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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

中学生や高校生をアルバイトとして雇用する際に役立つ資料

 中学生や高校生をアルバイトとして雇用する際の注意点をまとめた、
厚生労働省作成の資料を発見しました。

さすがに国が作成したものだけあって、抜けや漏れがありません。

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高校生(年少者)を雇用する際のポイントは?

労働基準法では、満20歳未満の者を以下のように区分しています。

  • 満20歳未満の者・・・未成年者
  • 満18歳未満の者・・・年少者
  • 満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの者・・・児童

このうち「児童」については、原則として労働させてはいけません。
(例外はありますが、ここでは省略します。)

多くの高校生が該当する「年少者」についても、一定の規制がかけられています。
以下、年少者を雇用する場合の注意点をご紹介します。

1 親権者等の同意を得ること

高校生を雇い入れる際において、
会社と本人との間で雇用契約を締結することになりますが、
本人は未成年であるため、併せて親権者等の同意を得てください。
(親権者等の同意がないと即、法律違反というわけではありませんが、
 雇用契約が確定しないリスクを背負うことになります。)

2 年齢を確認すること、年齢を確認できる書類を事業所に備え付けておくこと

雇用する前に年齢を確認してください。
また、会社には年齢を確認できる書類(たとえば住民票記載事項証明書)を
備え付けることが法令で義務付けられています。

3 労働時間に関する規制を守ること

実際に高校生に仕事をさせる場合、労働時間に関する規制を確認し、
その範囲内で勤務させてください。

具体的には次の通りです。

★ 1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて勤務させることはできません。
★ 変形労働時間制やフレックスタイム制を適用することは認められていません。
★ 残業や休日出勤は原則として禁止されています。
  ただし、以下のいずれかに該当する場合は、
  例外として法定労働時間を超えて勤務させることができます。
  1 1週間の労働時間が40時間以内であり、
    1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮すれば、
    同一週内の日について労働時間を10時間まで延長可能
  2 1日8時間、1週間48時間以内であれば、
    1ヵ月または1年単位の変形労働時間制を適用可能
★ 深夜(午後10時から午前5時まで)における勤務についても原則として禁止。
  ただし、交替制で勤務する満16歳以上の男性等、一部に限り認められています。

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生後間もなく子供がなくなった女性は時間外労働や休日出勤を断れるか?

会社は、妊産婦が請求した場合は、時間外労働、休日労働、
深夜労働をさせていはいけない旨が、
労働基準法第66条に記載されています。

仮に、出生後数か月後にお子さんを亡くした女性がいるとします。

彼女は、今は子供を育てる身ではなくなりましたが、そんな彼女から
時間外労働等ををしたくないと請求すれば、
会社は時間外労働等をさせてはいけないのでしょうか?

答えは、「時間外労働をさせてはいけません。」となります。

妊産婦とは、妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性を言います。

この条文の趣旨は、育児にあるのではなく、
子供を妊娠したり、出産したりした女性の健康を確保するためにあります。

出産して間もない女性が体に無理をかけると、健康を害してしまいがちであることから、
現実にお子さんがいるとかいないとか、育児をする必要があるとかないとかに関わらず、
ご本人からの請求があれば、時間外労働等をさせてはいけません。

育児介護休業法には、これと似たような条文があります。

会社は、一定の要件を満たす従業員で、かつ、3歳に満たない子を養育する従業員が、
その子を養育するために請求した場合は、
所定労働時間を超えて労働させてはいけません。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでないという趣旨の条文です。
(育児介護休業法第16条の8)

育児・介護休業等規程がある会社であれば、
この条文を元にして、「所定外労働の制限」について記載があるはずです。

こちらの法律は、子を産んだ女性ご本人にスポットライトが当てられているのではなく、
育てるべき子がいる従業員にスポットライトが当てられています。

したがって、労働基準法よりも制約があります。

1 労使協定を締結することにより、一定の従業員を対象者から外すことができる。
2 「3歳未満の子を養育する」従業員でなければ対象となれない。
3 事業の正常な運営を妨げる時は、会社は従業員からの請求を退けることができる。

その代わり、労働基準法と異なり、
男性でも対象になりますし、期間も産後1年だけではなく、約3年間となっています。

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産前産後休暇の基本的なこととは?

産前産後休暇について、労働基準法では次のような定めがあります。

<産前休暇>

使用者は6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、
その女性を働かせてはいけません。
(なお、双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は14週間になります)

⇒あくまで女性が請求した場合。女性が請求しなければ、出産当日まで働くこともOK。
⇒出産日当日は産前休暇の最終日として取り扱います。
 したがって、出産予定日よりも出産日が遅れた場合、
 結果として産前休暇が6週間(14週間)を超えることがあります。

<産後休暇>

使用者は、産後8週間を経過しない女性を働かせてはいけません。
ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、
その女性について医師が支障がないと認めた業務につかせることは差し支えありません。

⇒産前休暇と違い、産後6週間は本人が働きたいといっても働かせてはいけません。
 (母体保護のため)
⇒産後6週間を経過した場合は、本人の請求と医師の許可があれば働けますが、
 実務上、このような方を見たことがありません...。

<妊娠中の女性と業務内容>

使用者は、妊娠中の女性が請求した場合は、
他の軽易な業務に転換させなければいけません。

⇒ただし、「他の軽易な業務」がない場合は、
 その女性のために新しく軽易な業務を作ってまで対応する義務はありません。

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労働基準法上の管理監督者とはどんな人?

労働基準法上の管理監督者に該当する場合は、
労働時間や休憩、休日に関する労働基準法上の定めが適用されません。
したがって、残業手当や休日出勤手当を支払う義務を免れます。
(ただし、深夜に関する割増賃金は支払い義務あり)

それでは、労働基準法上の管理監督者とはどういう人たちを言うのでしょうか。

これについて、厚生労働省が見解を公表していますので、ご紹介します。
なお、<こんな場合に注意!>に記載している事項は
多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の判断基準です。
マクドナルドの地裁の判決を受け、厚生労働省が作成したものから
主要な部分を抜粋し、読みやすいように改変しました。

==労働基準法上の管理監督者となる3つの要件==

1 労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にあり、
  労働時間や休憩、休日等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない
  重要な職務内容、責任、権限を持っていること

<こんな場合に注意!>

★ 店舗に所属するアルバイト・パート等の
  採用に関する責任と権限が実質的にない場合。
★ 解雇店舗に所属するアルバイト・パート等の
  解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、
  実質的にもこれに関与しない場合。 
★ 部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、
  実質的にもこれに関与しない場合。
  (人事考課の制度がある企業のみ)
★ 労働時間の管理店舗におけるシフト表の作成
  又は残業命令を行う責任と権限が実質的にない場合。 

2 現実の勤務態様が、労働時間等の規制になじまないものであること

<こんな場合に注意!>

★ 遅刻、早退等により減給の制裁、
  人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合。
★ 実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合。
★ 管理監督者としての職務も行うが、
  会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど
  労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合。 

3 賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること

<こんな場合に注意!>

★ 基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、
  割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、
  従業員の保護に欠けるおそれがあると認められる場合。 
★ 一年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の
  特別の事情がないにもかかわらず、
  他店舗を含めたその企業の非管理職の賃金総額と同程度以下である場合。
★ 実態として長時間労働を余儀なくされた結果、
  時間単価に換算した賃金額において、
  店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合。

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退職直前の有休取得中に転職していることが発覚。有休を取り消せるか?

退職直前に、たまっていた有給休暇を取得している最中に、
他社に転職し働き始めている人がいることが発覚しました。

他社に就労を始めている人に対し、有給休暇を与え続けるのも釈然とせず、
有給休暇の使用を認めたくない、という会社からのご相談があったとします。

これは法的には問題ないでしょうか?

結論から申し上げると、有給休暇の使用は認めざるを得ません。

労働基準法に定める有給休暇制度の趣旨は、
休日の他に毎年一定日数の有給休暇を与えることで、
従業員の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図ることにあるのですが、
法律上は、有給休暇をどのような目的で利用するかについては、
特段の制限を設けておらず、従業員側の自由なのです。

考えられる対抗手段としては、(懲戒)解雇を検討するという方法があります。
就業規則に定めてある、懲戒解雇の事由の中に
 会社の許可なく在籍のまま兼業をした場合」
などという文言があれば、これを根拠に(懲戒)解雇をする道が開けます。

これで、「本日をもってあなたを(懲戒)解雇します。」
とすれば、従業員の有給休暇の消化を続けることができなくなります。

ただ、ここにも2つ問題が。

一つは、「(懲戒)解雇」の有効性です。
解雇をする場合や懲戒処分をする場合は、
労働契約法により下記の2点を満たすことが必要です。

★ 客観的に合理的な理由があること
★ 社会通念上相当であること

これを満たさない場合は、権利の濫用とされてしまいます。

就業規則に書いてあるからと言って、
必ずしも上記の2つの要件を満たすかどうかは別問題です。

従業員側が(懲戒)解雇をすんなりと受け入れてくれればよいのですが、
トラブルになると、正直、面倒を抱えることになることを覚悟しなければなりません。

2つ目の問題。これが意外に重要かもしれませんが、
即日解雇をする場合は、原則として30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。

懲戒解雇の場合は、労働基準監督署に「解雇予告除外認定申請書」を提出して、
「解雇予告手当を支払わずに解雇していいですか?」とお伺いを立てることになりますが、
これが結構ハードルが高く、なかなか認めてもらえません。

例えば、有給休暇は残り10日分で終わるというときに、
30日分の解雇予告手当を支払うとなると、かえって会社の出費が増えることになります。
これでは本末転倒ですね。

ということで、法律の世界の中で何とかしようとしても、
有効な手段が見つけにくいのが実情です。

残りの手段は法律外の手段。
ご本人を呼び出すなどして、話し合いで退職日を早めてもらうよう交渉するくらいでしょうか。

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有給休暇を取得しなかった社員を賞与算定で優遇してもよいか?

多くの経営者にとって有給休暇の取得は残業代と並んで頭を悩ます問題です。

正直、できれば有給休暇なんて取得せずに、毎日会社に来て働いてほしい、
そう願っている経営者って多いのではないでしょうか。

そこで、ある会社で、有給休暇を取得しなかった社員については、
賞与額を上乗せすることにしました。

こうしたことは違法なんでしょうか?

結論から申し上げますと、有給休暇取得者に対する不利益取り扱いの禁止
(労働基準法附則第136条)に抵触することとなり、
裁判となっても民法上の公序良俗違反(民法第90条)となる可能性が濃厚ですので、
このような取り扱いは避けた方がよいです。

例えば、皆勤手当や賞与を支給する際に、
有給休暇を取得して休んだ日を働かなかった日として扱うなど、
有給休暇の取得を抑制することにつながるようなことは禁止されています。

労働基準法附則第136条において、
有給休暇を取得した従業員に対して賃金を減額する等、
不利益な取り扱いをすることが禁止されていることが背景にあります。

行政解釈においても、下記のような通達が出されています。

「賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、
 または欠勤に準じて取り扱うこと、
 その他労働基準法上労働者の権利として認められている
 年次有給休暇の取得を抑制するすべての取扱はしないように」

ただ、実はこの規定については労働基準法上の罰則がついていません。
規程に違反しても、特段咎められない点が弱いところです。

こうした点について、裁判所は民法の公序良俗に違反するとして無効としています。

例えば下記の判例があります。

★ 年次有給休暇を取得して休んだ日があることを理由に、
   皆勤手当等の諸手当の全部または一部を支給しなかったのは
   労働者に対する不利益取り扱いであり、公序良俗違反により無効である。
   (昭和51年3月4日、横浜地裁 大瀬工業事件)

★ 年次有給休暇の取得日を府就労時間に含めて稼働率の計算をし、
   その稼働率が80%以下の者には昇給をさせないといった労働協約の条項は
   労働者に対する不利益取り扱いであり、公序良俗違反により無効である。
   (平成元年12月14日、最高裁第一小法廷 日本シェーリング事件)

こうした点を総合的に考えると、
有給休暇を取得しなかった社員を賞与算定で優遇するということは、
裏を返せば、有給休暇を取得した社員を賞与算定で冷遇するということであり、
有給休暇の不利益取り扱いとなるので、避けた方がよいでしょう。

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当日の朝に申請してきた有給休暇は認められるか?

出勤日の当日の朝になり、いきなり「今日は有給で休ませてほしい」と伝えてきた従業員。

こうした出勤時間直前に申請された有給休暇について、
会社は認めなくてはいけないのでしょうか。

結論から申し上げると、法的には認めなくてはいけない義務はありません。
(現実の運用の話は別問題ですが...。)

まず、有給休暇は暦日単位で1日確保するように求められています。
暦日単位で1日とは、午前0時(夜中の0時)からの24時間を指しています。

出勤時刻直前の申請をした場合、すでに労働日としての1日は始まっており、
一種の事後申請のような状態となっています。

また、会社には業務が煩雑な際には別の日に有給休暇を取得させる
「時季変更権」が認められています。
ただ、この時季変更権を実際に行使するためには、
代替要員の確保や人員配置の変更などの努力をしても、
なお有給休暇を取得させてしまっては
正常な業務の運営ができない場合に限定されています。

いきなり当日の朝に「休ませてほしい」と言われても、
始業開始時刻まであと数分。この数分間で代替要員の確保や人員配置の変更など
できるわけがありません。

つまり、始業時刻直前の有給休暇申請を認めてしまうと、
会社としては時季変更権を有効にする要件を満たすための時間の確保が実質的にできず、
時季変更権という権利を行使できない状況に置かれています。

こうしたことから、当日の有給休暇申請は認めなくて構わないとされています。

なお、法的には認めなくても構わないという結論ですが、
現実の運用は別問題という側面はあります。

当日の体調不良で休みたいと言ってきた社員に対して、
「今言われても有給休暇は認められませんから、欠勤扱いとなりますよ。」とするかどうか。

実際はこうしたことも配慮して、独自の運用ルールを定めることをお勧めします。

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休職期間中の人から有給休暇の請求が来たらどう対応するか?

休職発令により、従来配属されていた所属を離れ、
以後は単に会社に籍があるにとどまり、
会社に対して全く労働の義務が免除されることとなった従業員Aさん。

通常、休職中は会社からのお給料が出なくなります。
(プライベートのケガや病気が原因の休職の場合は、
 健康保険から傷病手当金が支給されます。)

Aさんはお給料がほしくなり、一計を案じました。
「そうだ。有給休暇が溜まっているから、休職期間中に有給休暇を消化すれば、
 その日は100%お給料が出るようになるのではないか?」

そこでAさんは会社に電話をし、「有給休暇として休みたいんですけど。」と伝えました。

会社としてはどのように対応すればよいのでしょうか。

結論から言えば、有給休暇を与える必要はありません。

有給休暇というのは労働の義務がある日について請求するものです。

休職中の期間は労働義務が免除されています。
労働義務がない日について有給休暇を請求する余地はありません。
したがって、このAさんのような人は有給休暇の請求権の行使ができないのです。
(昭和24年12月28日基発1456号、昭和31年2月13日基収489号より)

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休日出勤なのに1.35倍支払わなくてよい場合があるって本当?

休日出勤したから1.35倍の割増賃金が支払われると思っていたAさん。
ところが、給与明細を見ると、1.35倍どころか、
残業代すら払われていません。

これってもしかして未払い残業?

これだけの情報では何とも言えませんが、
少なくとも、休日出勤しているにもかかわらず、
割増賃金が支払われないケースというのは考えられます。

まず、1.35倍の割増賃金が支払われるのは、
休日の中でも、法定休日に出勤した場合です。

法定休日とは「原則的には週1回の休日、例外的に4週4日の休日」を指します。

例えば、土日が休日となっている会社の場合は、
就業規則に「土曜日(日曜日)を法定休日とする」と記載があれば、その日が法定休日です。

ただ、大半の企業には、このような指定はないと思われます。
その週(就業規則に定めがなければ日曜日~土曜日の一週間)で
土曜日出勤し、日曜日は休日として休んだ場合は、
日曜日が法定休日。
日曜日出勤し、土曜日は休日として休んだ場合は、
土曜日が法定休日。
日曜日も土曜日も休日出勤した場合は、
その1週間の最後の休日であった土曜日が法定休日となります。

したがって、法定休日さえ確保できていれば、
日常的な間隔では「休日出勤」でも、労働基準法的には休日出勤ではないのです。
したがって、1.35倍の給与を支払わなくてもよいということになります。

ただし、日常的な意味の休日出勤をした場合、
すでに平日だけで所定労働時間40時間を使い切っている場合は、
休日出勤をした瞬間に40時間オーバーとなり、
1.25倍の残業手当を支払う必要があります。

それでは、残業手当すら支払われないというケースはどういうケースでしょうか。

これはその会社の所定労働時間、または祝日がカギを握っています。

例えば、1日の所定労働時間が6時間の会社があるとします。
月曜日から金曜日までの合計所定労働時間は30時間。
この場合、8時間までなら残業手当を支払わなくて済みます。

なぜなら、1日の法定労働時間である8時間も越えていませんし、
1週の法定労働時間である40時間も越えていないからです。

また、仮にこちらの会社の1日の所定労働時間が8時間であっても、
たまたまその週に祝日があり、その日が休日であったとすれば、
平日4日×8時間=32時間しか働いていませんので、
休日に8時間まで働いていもらっても、残業手当の支払い義務はありません。
1日の法定労働時間である8時間も越えておりませんし、
1週の法定労働時間である40時間も越えていないからです。

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自社の従業員を休日にアルバイトさせることってできますか?

例えば、土日が休みの会社があるとします。
Aという部署が忙しく、人手が足りないので、
Bという部署のメンバーに声をかけて、
希望者には土日に「アルバイト」として働いてもらうことはできるのでしょうか?

1 雇用契約上の問題

雇う側の会社も、雇われる側の従業員も同一であるにもかかわらず、
平日は正社員として雇用契約を結び、
休日はアルバイトとして別個の雇用契約を結ぶというのは
理論的にはありえますが、
実態は一体のものとして取り扱うべきものです。

そうしなければ、どこの会社も休日は「アルバイト」扱いにすることで、
休日出勤が休日出勤でなくなってしまいます。
これでは労働基準法が骨抜きとなってしまい、法の趣旨に反してしまいますので、
認められないわけです。

さらに、労働時間は、事業場を異にする場合においても、
労働時間に関する規定の適用については通算するという定めがあります。
(労基法38条第1項)

したがって、仮に1日の所定労働時間が8時間の会社であれば、
平日5日分で週の法定労働時間40時間となりますので、
土日のどちらかに出勤した時点で1.25倍で計算することになりますし、
その日が法定休日であれば、1.35倍で計算することになります。

2 残業単価

昭和23年11月22日基発第1681号には次のような説明があります。

所定労働時間中に甲作業に従事し、
時間外に乙作業に従事したような場合には、
その時間外労働についての「通常の労働時間又は労働日の賃金」とは、
乙作業について定められている賃金である。

ここから、休日労働での作業に対して
普段の仕事とは別の賃金が割り振られている場合は、
休日労働の作業に見合った賃金を元にした残業単価で計算すればよいということになります。

まとめ

1 雇用契約上は、二つの雇用契約を走らせるのは無理がある。
2 労働時間は平日の業務と通算して計算しなければならず、
  その上で、割増賃金が発生する場合は、割増賃金を支払わなければならない。
3 ただし、残業単価はその作業に見合った賃金が設定されている場合は、
  その賃金を元にして計算して構わない。

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残業手当は支払わないと従業員と約束したら残業手当は支払わなくてもよいか?

ある会社では「残業手当は基本給に含まれているため、
別途の支払いは行わないことを合意する」という労使協定書を締結しています。

何時間残業しようとも、この労使協定書を根拠に残業手当を支払わないということなのですが、
この労使協定書は有効なのでしょうか?

労働基準法37条第1項には次の定めがあります。

使用者が、(中略)労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、
その時間又はその日の労働については、
通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内で
それぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
(後略)

この規定は強行規定です。
この条文を覆すような約束事を従業員と結んでも、法律の方が優先されます。

したがって、このような労使協定を締結したとしても、
この労使協定は無効です。
会社は残業手当を別途支払わなければいけません。

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振替休日をさらに振り替えることはできるか?

休日出勤日の前に、あらかじめ代わりの休日を決めておき、
休日と労働日を振り替えることを「休日の振替」と言います。

これにより、振替により勤務日となった日(本来は休日であった日)に勤務しても、
休日労働とはならなくなる効果が発生します。

さて、この振替休日制度により、本来労働日である日を休日にした場合で、
その休日に出勤を命じざるを得ない事情が生じたとします。
この場合、振替休日を再度振替することはできるのでしょうか?

結論から申し上げますと、法令上は特に問題ありません。

4週4日の休日が確保され、就業規則等の根拠に基づき
事前に振替日を特定明示して行う限り、
特に再度の振替はできないという法令上の規制がないためです。
(ただし、就業規則で再度の振替はできないとする旨の条文がある場合は、
 再度の振替はできない可能性が高くなります。)

ただ、実質的に休日を取ることが先延ばしになっていますので、
好ましいことではないことは言うまでもありません。

なお、休日の振替を行うことで、
振替により勤務した日や、その週の労働時間が法定労働時間を超える時は、
時間外労働の割増賃金の支払い義務が発生します。
ご注意ください。

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遅刻した人が残業した場合の割増賃金は?

ある社員が1時間遅刻して出勤してきました。
この人が1時間残業をした場合、
その1時間について割増賃金を支払う義務はあるのでしょうか?

結論から申し上げますと、割増賃金の支払い義務はありません。

時間外労働に対する割増賃金の支払い義務が発生するのは、
法定の実労働時間を超えて労働させた場合です。

実労働時間というのは、実際に働いた時間のことを言います。

この社員の場合、実労働時間が8時間です。

法定労働時間である1日8時間を超えておりませんので、
割増賃金の支払い義務は原則としてありません。

ただし、就業規則等で「終業時刻を超えて働いた時間に対して割増賃金を支払う」等と
記載している場合、支払い義務が発生することがございます。
気になる方は自社の就業規則の文章をご確認ください。

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過半数代表者を選ぶ際の注意ポイントは?

時間外労働や休日出勤の可能性がある職場の場合は、
時間外労働・休日労働に関する協定(通称、三六協定)を
締結しなければなりません。

このように、会社で定めるルールのうち、
重要なルール(労働条件)については就業規則で定めるだけでは足りず、
経営者側と働く側の間で協定を手活けすることが求められています。

協定の当事者は次の通りです。

<従業員の過半数で組織する労働組合がある場合>
会社と労働組合
<従業員の過半数で組織する労働組合がない場合>
会社と従業員の過半数を代表する者(以下、過半数代表者と言います)

日本の企業の多くは、後者の場合に該当しておりますので、
後者の場合の注意ポイントを採り上げます。

<協定の締結単位>

事業所単位です。
例えば、本社の他、A支店、B支店がある会社があるとします。
どの事業所でも時間外労働をすることが前提であれば、
それぞれの事業所を管轄する労働基準監督署に三六協定届を届け出ることになります。

<過半数代表者の人数>

各事業所で選出します。
例えば、本社の他、A支店、B支店がある会社があるとします。
どの事業所でも時間外労働をすることが前提であれば、
事業所別に過半数代表者を選任することになります。
(この場合ですと、3名選任することになります。)

<過半数代表者の選出手続き 1 >

法に基づく労使協定の締結当事者、
就業規則の作成・変更の際に
会社から意見を聴取される者等を
選出することを明らかにして
投票、挙手、労働者の話し合い、持ち回り決議など、
従業員の過半数がその人を支持していることが
明確になる民主的な手続きを行うことになっています。

<過半数代表者の選出手続き 2 >

過半数代表者を選ぶ側の従業員には、
下記の方も含めます。

1 労働基準法上の管理監督者
2 病欠、出張、休職期間中の者のように
  協定締結当日出勤していない人や
  協定期間中に出勤が全く予想されてない人

<過半数代表者の要件

次の全ての要件を満たす人であることが要件です。

1 労働基準法第41条第2号に規定する
  監督または管理の地位にある人でないこと
  (労働基準法上の管理監督者ではないこと)
2 法に基づく労使協定の締結当事者、就業規則の作成・変更の際に
  会社から意見を聴取される者等を
  選出することを明らかにして実施される
  投票、挙手等の方法による手続きにより選出された人であり、
  会社の意向によって選出された人ではないこと

なお、その事業所には労働基準法上の管理監督者しかおらず、
上記「1」の要件を満たすことができない場合は、
「2」の要件を満たせば問題ありません。
(この場合、労働基準法上の管理監督者の中から選出することになります。)

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