号、平成13年2月2日基発54号、
 平成19年9月30日基発0930001号)
―――――――――――――――――――――――――――――

賃金の計算書(=給与明細書)については、
「書面による交付」までは求めていないことから、
上記の3点を満たしている計算書であれば、
データで渡しても構わないということになります。

もちろん、PDFでなく、メール本文に記載しても構いません。
(個別に入力するのは面倒なので、おススメはしませんが...)

なお、賃金計算書は従業員の個人情報に該当します。
送信時等のセキュリティー、誤送信などには十分お気をつけください。

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夜勤のアルバイトが有給休暇を取得した場合、賃金に深夜割増を加える義務があるか?

深夜勤務のアルバイトが有給休暇を取ることになりました。
有給取得日に支払う賃金については、
深夜割増賃金(原則22時~翌朝5時)を加算する必要はあるのでしょうか?

1 有給取得日は実態として深夜に働くわけではない。
  したがって、深夜割増はしなくてよい。

2 普段深夜割増してもらっているんだから、
  有給休暇を取得する際も
  深夜割増賃金を加算しなければならない。

答えは2。

有給休暇を取得した場合の賃金額は
次の3つの中から選ぶようになっています。

1 通常支払われる賃金
2 平均賃金
3 健康保険の標準報酬日額

ほとんどの会社では「1」を選択されています。

深夜勤務の方にとって通常支払われる賃金の中には、
深夜割増分も「通常支払われて」います。

従って、上記の設問についても
「通常支払う賃金を支払う」ことになっている会社であれば、
通常のシフトに入って入れば支払われていたであろう賃金を
支払うことになります。

なお、交代制勤務ということで、
ある日は朝勤務、別の日は昼勤務、さらに別の日は深夜勤務
といった具合に、日によって勤務時間が異なるケースの場合は、
有給休暇取得日がどのシフトに入っているかを見て、
支払う額を変えることになります。

朝勤務や昼勤務でしたら、
深夜(22時~翌朝5時)にかぶっていないと思いますので、
通常の時給を支払えばよいことになります。

深夜(22時~翌朝5時)にかぶっている深夜勤務の場合は、
深夜割増もつけて支払うことになります。 

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給与の振込先を一人1口座に限定できるか?

中小・ベンチャー企業の大半では、
従業員が指定する1ヶ所の振込先に給与を振り込んでいます。

ところが、従業員の中には
給与のうち10万円はA口座に振り込み、
残額をB口座に振り込んでほしいなどと希望する人もいます。

会社としては、こうした要望に応えていくことは、
振込手数料もかかりますし、労力もかかるので、
できれば一人1口座に限定したいと考えるケースが多いのではないでしょうか?

さて、このように、給与の振込先を一人1口座に限定することは
法的に問題ないのでしょうか。

結論から申し上げると、原則として問題はありません。

平成10年9月10日基発530号により、
次の通達が出ています。

―――――――――――――――――――――
取扱金融機関及び取扱証券会社は、
金融機関または証券会社の所在状況等からして
1行、1社に限定せず、複数とする等
労働者の便宜に十分配慮して定めること
―――――――――――――――――――――

これは、一人の従業員に対して、
複数の口座に分けて振り込むことを配慮するという意味ではなく、
会社が振込先を「必ず○○銀行の口座に振り込む」等と定めるのではなく、
従業員にとって複数の金融機関等の中から
振込先銀行を選べるように配慮してください、という意味です。

この程度の便宜を図ることは求められていますが、
複数の口座に分けて振り込めるようにしなさい、
とまでは求められておりません。

従って、給与の振込先を一人1口座に限定することは
特に問題ないという結論になります。

なお、賃金の口座振込については、
次の要件をすべて満たすことが求められています。

1 労働者の同意を得ること
2 労働者が指定する本人名義の口座に振り込むこと
  (労働基準法施行規則第7条の2)

これらの要件に加え、
振り込まれた賃金の全額が
所定支払日に払い出せるようにしてください、等と
行政指導をしています。

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休日出勤に対する代休の取得が翌月となった場合の給与計算は?

ある会社の給与は月末締めです。月の途中に休日出勤を行い、
翌月に代休を取得することになっています。

この場合、賃金の支払いについてはどのように考えればよいでしょうか?

仮のこの休日が法定休日である場合、
休日出勤をしたのですから、1.35倍の賃金を支払わなければなりません。

ただし、従業員の意思に基づいて代休を付与したり、
代休の付与が制度として確立している場合は、
代休日の賃金(1.00倍)を1.35から差し引き、
結果として残る0.35部分の支払いをすればよいとなっています。

ただし、代休の取得が翌月となった場合は、
どのように考えればよいのでしょうか。

Aパターン 割増賃金を支払わない

まず考えられるのは、0.35部分を支払わないという選択です。
実態としては一番多いのですが、これは明らかに労働基準法違反となります。
ということで、おススメはできません。

Bパターン 0.35のみ支払う

0.35のみ支払うという選択は、
適法な取り扱いを目指している会社の中ではよくあるパターンですが、
厳密に言うと、これも法違反です。
労働基準法には「全額払いの法則」が掲げられており、
その賃金計算期間内に働いた分、
原則として全額を支払わなければならないからです。

とういことで、完ぺきに合法を目指すなら、次のCパターンとなります。

Cパターン いったん1.35倍全額を支払い、
        代休取得月に1.00分を控除する

いったん1.35倍を支払い、代休を取得した月に
1.00分を控除するという選択です。
これであれば、全額払いの原則に抵触しません。
代休を取得した月に1.00分を控除するというのも、
ノーワークノーペイの原則からして妥当となります。

ただ、正直、このパターンで実務を運用している会社って、
大企業ならともかく、中小・ベンチャー企業では
ほとんど見たことがありません・・・。

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有給休暇を前倒し付与した場合、翌年度の付与はどうなるか?

4月1日に入社の社員がいます。
有給休暇の付与日や付与日数について、労働基準法通りに運用した場合、
入社日の6か月経過日である10月1日に10日の有給休暇が付与されます。

ところでこちらの会社では8月に夏季休暇を予定しています。

8月第2週の月曜日から水曜日までの3日間が夏季休暇。
さらに、木曜日と金曜日は有給休暇の計画的付与により、お休み。
土日の休みを挟んで連続9日間の夏休みを取る会社なのです。

そこで、10月1日に付与予定である10日のうち、
2日間を前倒しして付与することで、対応をしようとする場合、
いつの時点で何日の有給休暇を付与すればよいのでしょうか?

この事例のように、有給休暇の一部を前倒しして付与することを
「分割付与」と言います。

8月に2日間分割付与するのですから、
10月1日は残りの8日間を付与することになります。

これで話がおしまいであれば簡単なんですが、
この分割付与は翌年度以降にも影響を与えます。

仮に分割付与した日が8月15日だとすると、
翌年度以降は8月15日が有休付与の基準日となるのです。

なお、分割付与を実施する場合は、
次の要件を満たす必要があります。

1 年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定において、
  短縮された期間は全期間出勤したものとみなすこと。
2 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、
  初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ
  又はそれ以上の期間を法定の基準日より繰り上げること

これらを踏まえ、翌年度の基準日となる8月15日には
11日の有給休暇を付与することになります。

<翌年度の8月15日に2日間付与、
  10月1日に9日間付与という運用について>

複数の労働基準監督署、都道府県労働局などに確認を取りましたが、
この運用については否定的な見解が多数を占めています。

否定的な見解の考え方は次の通りです。

1 分割付与は初年度に限り認められたものであり、
  2年目以降に分割付与という概念はない。
2 あくまで基準日は最初に有給休暇を付与した日。
  初年度に何日付与したかということには関係なく、
  2年目の基準日には法で定めている有給休暇日数を
  丸ごと付与しなければならない。

中には上記の運用も望ましくはないが法違反ではない、
という見解を示す人もいました。
また、インターネットで検索すると、
平成6年5月31日付基発330号を根拠に挙げて
上記の運用で構わないとする見解もあります。

白黒がバシッとついているわけではないようですが、
「君子危うきに近寄らず」で、
2年目以降も分割して付与する考え方は避けた方が無難かと存じます。

<実務上の対応方法>

さて、このような運用が待っているとなると、
正直、有給休暇の管理が煩雑になるかと存じます。

そこで、実務上は次のような対応をしているケースが多いです。

1 上記の例で言う夏休みの「2日間」は
  労働基準法に定めている有給休暇の前倒しではなく、
  会社独自の有給休暇として付与する。
  →労基法上の有給休暇はあくまで10月1日に10日付与。

2 斉一的付与を活用する。
  (全員一律の有休付与日を設けます。
   ただし、付与日の設定に留意して、
   法の要件を下回らないようご注意ください。)

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いきなり本採用したが3日後に即日解雇。解雇予告手当の支払い義務はあるか?

「この人の働きぶりはよく分かっているから」と、
試用期間を設けることなく、
Aさんをいきなり本採用したB社。

入社後、Aさんの仕事ぶりを見てみると、意外や意外。
期待していたほどの仕事ぶりが全く発揮されていません。

B社としては「こりゃダメだ」と、
Aさんの入社3日後に即日解雇を言い渡しました。

するとAさんは「即日解雇は分かりましたので、
解雇予告手当を支払ってください。」と主張。

これに対しA社としては、次のように考えています。

「労働基準法第21条にある、『解雇予告の適用除外』で定められている
 『試みの使用期間』の期間内に該当し、
 入社後14日以内の解雇であれば、
 解雇予告手当の支払い義務はないはずだ」

さて、A社は解雇予告手当を支払う義務はあるのでしょうか?
なお、A社は就業規則等の規程類は作成しておりません。

結論から申し上げると、支払い義務が生じています。

試みの使用期間は、労働契約上の契約事項の一つです。
したがって、就業規則や雇用契約において
明確に定められている必要があります。

これらを定めずに直ちに本採用をした場合は、
労働基準法第21条の適用はなく、
採用後14日以内であっても解雇予告制度の適用があります。

試用期間を設けていない会社の社長さん、十分お気をつけください!

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女性労働基準規則(女性則)の一部を改正する省令が公布されました

厚生労働省は平成24年4月10日、母性保護のために、
生殖機能などに有害な化学物質が発散する場所での
女性労働者の就業を禁止する
「女性労働基準規則(女性則)の一部を改正する省令」を公布しました。
改正女性則は平成24年10月1日から施行となります。

改正女性則では、妊娠や出産・授乳機能に影響のある
25の化学物質(従来の規制対象は9物質)を規制対象とし、
これらを扱う作業場のうち、以下の業務については、
妊娠の有無や年齢などにかかわらず
全ての女性労働者の就業を禁止します。

女性労働者の就業を禁止する業務

★ 労働安全衛生法令に基づく作業環境測定を行い、
   「第3管理区分」(規制対象となる化学物質の
   空気中の平均濃度が規制値を超える状態)となった
   屋内作業場での業務
★ タンク内、船倉内での業務など、規制対象となる
   化学物質の蒸気や粉じんの発散が著しく、
   呼吸用保護具の着用が義務づけられている業務

女性労働基準規則の対象物質(25物質)

1 特定化学物質障害予防規則の適用を受けているもの

 1 塩素化ビフェニル(PCB)
 2 アクリルアミド
 3 エチレンイミン
 4 エチレンオキシド
 5 カドミウム化合物
 6 クロム酸塩
 7 五酸化バナジウム
 8 水銀およびその無機化合物(硫化水銀を除く)
 9 塩化ニッケル(II)(粉状のものに限る)
10 砒素化合物(アルシンと砒化ガリウムを除く)
11 ベータ-プロピオラクトン
12 ペンタクロルフェノール(PCP)およびそのナトリウム塩
13 マンガン

(注)カドミウム、クロム、バナジウム、ニッケル、
   砒素の金属単体、マンガン化合物は対象とならない。

2 鉛中毒予防規則の適用を受けているもの

14 鉛およびその化合物

3 有機溶剤中毒予防規則の適用を受けているもの

15 エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)
16 エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(セロソルブアセテート)
17 エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)
18 キシレン
19 N, N-ジメチルホルムアミド
20 スチレン
21 テトラクロルエチレン(パークロルエチレン)
22 トリクロルエチレン
23 トルエン
24 二硫化炭素
25 メタノール

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