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中野人事法務事務所中野 泰(なかの やすし)

ブログ記事一覧

上司の無視により発病した適応障害が労災と認められなかった事例

ある清掃会社に勤めていた従業員が
ちょっとしたことがきっかけで
上司から無視されるようになりました。

無視された従業員はそれをストレスに感じ、
食欲不振、不眠等の症状が出たため、
病院に行ったところ、「適応障害」と診断されました。

「これは労災だ」と考えた従業員は
労働基準監督署に対して、
業務が原因で精神障害を発病したとして、
労基署に労災関係の請求を行いました。

労基署としては、請求人の精神障害は
業務上の事由によるものとは認められないとして、
労災とは認めませんでした。

これをさらに不服に思った従業員は、
「労基署の判断はおかしい」として、
市区町村単位の労基署の上部組織である、
都道府県単位の労働局の
労働者災害補償保険審査官に対して、
「審査請求」を行いました。

ただ、従業員にとっては残念な結果となりましたが、
労基署の判断を踏襲し、
従業員の言い分は認められませんでした。

...という事例についての詳細が
名前や日付等は伏せられた上で、
厚生労働省サイトにアップされておりましたので、
以下、ご紹介します。

なお、詳細をご覧いただく前の基礎知識を2種類ご紹介します。

【言い分を認められなかった従業員のこれからの道】

労基署で認められなかったので、
審査請求を行った従業員ですが、
ここでも認められない場合、
国の「労働保険審査会」に最審査請求をすることができます。

ここでも自分の主張が通らず、不服に思う場合は、
訴訟を行って解決していきます。

見方を変えてみると、労基署の決定に不服に思ったからと言って、
すぐに訴訟を起こせるわけではなく、
審査請求、最審査請求を経なければ、
訴訟を起こすことができない、ということでもあります。

【精神障害の労災の認定方法】

ザックリ申し上げると、次の要件を全て満たすことが必要です。

1 対象疾病に該当する精神障害を発病していること。

2 対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、
  客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある
  業務による強いストレスが認められること。
  ※ストレスの強度が「弱・中・強」のうち、
  「強」であると判定されることが必要です。
  ※ガイドラインとなる一覧表がありまして、
   そのガイドラインに沿って判定を行います。

3 業務以外のストレス及び個体側要因により
  当該精神障害を発病したとは認められないこと。
  ※固体側要因とは、精神障害の既往歴があるとか、
   アルコール依存等の有無・程度等の要因です。

今回の事例では、業務以外のストレスや
固体側要因はなかったものの、
業務上のストレス度合いについて
「中」と判断されたため、
労災とは認定されませんでした。

従業員としては、最審査請求をする場合は、
「これは「中」ではなく「強」だ!」と主張して、
労災を認めてもらえるように働きかけることになります。

それでは、詳細です。(厚生労働省のHPからの抜粋)

概 要

審査請求人(以下「請求人」という。)に発病した「適応障害」は、
業務上の事由によるものとは認められないとして、
審査請求を棄却した事例
 
要 旨

1 事案の概要及び経過

請求人は、平成○年○月○日から○会社に所属し、
同社が施設維持管理等の委託を受けている○施設において、
本件施設に集められた一般家庭で出る可燃物を
ごみ運搬車にて運搬する業務、担当車両の管理業務、
粗大ごみ破砕処理補助業務及び施設内付帯業務に従事していた。

請求人は、平成○年○月○日に発熱のため
急遽仕事を休んだことがきっかけとなって、
本件施設責任者から無視されるようになり、
平成○年○月中旬頃から食欲不振、不眠等の症状が出現したため、
同年○月○日、○病院に受診したところ「適応障害」と診断された。

請求人は、業務が原因で精神障害を発病したとして、
監督署長に療養補償給付及び休業補償給付の請求を行ったところ、
監督署長は、請求人の精神障害は
業務上の事由によるものとは認められないとして、
これを支給しない旨の処分を行った。
 
2 審査請求の理由

請求人は、審査請求の理由として、
要旨、次のとおり述べている。

勤務先の責任者の仕事上の態度から発病したものであり、
監督署長からの「発病した適応障害については、
業務による心理的負荷が原因となって
発病したものとは認められないため。」
ということに納得がいかない。
 
3 原処分庁の意見

監督署長は、平成23年12月26日付け基発1226第1号
「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づき、
不支給決定とした理由として、要旨、次の意見を述べている。

(1) 請求人はICD-10診断ガイドラインに示されている
 「F43.2 適応障害」を平成○年○月中旬頃に発病したと認められる。
(2) 発病前おおむね6か月及び発病後に特別な出来事は認められない。
(3) 発病前おおむね6か月の間における
  業務による心理的負荷については、
  平成○年○月以降、責任者が請求人に話しかけることを
  しなくなったとの事実が認められる。
  このことは具体的出来事「上司とのトラブルがあった」を
  類推してあてはめることが妥当であり、
  平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」を修正することなく適用した。
  請求人は、責任者から話かけられなくなったことから
  心理的負荷を受けたものであるが、
  責任者は当該労働者を無視していた事実を認めているが、
  当該労働者から話しかけてきた時にはこれに答えていたこと、
  また、同僚もこうした状況に
  気が付かない程度であったことを考えると、
  一般的には弱い心理的負荷であるとも考えられるが、
  1か月余りの期間にわたって、
  責任者が当該労働者に無視した理由を
  説明しないといった状況が継続したことを勘案すると、
  当該出来事の心理的負荷の総合評価は「中」と判断した。
  なお、発病前おおむね6か月間において
  休日は定期的に取得しており、
  時間外労働もほぼ認められないことから
  恒常的な長時間労働は認められない
(4) 業務以外の出来事、個体側要因について特に問題は認められない
(5) 以上のとおり、業務による心理的負荷の総合評価は
 「強」に至らないことから、
  請求人に発病した精神障害は業務上の事由によるものとは認められない。
 
4 審査官の判断

(1) 平成23年12月26日付けの基発第1226第1号通達
 「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に
  照らし判断すると次のとおりである。
(2) 請求人はICD-10診断ガイドラインに示されている
 「F43.2 適応障害」を平成○年○月中旬頃に発病したと認められる。
(3) 発病前おおむね6か月及び発病後に特別な出来事は認められない。
(4) 発病前おおむね6ヶ月の間における
  業務による心理的負荷について検討すると、
  「責任者の雰囲気が変わった」
  及び「自分を避けている感じがした」ことについては、
  請求人は、平成○年○月以降、
  いつもなら日常会話等をするが、
  責任者の雰囲気が違った感じがして、
  話しかけられなくなったと申述し、
  責任者も自分から話しかけることをしなくなったと
  申述していることから、
  このことで請求人が心理的負荷を受けた事実が認められる。
  当該出来事は、具体的出来事の
  「上司とのトラブルがあった」を類推して
  当てはめる事が妥当と判断し、
  平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」である。
  請求人は、責任者から話しかけられなくなったことに
  心理的負荷を受けたものであるが、
  責任者は請求人に話しかけることをしない事実を認めつつも、
  請求人から話しかけてきた時にはこれに答えていたこと、
  また、同僚もこうした状況に
  気が付かない程度であったことを考えると、
  一般的には弱い心理的負荷であるとも考えられる。
  しかし、1か月余りの期間に渡って
  責任者が請求人に話しかけなかった理由を説明しない
  といった状況が継続したことを勘案し、
  当審査官は当該出来事の心理的負荷の総合評価を「中」と判断する。
  「早出の指示がされなくなった」ことについては、
  責任者及び同僚2名の申述から通勤に配慮したものと解される内容で、
  請求人が感じたような差別とは言えないものと判断することから、
  心理的負荷を受けた出来事として評価することはできない。
  「職場の他の人間も話しかけて来なくなった。
  自分に対する責任者の態度から
  他の人も話しかけづらくなったと思う」ことについては、
  同僚は、「請求人から、責任者から
  最近話してもらえないと聞いたものの
  普段の様子からそんな感じはなかった。」と申述しており、
  「責任者の態度から他の人も話しかけづらくなった」
  とされる事実は確認されないことから
  心理的負荷を受けた出来事として評価することはできない。
  請求人の時間外労働について、
  発病前おおむね6か月間における長時間労働は認められず、
  また、具体的出来事の前後に恒常的な長時間労働は認められない。
  以上のことから、業務による心理的負荷を
  総合評価しても「強」とは判断できない。

  したがって、請求人に発病した疾病は、
  業務上の事由によるものとは認められず、
  監督署長が請求人に対してなした
  療養補償給付及び休業補償給付を
  支給しない旨の処分は妥当であって、
  これを取り消すべき理由はない。

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職場のパワーハラスメント対策ハンドブック

厚生労働省の委託先である
公益財団法人21世紀職業財団に設置した企画委員会は、
職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた取組を推進するため、
企業の取組の好事例などを紹介した
「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」を
作成しました。

ダウンロードは【コチラ】(約131MB)

ハンドブックでは、製造業や建設業、社会福祉施設など
様々な業種、全17社の取組の好事例を紹介しているほか、
就業規則の規定例などを掲載しています。

ハンドブックは、取組に着手していない企業はもちろん、
すでに取組を行っている企業でも活用できる内容となっています。

職場のパワーハラスメントについては、
この問題の予防・解決に向けた取組を
行っている企業が約半数にとどまるなど、
取組が遅れている企業が多く存在するといった
課題が明らかとなっています。

また、職場のパワーハラスメントなどによる
若者の「使い捨て」が疑われる企業が、
社会で大きな問題となっています。

職場のパワーハラスメント対策を推進するため、
予防・解決に向けた取組に活用されてみては
いかがでしょうか?

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パワハラの実態調査報告書が公表されました。

厚生労働省では、国として初となる
職場のパワーハラスメントに関する実態調査を実施し、
報告書公表しました。

調査は企業調査と従業員調査からなり、
今年の7月から9月にアンケート調査を行い、
企業調査は計4,580社から、
従業員調査は計9,000名から回答を得ました。

報告書はこちらです。
概要版ではありますが、結構詳しいです。
パワーハラスメントに関する実態調査報告書.pdf

報告書のポイント】

パワーハラスメントの発生状況

実際に過去3年間に
パワーハラスメントに関する相談を
1件以上受けたことがある企業は
回答企業全体の45.2%で、
実際にパワーハラスメントに該当する事案のあった企業は
回答企業全体の32.0%でした。

一方、従業員に関しては、
過去3年間にパワーハラスメントを
受けたことがあると回答した者は
回答者全体の25.3%でした。

パワーハラスメントの当事者

企業に寄せられるパワーハラスメントに
関する相談について、
当事者の関係をみると、「上司から部下へ」、
「先輩から後輩へ」、「正社員から正社員以外へ」といった
立場が上の者から下の者への行為が
大半を占めています。

パワーハラスメントが発生している職場

企業調査において、パワーハラスメントに関連する
相談がある職場に共通する特徴として、
「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」が
51.1%と最も多く、
「正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が
 一緒に働いている職場」(21.9%)、
「残業が多い/休みが取り難い」(19.9%)、
「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」(19.8%)
が続いています。

従業員調査でも同様の傾向が示されています。

働く目的には、生活のためという側面もある一方で、
成長するため、社会に貢献するためといった側面もあります。

仕事によって、人は磨かれていきます。

こうして考えると、職場とは尊い場です。

こうした場をハラスメントで劣悪な環境にするというのは
悲しいことですし、とんでもないことです。

皆が笑顔で働ける職場作りに、私も貢献していきたいです。

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